第7話 初めての実践

 魔王会議から約一ヶ月が経ち、魔王生活も充実し始めた。


 魔王ジャックチャンネルの登録者数は20万人を超え、総再生回数700万回を突破した。


 俺のレベルは32まで上がり、魔獣は共にレベル18まで上げた。

 レベル上げをして見て思ったのだが、意外と上がらなくて驚いている。


 勇者の時もこんなにレベル上がらなかったっけなぁ? これも、魔王側と勇者側の違いなのだろうか。


 まぁ、何はともあれ、レベルが上がってることはいいことだ。

 しかし、俺の中には1つ懸念点があった。それは……


「実践したことないんだよなぁ」


 そう。俺は戦ったことがない。こっちに来て約2ヶ月半。1度も勇者に会ってないし、魔獣を使って戦ったこともなかった。


 エクセルが強すぎるって言うのもあるが……その壁を超え、そんなやつとこんにちはハイ勝負ですなんてしたら、多分即負ける。


 そこで、エクセルにこんなお願いをしてみた。


「なぁ、エクセル。今度ダンジョンの見張り俺も言っていいか?」


「良いですけど……どうしてですか?」


「俺もそろそろ戦ってみたくてな」


「……ははは! ジャック様、では明日。共に行きましょう」


 こうして俺は初めての実践へと向かった。


 ──────


「ほえぇ……こんな所で毎日戦ってるのか」


 ここは魔王城のある山のふもとにあるダンジョン。想像よりも遥かに狭く、入り組んでいた。


「ここが出口なので、ここにいれば勇者が来ると思いますよ」


「よし……来い、ワイト、ラリゴ!」


 ボフンッ


 その呼び声に合わせて2体の魔獣が召喚された。

 スキルもまだ使ったことないしな……ワイトのスキル使ってみるか。


「ワイト、影使いシャドウユーザー!」


 その声に合わせ、ワイトは俺の影の中に入って行った。


「1、2、3……おぉ」


 3秒ほど経つとくぅーん、と泣きながら影からでてきた。

 思ったよりも効果短いんだな……


 でも、使い方によってはかなり強力なスキルだ。このダンジョンは影も多いし……よし、行けるぞ。


 ワイトは攻撃のステータスが極端に高い。その一方で防御面は不安だが、そこはスキルでカバーしろということだろう。


 それに比べてラリゴは逆だ。攻撃性能はあまり高くない分、防御力が高い。スキルもサポート性能が高く、使い勝手が良い。


「ジャック様。勇者が恐らくダンジョン内へと入ったようです」


「了解だエクセル。もし危なかったら……助けてくれよな」


「もちろんです」


 と、ここでふと俺は思ったことが1つ。




 ……俺何も出来なくね????


「ジャック様。来ました」


 ちょ、待て待て待て!!! 意気揚々と来たのはいいけどさ!?!? レベル上がって行けるんじゃねとか思ってたけどさ!?!?

 攻撃手段ワイトだけじゃ心許なくないか!?!?


「え……!? 魔王ジャックチャンネルのジャック!?!?」


「あ、はい……?」


 相手の勇者パーティーは3人。1人は剣を持った男(Lv28)。もう1人は魔法書を持った男(Lv26)。そして最後に杖を持った女だ(Lv25)。


「デビチューブなんて魔王がふざけたことしやがって……今ここでやれるなんてラッキーだ!! みんな……行くぞ!!」


 やっべぇ、俺嫌われすぎじゃない? コメント欄とか結構ファンいたのに、やっぱり勇者はアンチなの?


 でも……仕方ないか。この世界での悪者は魔王。それを倒すためにみんな頑張って勇者になってるんだ。


「はっはっはっ……ゴールドの徴収を減らしてやったのを覚えていないのか? 今ここでお前たちを倒して、元の金額に戻してやろう!」


「それだけはやめて! 絶対倒すわよみんな!!」


「おう!!!」


 なーんか一致団結しちゃったよ……

 まぁ、やってみるか。


「ラリゴ! 胸音ドラミング!」


 ウホウホ!!


 ラリゴはドラミングを始め、音を奏でた。その音は勇者パーティー全員の耳に届き、レベルが2つずつ下がる。


 このスキルは、1人につき1日1回までの制限がある。効果時間はこの前俺で試した感じ5分程度だろう。


「何だこのスキルは!」


 いちいち勇者っぽいセリフがめんどくさいなぁ……けど、ちょっとおもろいなこれ。


「ワイト!影使いシャドウユーザー!」


 俺はワイトを岩の影に潜ませ、勇者パーティーに近付かせた。そのまま、背後から3人をワイトが爪で引っ掻き、噛みつき、しっぽで引っぱたいた。


「くそっ……!」


 一撃で3分の1……結構削れるな。ワイトと勇者たちのレベルの差は結構あるはずなのに。


 すると、勇者たちの反撃が始まった。


「魔獣は無視だ! ジャックを狙え!!」


 えーーー!? 相場周りからやらないの!?


 剣を持った勇者が俺に向かって走り出す。

 咄嗟に「ラリゴ!」と呼び、その攻撃を代わりに受けさせ、俺は後ろに飛び逃げた。


 ウホウホ、と元気な様子を見せたラリゴ。HPはほぼ減っていない。10分の1程度だろうか。


 意外と良いチームなのでは……ってぐへっ!


 そんなこと考えていた俺に、大きな岩魔法が飛んできた。

 普通に痛ぇ……なんで俺だけ痛覚あるんだよ!


 HPは……そんな減ってないな。てか、固有スキル見てなかった。


 剣士の男が、気合い《根性》。魔法使いの男が、魔力回復マジックヒール。同じくその女は、水操術ウォーターオペレイト


 ……なんかおもろいやついるけどそんなん今はどうでもいい。


 注意すべきは……あんまいないな。

 ティレイに聞いた感じ操術系のスキルは基本そのものを生み出すことは出来ない。

 だから、追加スキルで生み出すか、地形を利用するしかないらしい。


 あの女は実質スキルなし……か。


 そして、それから俺はワイトで殴り、ラリゴで受けるを続け、無事勇者パーティーを撃退することに成功した。


「必ず……強くなって……帰ってくるから……な……!」


 そうセリフを言い残し、3人はレベルがマイナス10され、街まで強制転移された。


「やりましたね。ジャック様」


「まぁ……こんなもんよ……ははは」


 勇者ってこんなもんなのか? という疑問が残りつつ、初めての実践は勝利で幕を閉じた。


 気付けば、魔獣たちのレベルは一気に2つ上がり、共に20レベルとなった。


 やっぱ効率はこっちの方が良いんだな……

 でも、まだレベルが低いってのもあるし、30からぜんぜん上がらないイメージだったから……これからゆっくり考えよう。


 とりあえず、デビチューブは続けていこう。


 この時、この勇者パーティーがいつの日か再登場する事を俺は、全く考えもしなかった。


 それはまた先のお話。



 チャンネル名ー魔王ジャックチャンネル

 登録者数ー20万人

 総再生回数ー約800万回再生


 名前:サイ・ジャック

 Lv:30▶︎32

 職業:魔王

 固有スキル:魔獣使いモンスターテイム

 追加スキル:①?

 ②?

 ③?

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