第5話 レベル譲渡

 午前中に動画撮影を終わらせ、お昼を挟んで午後。俺の部屋で今日の報告会が行われた。


「ジャック様〜! 本日の夕飯は私がお作り致しま〜す!!」


「アルイ。よろしくな。ティレイは何かあるか?」


「いえ。今日の分の仕事は終わったので、普段掃除しないような所を綺麗にしようかな、と」


「そうか。それはありがとうな。最後にエクセル。今日は誰か来たか?」


「はい。我に挑まれた勇者パーティーが1組。追い払っておきました。そして、我のレベルは36へと上がったことを報告させていただきます」


「そうかそうか。夜まで今日も頑張ってくれ……あ」


 レベル……36!? やばいやばい……ワンチャンこっちまで勇者が来てしまう……俺のレベルまだ27だぞ……!?


「ジャック様。今回ばかりは日頃、お世話になってることのお礼と言ってはなんですが」


 そう言って、エクセルは片膝を床に着け、右の掌も床にぺったりとつけた。すると……


「お、わぁ!?」


 床に無数の光が発生し、その光が俺の中に流れ込んできた。


 これって……経験値か?


「エクセルもしかして……」


「はい。1レベル分譲渡させて頂きました」


 ふぅ……これで一応すぐには来ないかな。俺もレベル上げ頑張らなきゃ。


「では、我は失礼します」


 そう言ったエクセルは、元のダンジョンまで転移して行った。


「じゃあ……2人も自分の事して大丈夫だぞ」


「は〜い! ジャック様!!」


 アルイは俺の元にぴょんぴょんはねて近付き、ピースした。

 アルイの頭を撫でていると、ティレイが口を開く。


「アルイ……今日いつにも増して元気じゃない?」


 すると、アルイはさささ、っとティレイの元へと戻り、「やっぱそうですかね〜?」と、にこにこしながら言い放った。


「昨日のは格別でしたね……。昨日は思わず声が漏れちゃいました」


「えぇ、本当に隣までうるさかったわよ」


 おいおい……俺の前でそんな話やめてくれ。気まずいから!! まじで昨日は本能で動いてたから……


「えー? ティレイもしたらいいじゃないですか! 次の番は譲りますよ!?」


「アルイ。私はそう言う趣味は無いの。別に……アルイを否定してる訳では無いからね。私の話だから私の」


 なんだか様子が変だが……まぁ、いいか。早く終わってくれこの話題。


「じゃあ! 次の番も私が行かせて頂きます! それでは夕飯の準備してきます!」


「あ、あぁ。行ってらっしゃい。ティレイもよろしくな」


「はい。ジャック様」


 こうして、メイド2人も部屋から出ていき、一気に静かになった部屋に1人残された俺は……


「……編集してネタ考えるかぁ」


 生前のように、配信者としての義務をこなした。


 ──────


 こっちの世界に来てから約1ヶ月が経ち、デビチューブからの経験値も何度か貰った。

 そのおかげで、俺のレベルは32まで上がった。


 魔王ジャックチャンネルはと言うと、チャンネル登録者の伸びは、前よりは納まってしまったが、12万人まで増加し、再生回数も400万回再生を突破した。


 順調すぎる。とても順調だ。魔王生活も……意外と楽しいな。


 そして今日、俺は新しい試みをしていた。


「こい、ワイト、リラゴ!」


 俺はスキルを使い、魔獣を召喚した。

 新しい試み、それは。


「エクセルはこうやってやってたよなぁ」


 床に片膝を付け、右の掌も付けた。


「うーん。出来ないな」


 俺がやろうとしていること。それは、レベルの譲渡だ。

 恐らく、この魔獣達は後2つ、レベルが上がれば固有スキルを手に入れられる。


 そうすれば戦力も上がるし、戦い方の幅も広がる。イコール勇者対策になるって訳だ。


 俺は1度立ち上がり、魔獣の頭を掴んだ。

 おらおらおら……あ、行けた。


 経験値を流し込むように意識を集中させると、簡単に譲渡ができた。

 すると……


 くぅーん!!

 ウホウホ!!


 ワイトの毛並みは黒く変わり、大人の狼位のサイズへと成長した。

 ……名前ミスったぁ。


 そして、リラゴの方はちょっと筋肉が付いた。元が細すぎてひょろひょろだったからかなり強そうに見える。


「あ、そうだ。スキルスキルっと」


 ポケットからスマホを取り出し、2匹の魔獣を映し出した。



 名前:ワイト

 Lv:15

 職業:魔獣

 固有スキル:影使いシャドウユーザー

 追加スキル:①?

 ②?

 ③?


 名前:ラリゴ

 Lv:15

 職業:魔獣

 固有スキル:胸音ドラミング

 追加スキル:①?

 ②?

 ③?



 名前が反映されてる……すごいなゲームって。


 ピロン


 その時、スマホが鳴った。


「なんだ? えっと……一定の使用回数を超えた為……必要であれば目視だけでステータスやスキルの確認が可能になりました?」


 ……え。すご。超楽ちんじゃん。知らない敵来ても一瞬でわかるじゃん。勇者にこんな機能あったっけ? コメント欄に全部聞いてたからこれ使ってなかったかもな……


「じゃあ……影使いシャドウユーザー胸音ドラミングの効果を教えてくれ!」



 固有スキル:影使いシャドウユーザー

 主に、人や物の影中に入り、影が続いて入れば移動も可能。影の滞在時間はこの魔獣のレベルに比例し増加する。


 固有スキル:胸音ドラミング

 この魔獣のドラミングを聞いた相手のレベルを2つ下げる。効果時間はこの魔獣のレベルに比例して増加する。ただし、効果の重複はしない。



 すげぇ……脳内に直接叩き込まれてるみたいだ。

 それはいいとして、この2匹のスキル。なんとも言えないが……まぁ、追加スキル次第って感じだな。


 ラリゴの方はかなり使い勝手良さそうだけど……ゴリラなのにサポート特価なんだな。


 でも、どんなスキルでも意外とこいつらのこと好きだ。やっぱり、慕われるって嬉しいんだな。


 俺は2匹の魔獣を撫でながら、感傷に浸っていた。その時だ。


 コンコン


「ジャック様。ティレイです。少しお話が」


「あぁ。入って大丈夫だぞ」


 ティレイが珍しく、1人で部屋に来た。もしかして、もしかして……? ティレイも興味を!?


「ご報告です。明後日の正午。魔王会議が開かれます」


「は、はぁ……?」


 聞き馴染みのない言葉に俺は頭を悩ませてしまった。



 チャンネル名ー魔王ジャックチャンネル

 登録者数ー12万人

 総再生回数ー約400万回再生


 名前:サイ・ジャック

 Lv:27▶︎30

 職業:魔王

 固有スキル:魔獣使いモンスターテイム

 追加スキル:①?

 ②?

 ③?

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