第2節 陰湿なる教室
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PM 4:40 札幌市内の高校
いじめられた生徒を避難させ、ひとまずは私が使ってる空き教室に退避する。彼女は、精神的に酷くやられてるみたいで、今は担任の教師に任せてる。
私はというと、昨日同様あの教室に入り込み、調査を始める。教室の中に入ると、昨日解呪したのに気づいてないのか、異質な『
しかし、やはりこの教室には何か陰湿な雰囲気を感じる。あの結界とは別に、何か違うものが感じ取れる。
調べてると、細い糸が張られてるのが見える。私は指を切って出血をさせ、それを触媒に血でできた蝋人形を作る。すると、蝋人形は糸の張られてる位置で砕け散ってしまった。
「やはりか。結界だけじゃなく、まさか魔術でブービートラップ擬きまでできてしまうとはな」
私が思うに、この糸は魔術の拡散機のような物らしい。しかもこれは、人肌では感じ取れないにまで繊維が非常に細かい物だ。
その為、非魔術師であるこのクラスの生徒は、魔術をかけられたことも気がつかず、そのまま洗脳されたのだろう。
しかし、私や『
私は、この糸に指を触れる。すると、糸が発火し教室に張られた物は全て塵と化していった。
「これでもう、あの子のような被害は出ないだろう。戻って報告しに行こうか」
私は教室を離れる。すると、ゾロゾロと不良生徒達が現れた。
「よう。さっきはこいつらが世話になったみたいだな?」
「世話になった? なんのことかな? 私はただ、煙草を吸いに行ったら偶然鉢合わせただけだが?」
「と、惚けるんじゃねぇ!? テメェのせいで、せっかくのお楽しみがパァになっちまったじゃねぇか!?」
「お楽しみ? 可憐な乙女の処女を物にしか感じてない猿が、ほざくんじゃないよ」
私の言葉に、その高校生が殴りかかる。だが、私は彼の手の首の関節を
「ぎゃあああああ!! 腕がぁ!! 俺の腕が!!」
「後で直してやるから、そこで静かにしてろ」
「このアマが!! なめんじゃねぇ!!」
もう1人の高校生が火球を放つ。その火球は私に直撃するが、私には一切ダメージが入らない。
「なんだ、その程度か? なら、私が手本を見せてやろう」
私は、
「ぐは! いてぇ! 俺のより小さいはずなのに、なんでこんなに威力がちげぇんだ!!」
「当然さ。こちとら本職でやってんだ。君らの遊び程度じゃ、叶うわけなかろうよ」
黒い
だが、私はそれを軽やかに回避し、小杖を振るうっては攻撃した生徒を転ばせた。
「まだやるかい? 私は構わないが、そっちに死人が出るかもな」
私の脅しに、彼らは怯えだしその場を後にする。私はその場に残り、彼らをあえて逃した。
いや違う、事前に先ほど教室に張られていたのと同様の糸があり、そのため動けなかったからだ。
おそらくは、あの連中の中に特に魔術に卓越した人物がいたのだろう。そうなってくると、今回みたく直前で逃げられるのは明白だ。
特に、頭に血が昇ってる時など、正常に判断できない時が一番危険だ。それによって、下手をすると死んでしまうからだ。
後ろから、誰かの気配を感じる。振り向くと、依頼してきた学生達がきたみたいだ。
だが、少し気配が違う。感じ取った気配は、初めてあった時とはまったく違うからだ。
「その気配……。スルーズとヒルドか?」
「――――ちぇ。せっかくうまく擬態できたと思ったのに。さすが、『魔女』様ですね」
「申し訳ございません。私が止めたのですが、ヒルドが聞かないもので」
「美羽とは一緒に動いてないの?」
「まぁ、一応調査で潜入しているだけなので。お姉様なら、黒幕の捜索に向かってますよ」
「ですので、私とヒルドはこうして、ここの生徒に擬態して学生達とその魔術師が接触しているのが確かなのか調査をしていたのです。
しかし、ことが深刻なあまり、あなたの力添えが欲しい次第だったのです。
なお、このことはお姉様には言っておりません。私たちが、彼女達にそう仕向けたからです」
「さすが、美羽の妹達だ。それで? 美羽はどうしてる?」
「先日、帰国されたばかりです。なお、
どうやら、美羽はもうこの街に来ているそうだ。今はエイル達妹達の報告を待ってるそうだ。
「そう。美羽らしいとは美羽らしいが。では聞くが、美羽を仕向けたのは、誰だい?」
「リリィ議長だよ。執行者が殆どアフガンに行ってしまったから、仕方なくね」
やはりそうか。魔術院でも高い地位である魔術評議院。それも、その右腕でもある美羽を、リリィはセシリアの代理で向かわせたようだ。
それなら、あっちの人員で誰か引き向かせばいいのに、そうしなかったのはアフガンに何かあるのかと私は思った。
「なるほど、
「はい。心使い、感謝します。では、また何かあれば。ヒルド、行きますよ」
「相変わらず、堅いな〜スルーズは。それじゃ、また」
ヒルドは、スルーズの後を追うようにその場を離れる。私は、さっきから張られてる糸を燃やし、空き教室に戻る。
こうして、波乱な事態が起きた2日目の調査は、終わりを告げたのだった。
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