第2話 動画投稿

「どうも! 魔王のサイ・ジャックで〜す!」


 俺は動画撮影を始めた。実写動画を撮るのは初めてだが、恐らくゲーム実況よりは簡単なはずだ。


「今回は〜……魔王のジャックがデビチューブ初めて見た! で〜す!」


 デビチューブ。それはこの【デビルクエスト】での動画配信アプリ。


 このアプリを使えば誰でも経験値を稼ぐことが出来る。ある程度動画をあげれば、定期的に経験値を得られる神システムだ。


 このゲームはレベルが物を言う。負けてもレベルが高ければ、すぐにまた上げ直し復帰出来る。


「私は勇者を排出する始めの街を支配している1人目の魔王です!」


 俺は画面に向かって自己紹介をし、つらつらと変なことを言って録画停止ボタンを押した。


 ……よし。これでいいかな。


 俺がこのゲームをやっていた時、魔王が動画配信なんて全くしていなかった。

 そう。全くだ。動画配信で伸びるコツ。それは、新しいジャンルを攻める。これに尽きる。


 生前、俺が伸び始めたのもそれのおかげだ。

 底辺配信者×キレ芸。これがウケたのだ。


 デビチューブの経験値獲得のスパンは約1週間。かなり効率がいい。これでバズれば……俺も最強魔王になれるぞ!


「後は軽く編集すれば……」


 その時、外から声がした。


「ジャック様〜! 夕飯の準備が出来ました!」


 先にご飯食べるか。


 俺は「分かった。今行く」と返事をし、食卓へと向かった。


「「「いただきます!」」」


 メイド2人と俺はアルイの手料理を食べ始めた。


「美味しい!」


 アルイの料理はとても美味しかった。何がなんだかわからない料理ばっかだったが、味は本物だった。


「そういえばエクセルは?」


「エクセルさんは魔人なので食事は必要ありません。なんか、今日忘れっぽいですね」


「あ、あぁ。すまんすまん」


 危ない。普通にバレる。俺がでは無いことが。


「そういえばさっきジャック様の部屋から声聞こえたんですけど……何してたんですか!?」


「ちょっとな。俺もレベル上げようと思って」


 何気なくそう発言した時、一瞬時が止まったかのように静まり返った。


「……ん?」


「ジャック様が……レベル上げを……!?」


「じゃっくさまそれほんとうですか?」


 驚いた表情の2人。アルイの方は完全に魂が抜かれたかのように弱々しい声だった。


 この反応を見るに……俺の思っていたジャックはちょっと違ったな……

 まぁ、いいか。勝手に期待するなって感じだよな。


「あぁ。本当だ」


「でも……何をするんですか?」


「それはだな……」


 俺はこの【配信】という機能の説明をした。

 アルイは理解出来ていなかったが、ティレイの反応はなかなかに良かった。


「と言うことは……ジャック様が先駆者になるから動画が伸びるという事ですか?」


「しぇんくしゃ?」


「あぁ。そういうことだ。話題性もあってきっとかなりの経験値が貰えるはずだ」


「わだいしぇい?」


 頭にずっとはてなマークを浮かべるアルイ入ったん置いとき、ティレイに生前、培った配信者の知恵を吹き込んだ。


「では、健闘を祈ります」


「がんばってください!!!!!!」


「あぁ。来週また報告するよ」


 やけくそになったアルイの頭を撫で、「ご馳走様。美味しかった」と伝え部屋へと戻った。


 ──────


「これで……いいかな」


 時間は夜の9時頃。このゲーム内の編集はかなり楽で助かる。

 テロップやBGMの種類が少ないおかげもあるし、自動生成機能がかなり優秀であったりするためだ。


「よし……初投稿するぞ……!」


 チャンネルを作り、動画をアップロードした。

 題名は「魔王。デビチューブ始めます」という在り来りな題名だ。でも、これくらい分かりやすい方がバズる。


 それと同時にSNSのようなアプリのアカウントも作成し、拡散活動を行った。

 このゲームは本当に現代の世界をモチーフにしていて助かった。


「……疲れたな。寝よう」


 夜の10時。俺早めの就寝をした。


 チャンネル名ー魔王ジャックチャンネル

 登録者数ー0人


 ──────


 ー翌朝ー


 俺は7時頃目が覚めた。こんなに目覚めのいい朝は久しぶりだな。


 ベッドから出て、カーテンを開ける。日光浴なんてものも久しぶりだ。


「……そうだ。動画の確認しよう」


 俺はチャンネルを開き、動画の再生回数を確認した。


 ……!!??


「再生回数……21万回!?」


 ここまで伸びるとは思ってもいなかった。登録者数も一夜にして2.3万人まで増えていた。


 底辺配信者だった頃の俺を一瞬にして抜いたのだ。

 俺の1年……なんだったんだ……くそう!!


 でも、大成功だ。俺の読みは間違っていなかった。


 ウキウキな俺はコメント欄を確認した。


 ー魔王初めて見た!

 ーこいつ意外とおもろいな

 ーほんとにこいつ魔王? なんか弱そうじゃね?

 ー意外と推せるこいつ


 ほうほう。まずまずの滑り出しだ。ファーストインプレッションは◎ってところか。


 ここからどうファンを増やしていくか。そしてどうやって、と言う魔王のことを好きになってもらうか。これが鍵だ。


「1本目が伸びるのも想定内。ここからが本番だ」


 俺はこの一週間、毎日投稿をした。その内容は、生前の世界なら、ありきたりすぎて埋もれてしまうような内容ばかりだ。


 魔王城のルームツアーや100の質問。エクセルにドッキリなんてものもしかけてみたりした。


 まぁ、エクセルは全く驚いてくれなかったんだけどな。

 だかしかーし。それがまたバズった。


 SNSのフォロワーも増え、切り抜きを投稿した。その投稿の評判もよく、固定のファンが増えつつあった。


 ードッキリ失敗してるし笑笑

 ーエクセルさんかっこよくない?

 ー今度エクセルメインの動画出してよ!


 エクセル人気凄いな……

 俺のファンは……まぁ……これからだよな。

 ん? メイド2人? いやいや彼女らは出さないよ。ね。


 こうして、チャンネル名、魔王ジャックチャンネルは1週間で怒涛の伸びを見せ、登録者数8万人、総再生回数150万回再生を記録した。


 そして、経験値獲得の日……


「総獲得経験値……1.2万! 俺のレベルは……27!!!」


 新人デビチューバーのジャックは、最高のスタートを切った。



 チャンネル名ー魔王ジャックチャンネル

 登録者数ー8.2万人

 総再生回数ー約150万回再生


 名前:サイ・ジャック

 Lv:25▶︎27

 職業:魔王

 固有スキル:魔獣使いモンスターテイム

 追加スキル:①?

 ②?

 ③?



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