第28話 結婚式 ~憧れのウエディング~

28 結婚式 ~憧れのウエディング~



アーネストが学園を卒業をしてから、2人は目まぐるしく忙しい日々に追われていた。

結婚式の準備である。


レオンハルトとアーネストは領地にいる両親を呼びよせて、相談を重ねアドバイスを貰いながら

教会との打ち合わせや、招待客のリストを作成していった。


レオンハルトの母は、領地の運営で忙しい身ではあるが少しの間ハウススチュワードに任せ

アーネストの両親との久々の再会をとても楽しんでいるようだった。

3人は学生時代に戻ったかの様に、お茶やお喋りを楽しみレオンハルトの父である前公爵を懐かしんだ。


2人の母親が何よりも口出しをしたのが、アーネストのウエディングドレスだ。

アーネストを着せ替え人形のように、色々なドレスを試着させては


「このドレスも素敵だけれど、他のも着てみないと。」


「ねぇ、このドレスはどうかしら?とっても可愛らしいわ。」などと


アーネストを挟んで色々と盛り上がっている。


その間、レオンハルトとクレルモン伯爵は衣装部屋には入れてくれない。

私だって、アーネストのドレス姿がとても気になるのだが・・・


「あの盛り上がりの輪に男が入って行くのは、無粋だ。当日の楽しみに取っておく方が良いぞ。」

そうクレルモン伯爵がアドバイスをくれたので、言う通りにした。


両陛下も列席されると言い出したので、衣装や料理なども最高のものを予定していた。

両陛下の時の様にパレードは行わないが、その時に次ぐ盛大な結婚式になるであろう。



そうして結婚式当日を迎えた。


荘厳な作りの教会で行う結婚式には、両陛下並びに国の主要人物や、隣国の王子なども参列しており

準備を終えたアーネストは控えの間で、静かに時をまっていた。


左の扉から入場をしたレオンハルトは、司祭様の前で右の扉から入場をしてくるアーネストを迎える。

扉から現れたアーネストは、息を呑むほどに美しく招待客のみならず

レオンハルトの目を釘付けにした。


「とっても綺麗だよ、アーネスト。」

と言ってアーネストの手を取り司祭様の前までエスコートをする。


招待客の溜息が、ここまで聞こえて来るようだ。


司祭様の前で誓いの言葉を宣言し、誓いの口づけを交わす。


逞しく育ったレオンハルト、美しく聡明に育ったアーネスト。

お似合いの2人の姿に、両親は心から安堵し涙を流して喜んだ。



式も終盤に近づき、祝福のフラワーシャワーを浴びながら歩いて行く2人に皆が祝いの言葉をかける。

そんな様子の中、少し離れた所から見知らぬ双子の少女の姉妹が見守っていた。


2人の少女は、少し痩せていて着ている服などからも裕福な家の令嬢には見えなかったので

華やかな雰囲気の場に入って行くことが憚れる様に思えた。

ゆっくりと歩いて来る2人を、うっとりと見ていた姉妹だったが・・・

気持ちを抑えきれなくなった様子の1人が、レオンハルトの方へ駆けだして行き、行き成り飛びついて来た。


「お久しぶりです、レオンハルト様!!」少女は、ニッコリ笑って叫ぶように呼んだ。


飛びついて来た見知らぬ少女の、見覚えのある表情。


「えっ?えっ?クルミ嬢?」レオンハルトは居る筈のない人の名を口走る。


クルミの名を聞き、アーネストも目を見張る。


「お祝いに来ちゃった。」

クルミはレオンハルトから離れて、アーネストに抱きついた。


「初めまして、アーネスト様。おめでとうございます。」そう言ってくれた少女に


状況を察したアーネストは「ありがとうございます。クルミ様。」と微笑みを返した。


離れた所から、少し目を細めて見ていたもう1人の少女もゆっくりと近づいて来て

「レオンハルト様、アーネスト様。おめでとうございます。」

と言って、カーテシーをしてみせた。


レイカは最高のエンディングである教会のウエディング・・・最初から遠目に見ていた。此の日に立ち会えた事に、憧れのレオンハルト様とアーネスト様の晴れの舞台をこの目で見られた事に感無量で涙を溜めていた。



アーネストはその少女の手を取り「ありがとうございます。レイカ様。」と言った。



翌日行われた披露宴パーティでは、公爵であるレオンハルトへの無礼とも思える行い。

それを嬉しそうに受け入れている、レオンハルトとアーネスト。


謎の双子の少女の出現に社交界の噂と興味を一心に浴びた。






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