第30話 湖より現れた双子の乙女

30  湖より現れた双子の乙女



レオンハルトとアーネストの披露宴パーティより数日後・・・レイカとクルミは皇帝宮に呼ばれた。

レオンハルトの卒業式から帝都に来るまでの経緯を説明するためだ。


「両陛下とレオンハルト様の決定に従います。」


思わず助けてしまった双子の姉妹・・・意識が目覚めないとは思っていなかった。

結果的に自分達が身体を乗っ取ってしまったという罪悪感から、レイカは、伏し目がちにそう言った。


「皇帝陛下・・・」

レオンハルトは何か言いかけて、それを止めた。2人を庇いたい気持ちは自分勝手な都合だからだ。


少しの沈黙の後、皇帝陛下が重々しく口を開いた。

「人の命を勝手な理由で奪って良いものでは無い・・・しかし、助けようと努力した事は咎めるべき事ではないな。・・・天命とでも言うか・・・」


そして、小さく息を吐いた。

「その命、私に預けてもらおう。」


隣で座っている皇后陛下が、膝の上の手をぎゅっと握りしめた。



「2人にはレオンハルトの庇護の元に一代限りの爵位を授ける。帝国を民を平和へと導く事に貢献する事で、犠牲になってしまった命の償いとしよう。」


皇帝陛下の判断に、一同の者は胸をなで下ろした。

処遇が決まった瞬間にアーネストは、涙を流しながら2人を抱きしめた。



   ***



皇帝宮での会談が終わり、レオンハルトは双子をタウンウスへと連れ帰った。


「はぁ、お前達はまた邪魔をするのだな。私とアーネストは新婚だぞ。」

と溜息を大きくついて見せたが、その顔は笑っていた。



旅の道中、クルミは

「どうしよう?ねぇ、レイカどうする?」と散々パニクっていたのだが


レイカには、こうなる事が予測出来ていた。

賢帝との噂である皇帝陛下が、助かった命に死罪を申しつける事もないだろうし、牢屋に入れようにも罪状がない。罪を償うには、ただレオンハルト様に尽くすより他ないと思っていたのである。


この世界にはない知識を活かし、より人民のために尽くすのみだ。


4人は応接室のソファーに座り、侍女の用意してくれたお茶を飲みながら今後の事について話し合った。


双子の年齢は、13、4才頃か・・・

レオンハルトは学園に通いたいか?と訪ねた。すると


「レオンハルト様、私・・・湖より現れた双子の乙女になりたいです。」クルミが元気よく言った。


「湖より現れた双子の乙女?」皆が不思議そうに聞くと


「乙女ゲームのスペシャルキャラっぽいでしょ?」とクルミはニヤリと笑った。


突然の双子の出現。皇帝陛下からの後見。社交界からの好奇の目線。

それらを、湖の乙女が出現した事にして誤魔化そうというのだ。


「確かに・・・私も賛成です。湖の乙女が皇帝陛下、レオンハルト様の保護を受ける。それによって民に加護を授ける。高位貴族達の牽制にもなり、やりたい事がスムーズに行えます。この世界にはない私達の知恵を奇跡として伝える事で、浸透しやすくなるかも。」


クルミの思いつきに、レイカも興奮気味になった。


翌日レオンハルトは皇帝陛下に説明をする。


「成る程、湖より現れた双子の乙女の功績は、レオンハルトのもの・・・そして皇室のもになると言う事か。」

飲み込みの早い皇帝陛下は、新聞記者に記事を書かせた。


瞬く間に広まった噂・・・湖より現れた双子の乙女の崇拝者は増えていく一方だ。


数ヶ月をレオンハルトのタウンハウスで過ごしたレイカ達は、食事・睡眠・運動を充実させて健康的な身体を取り戻した。腰まである銀色の髪も艶が出てより神秘的な容姿となった。


そんなある日の事、レイカはレオンハルトにお願いを申し出た。

お世話になった修道院の近くに、コテージとオープンカフェを作って欲しいと。


レオンハルトの領地である湖の畔にある修道院に視察として4人で訪れた。

片田舎の湖の畔に出来たオープンカフェは、大盛況だった。


聖地巡礼、湖より現れた乙女が生まれた土地として貴族達の観光客で賑わっていた。

貴族達の観光により、修道院への寄付も増えた様だ。


レオンハルトと一緒に来た双子に、シスターは目を丸くして驚いた。

レイカとクルミはシスターに駆け寄り、抱きついた。


「まぁあなた達、元気になったわね。」相変わらずの優しい笑みでシスターが抱きしめてくれた。



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