第6話 魔王会議
魔王会議。それは、このゲームに存在する魔王5人と、魔神と呼ばれる1人が参加し、会議を行うことを指すらしい。
この魔神と言われる人は、エクセルのような魔人とは違い、魔王のひとつ上の階級に当たるらしい。(ティレイ調べ)
「えっと……じゃあ明日の正午に行けばいいんだよな?」
「はい。転移陣はもう作成済みです。あと……今会議から1人まで追加で、関係者なら参加できるそうなのですが」
「あー、そうなのか。昼だとエクセルはダンジョンにいて欲しいしな……アルイだとちょっと心細いし……ティレイ、明日行けるか?」
「すいません、ジャック様。お力になりたい所なのですが、支配している街から徴収したゴールドと書類のまとめ作業がありまして……」
「そうなのか。すまないな、ティレイ。仕事全部押し付けちゃって」
「いえ。私は大丈夫です。アルイなら午前中の掃除だけなので空いてると思います」
「……分かった。声かけてみるよ。報告ありがとう」
「では、失礼します」
魔王会議……か。
ハッキリ言おう。怖い。とても怖い。
俺が配信者としてやっていた時、3人目までは倒した。そこからは未知の領域だ。3人目倒すまでに5回は負けた。マイナス50レベルだ。
でも、俺も今は一応魔王だし……大丈夫かなぁ……
連れて行けるならエクセルかティレイだよなぁ……はぁ。アルイを悪く言ってるつもりじゃない。でも、多分。うん。アルイが耐えられる場所では無さそうだ。
まぁ、何も分からないしとりあえずアルイ連れて行ってみよう。
こうして、俺は動画編集を終わらせ、動画をアップロードして寝た。
──────
「じゃ、アルイ。準備はいいか?」
「は、はい!!」
会議開始10分前。俺とアルイは転移陣の中心に立っている。
緊張するけど……頑張ろう。
「ジャック様、アルイ、気をつけて」
「ありがとうティレイ。じゃ、行ってくる」
そうティレイに伝え、俺は身体中に魔力を巡らせた。
アルイの手を掴み、「転移!」と叫んだ。
その瞬間、転移陣は紫に光り出し、俺とアルイは魔王会議の会場まで一瞬にして転移した。
「こ、ここが……魔王会議室……ですか……」
どこを見渡しても真っ暗で、目の前に円形に繋がる机と、イスが5席あった。
オドオドした表情のアルイ。俺は優しくアルイの背中を叩き、「大丈夫だ」と伝えた。
と、まぁ、俺も初めてだが、まだ誰も来ていなかった。一番乗りだ。
「ほう。一番はジャックか」
「だ、誰ですか!?」
反射的に振り向き、俺は質問をしてしまった。
だが、後ろには誰もいない。もちろん、前にもだ。
「忘れたというのか? ワシは魔神じゃ」
ま……魔神!?!? やべぇことしちまった……やばいやばい……!!
「す、すいません! 魔神様とは気が付かず……」
「大丈夫じゃよ。確かに今回から声だけの参加だしのう。驚かせてすまんかった」
何とか……なった。はぁ……良かった。
「ここが……俺の席か」
俺は自分の先を探し、座った。
その時、一気に2人の魔王とそのツレが現れた。
「お、ザコ・ジャックじゃん。まだ生きてたんだ」
「おいおい、やめろよガラム。まぁ……もうそろじゃないかい? あははははは!」
なんだコイツら……ウザイな! 何がもうそろだよ! 死ぬのがもうそろって言うのか!?
「まぁ、座りなさい。ガラム、シュール」
ガラムとシュール……あ。こいつら見た事ある。ガラムが2人目でシュールが三人目の魔王だ。
俺は2人のプロフィールを覗いた。
名前:ダル・ガラム
Lv:41
職業:魔王
固有スキル:
追加スキル:①アブソリュートキル
②?
③?
名前:ギリ・シュール
Lv:49
職業:魔王
固有スキル:
追加スキル:①マッドプロダクト
②?
③?
うえぇ……思い出すわこいつら。無条件キルに泥遅延。すげぇ負けたよ……まじで……
そんなこと思い出していると後ろからなにか聞こえてくる。
「ジャック様をバカにするなジャック様をバカにするなジャック様を……」
「アルイ。落ち着いて。俺は大丈夫だし、強くなってる。いちばん分かってくれてるのはアルイだろ?」
そう言うとアルイは小さく「はい……」と返事をした。
小さな声で話していると、気が付かない内に4人目の魔王が来ていた。
初めて見るな……あ、プロフィール。
……見れない! レベルの差がありすぎると見れないのか……でも、関わることはなさそうだし、いいか。
「ルークも来たな。今回ストングは急用で休みじゃ。それじゃ魔王会議を始めるぞ」
こうして、ひとつ空席のまま、魔王会議がスタートした。
内容はそこまで難しいものではなかった。
初めに今のレベルと戦力。その次に街の様子。最後に要望がある者が魔神に伝える。
本当に職員会議のようなものであった。
「はっはっはっ!! ジャック、お前レベル30は嘘つくなよ!! 俺が産んだ雑魚スキル持ちの魔人に貰ったりしてんのか?」
ガラムが俺に絡んでくる。エクセルはこいつが創造した魔人だったのか。
「エクセルの事、雑魚って言うのはやめてくれないか」
「いっちょ前に名前なんてつけちまってよ。まぁ、お前には感謝しなきゃな。あの雑魚拾ってくれてありがとーな」
「ガラム、そこら辺にしとけ。あいつ多分……漏らしてるぞ。あはははは!」
「……」
相変わらずガラムとシュールはうるさい。てか、ウザイ。
それとは裏腹に、ルークさんはずっと無言でいた。
でも、エクセルのことを馬鹿にされるのは気分が良くない。
彼は強くて仲間思いのいい魔人だ。それなのにこんな輩が……
「まぁ、まぁ。それくらいにするんじゃ2人とも。あくまでもわしらの目的は魔の付く者と人族の共存じゃ。よいな?」
全員が適当に返事をする。
魔の付く者と人族の共存。魔神はそう言っていた。
本当に目的がそうなのであれば……頑張る甲斐がありそうだ。
鳴り止まないガラムとシュールの絡みを無視して考え事をしていたその時だった。
「お前ら少し黙れよ」
……!!!
彼が。ルークがそう口にした瞬間、場が凍りつき、俺たちは察した。
……殺される!
「す、すまねぇなルーク」
「だ、だから言っただろ、ガラム」
2人も恐縮する。恐らく、ルークさんから段違いの強さだ。って事は、今日来てないストングさんって……どんな化け物なんだ?
「まぁ、今回の魔王会議は終わりじゃ。次もおって連絡するから待っておってくれ。では」
魔神がそう言った瞬間、魔王全員が転移し、魔王城に戻された。
「終わった……な」
「……はい。もう何もかも爆発しそうでしたよ!!」
プンスカ怒るアルイをなだめ、考え事をする。
これからもやらなきゃ行けないことが多そうだ。
エクセル。いつかあいつぶっ飛ばそうな。
そんなこと考えながら今日は動画作成をお休みした。
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