第13話

「おい。そっちの組織のボス。いつもあんな感じなのか」


 さすがに危険を感じたので、秘書の女のひとに直談判。


「あなたたちの仲間は?」


「かなり強く言って聞かせた。少なくとも今日1日は外に出ないと思う」


「そうですか」


「そうですかじゃねぇよ。お前のところのボス」


「我々の組織のトップが、誰かを殺すとか。どんな言いがかりですか。だいたい、あなた方がいるから町の治安が」


 だめだ。話にならない。


「くそっ」


 秘書の女のひとのところを辞した。話が通じなさすぎる。脳内お花畑か。今現在も彼は銃を持って町を歩いてんだぞ。


 彼を探す。


 までもなく。


「お。話は終わりました?」


 普通に目の前にいた。


「誰もいなかったです」


「そりゃあそうだ。うちのものどもは全員外に出ないように言ってあるからな」


「そうですか」


「そうですかじゃねぇよ。銃を持って町を歩いて。殺し合いになった方がいいとか。殺人鬼かよお前」


「警邏の本質は危険の排除です。殺人に躊躇していたら、それは警邏ではなく見回りボランティアですよ」


「こんな町で」


「こんな町で?」


 いや。

 こんな町で。

 こんな町でも。


「こんな町でも、危険がないとは言えない、って、ことか?」


「というより、平和ぼけしすぎですね。外から誰か一人でも悪人が紛れ込んだら、町ごと終わりです」


 そんなこと、考えたこともなかった。


「あっそんなこと考えてなかったみたいな顔してる」


「そりゃあそうだろ。この町は」


「そう。この町は陰湿です。あなただって、髪が金髪だったからという理由だけで排斥されて居場所がない」


「それとこれとは」


「同じですよ。それがこの町の本質です。誰かが死ねば、そういう陰湿な平和も消えますよ」


 おい。ちょっと待て。


「わたしのためにやってんのか?」

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