第31話 5年後のそれぞれ
31 5年後のそれぞれ
湖から現れた双子の乙女は、今日も元気です。
***
乙女レイカ
レイカはこの帝国で一番の起業家になっていた。隣国からも招待を受けるほどだ。
これまでは領地に括った運営するのが一般的だったが、帝国全体・・いや、隣国にも足を伸ばして良いものを取り寄せより沢山の意見を取り入れ、商売を展開していった。
「今日は久しぶりの稽古ですね。頑張りましょう。」レイカは皇后陛下とアーネストに笑顔を向けた。
レオンハルトの管轄である領地の管理を代行する母を手伝う事もある。
ティクティンの村は、モデルケースとなった。
観光スポットを作る事で、経済を活性化し雇用率を上げる事に成功した。
人が増える事により、警備隊を配し国境線である土地を住民から守り他国からの侵略にも備える事が出来た。修道院は、孤児院の役割も果たした。そこには優しいシスターの微笑みが絶やさずにあった。
コテージとオープンカフェの売り上げも上々で、次の商売を考えている最中だ。
5年間でレオンハルトの領地と帝都を何往復したであろうか?
レイカは忙しさをものともせずに、たまに皇帝宮で2人に空手を指導していた。
練習中はスエット姿である皇后陛下とアーネスト。
2人は健康の為、護身術のためにも熱心に練習をしていた。
「乙女レイカの活躍は凄い勢いだな・・・」
もうすっかり馴れてしまった皇后陛下のスエット姿を眺めながら、皇帝陛下が呟いた。
***
乙女クルミ
クルミはこの世界の不便さに、嘆いていた。
「もうドレスは疲れた~。休日はスエットで寛ぎたい~。」と言って
自分で生地を選びパターンを作り、スエットを作り部屋着にした。
スエットは皇后陛下とアーネストの空手の練習時の愛用となり、軍の練習着にもなった。
「アイスクリームが食べたい~!!」と言って氷を取り寄せて作って食べていた。
アイスクリームはオープンカフェのメニューに加わり、貴族達が好んで食べた。
これらの行動は全てレイカを通じて商売の役に立っている。
「クルミさんの我が儘は、役に立つ。もっとやりなさい。」とレイカが言ってくれた。
クルミも我が儘ばかりではない。料理の腕を活かし、安価で美味しいメニュー開発に力を入れ民の飢えを改善する事になった。たまにティクティンのカフェでお茶を入れる。
乙女に入れて貰ったお茶は美味しくて縁起が良いと、客足を延す結果となっている。
「お茶の用意が出来ましたよ。」クルミは空手の練習に励んでいる3人に声を掛けた。
皇帝陛下とレオンハルトも交えてのティータイムとなった。
久しぶりに仕事の話しを抜きにして、お茶を楽しんでいた皇帝宮内の東屋。
突然に訪れた男が「失礼いたします。両陛下。」と礼を取った。
「乙女クルミ様、今日で365日です。私と結婚して下さい。」
赤い薔薇を差し出してきたのは、ベガティである。
皇帝宮に来ていた時にクルミを見て、プロポーズをしてきたベガティに
クルミは、1年間赤い薔薇を届けてくれたら受けると言った。それから毎日薔薇が届いたのだ。
一緒に居たレイカとは双子の筈なのに、ベガティには見分けが付いているようだ。
クルミは毎日ゴールデンレトリバーの様に駆け寄ってくるベガティの事を、とっくに好きになっていた。
クルミは「まぁ、いいかな。」と言って、皇帝陛下とレオンハルトの顔を交互に見た。
皇帝陛下は頷いているが、レオンハルトは何やら渋い表情をしていた。
***
「レオンハルト様、もう諦めて下さいませ。」アーネストは、慰める様な声で言った。
「ベガティ様は、私達の結婚にも一役買って下さいましたでしょ。」と微笑んだ。
「今度の休みに、クレルモン伯爵に会いに行こうか。」
と言ってレオンハルトは、アーネストの腰に手を回して抱き寄せた。
「伯爵に娘を嫁に出す心境について相談したい。」やっぱりレオンハルトは納得していない様だ。
小さな男の子を抱いたクルミがやって来てアーネストの膝へ子供を預けた。
「お母様、クルミちゃまは結婚するの?」男の子はアーネストに問いかけた。
「そうよ。」アーネストが膝の上に座っている男の子の髪を撫でながら答える。
「クルミちゃまと結婚するのは、僕なのに~」と半べそになっている息子に、レオンハルトが苦笑した。
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