第8話
本当に旅行の夜のような感じで、身の上話をしていた。
金髪だっただけ、というのが、なんとも物悲しい。この町では、金髪であることがやさぐれる理由になる。優しいというのは、罪なんだなとなんとなく思う。
同時に。
この女に自分の過去を晒け出して、苦しめてやりたいという感情も湧いた。周りには。誰もいない。この女だけ。秘書もいない。
「このゲームの成り立ち。知ってますか?」
「ただの対戦射撃ゲームだろ」
やはり、知らないか。
「戦闘訓練シミュレーションです」
このことは、開発テストに携わった人間しか知らない。そして、そのなかで生き残っているのは、自分だけ。
「兵士を作るためのゲームなんですよ、これ」
各国の御偉方が金と人を出して、人を機械化し道具にするための開発があった。その結果作り出されたのがこのゲームで、自分はその開発テスター。警察内でも腕利きだったので、呼ばれた。
「ゲームが殆ど作り終わった辺りで、開発者が御偉方に楯突いて、自爆したんです。数年前の爆破事件、覚えてますか?」
女。金髪が揺れる。理解しているらしい。
「あれで御偉方と開発者が全員吹き飛んで、ゲームの内容だけが残されたんです」
そして、それをたまたま生き残った別の御偉方が、金集めの道具にした。シミュレーションは対戦射撃ゲームとしてリリースされ、人気を博した。
「私が開発テストに携わったことは、誰にも知られていなかった、というか、知っていた人間が全員爆死したので、私はこのゲームで生きていくことにしました」
全世界のゲーム大会に出て。全ての敵を倒した。
「こわかったんでしょうね、このゲームが流行ることが。このゲームで、強いということは。人を躊躇なく撃ち殺せるかもしれないという危惧があった」
まぁ。
「意味のない危惧ですけど」
現に、今まで出会ったなかでもっとも強い、隣の金髪の女は。町のやさぐれものを集めて、保護しているわけだし。
「それが分からないまま。戦って。戦い続けて。そろそろ心が壊れるかなというあたりで、中央から呼び戻しがかかって、この町の警邏の任につきました。
さて。
「私の身の上話はこんな感じです」
隣の女。これだけ重い話をくらえば、さすがに
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