第3話

 ラッキーなことに、ゲーセンにあの男がいた。この男は、相当に話が分かる。いざこざの解決もすぐに終わらせられる。


 一瞬だけ、目が合う。あぁ、助かったな、早く終わる、っていう感じの視線。向こうも同じことを考えてたらしい。


 じゃあ、お互いWin-Winで。


 反目しているやさぐれどもの気をなだめ、それっぽく話を鎮め、いつものように。


 んで。


「今後は注意してくださいね」


 この一言でうちの者が噛みつかんほどに反目して、そしてこのいざこざは終わり。いつものことだ。


 終わった終わった。


 うちのものどもはゲーセンを出て、警邏のひとたちも町の警邏に戻る。いつもの風景。


「はぁ」


 意味もない。

 理由もない。

 ただの遊びでしかない。こんなものは。じゃれあってるだけ。


 たまたま、対戦射撃ゲームが空いた。


「めずらしいな」


 この町の唯一と言っていい娯楽なのに。誰も座らないのか。


 普段、座ることはなかった。わたしがいるだけで、ゲーセンにも客にも与える影響が大きいかなと思ったから。これでも、やさぐれどもの長なわけだし。


 周り。


 ひとは、いない。ひとりを除いて。


 座る。


 数年ぶり、だろうか。

 動きは覚えているかな。

 あの頃は、ずっとやってたな。


「おい」


 そのひとりに、声をかける。


「座れよ。できるんだろ?」

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