第27話 アーネストの卒業
27 アーネストの卒業
レオンハルトは一連の流れを皇帝陛下へ話しをしていた。異世界からの転生者が3人も居たからだ。
シャルロットのした事は許せる事ではないが、シャルロットにもアーネスト同様に転生者が付いていた事。そして、その転生者の善悪が把握できない事により、シャルロットも被害者かも知れないのでと温情を見せてアーネストに輩を向けた事を公に断罪しない事にした。
何よりシャルロットが人格崩壊をおこし、俯いて何やらブツブツと呟いているだけで
事情を聞く事も出来ないし、反省を促す事も無理の様だ。
シャルロットに取り巻いていた令息令嬢の心情の心配していたが、社交界に影響もなく
ミリア・オリビア達と同様に、シャルロットに心から心酔していた令嬢もいなかった。
ミリアとオリビアは、直接アーネストに詫びてくれた。
レイモンド子爵令息に至っては、卒業式の失態で子爵家を廃嫡になり跡目を継ぐ事になった弟が来年度学園に入学してくる予定だ。
今はアーネストのバイブルとなっている、レイカ伝とクルミ伝(勝手に命名した)貰ったノートも全て見せた。
異世界からの情報が国政の役に立つかもしれないからだ。
皇帝陛下、皇后陛下にアーネストと共に会談も行った。
食材、調理法、算術、初めて知る情報が沢山ある。
初めは信じられない様子の両陛下だったが、レオンハルトの信頼が厚い事や日記の内容がそれを信じさせた。
アーネストはそれから2年の間、学園での勉強に勤しみ休日は皇帝宮に通っていた。
レオンハルト様は、卒業してから皇帝陛下の側近として毎日政務に励み、時には皇帝陛下の剣のお相手等もしている。
そして、クルミ伝に記されていた大豆等にも検討を重ねて居る様だ。
先の戦争で、食糧飢饉の問題がなければ、先帝やレオンハルトの父も死なずに済んだかもしれない。
2人はそんな事を考えながら、一生懸命に取り組んだ。
アーネストは皇后陛下と交流を育み、一緒にクルミ伝のお菓子レシピの挑戦や、レイカ伝の空手の練習等も行っている。空手の練習をしている2人を皇帝陛下が目にした時には、口をパクパクさせてレオンハルトに
「あんな格好をしているが、大丈夫なのか?」と心配そうに聞いてきた。
「諦めて下さい。2人とも大変楽しんでらっしゃるので。」レオンハルトは溜め息混じりに皇帝陛下へ、進言した。
皇后陛下は、アーネストに学園を卒業したら侍女ではなく相談相手として側にいて欲しいと打診をしてきた。
アーネストはレオンハルト様に相談をし、皇后陛下に良い返事をする事が出来た。
「2人とも皇帝宮勤めなら、忙しくても会えるね。」
レオンハルトは、そんな単純な理由で即決したのだ。
あの一大事件。婚約解消を推進された卒業式からもう2年。
人々はシャルロットの事を忘れ去り、平穏な学園生活を過ごしていた。
アーネストといえば2年を過ごす内に、友達も増え随分と社交的にもなった。
人一倍勉強に励み、人一倍公爵夫人、皇后陛下の側仕えとして社交マナーの他、外交のために3カ国語を修得した。
そこには努力に裏打ちされた、気品に満ち溢れた姿のアーネストがいた。
そして今日、アーネストの卒業式。
2年前のレオンハルト卒業式の時よりも多くの、両手に溢れる赤い薔薇を受け取ったアーネスト。
来賓としてレオンハルトも来ていた。その手に赤い薔薇を持って。
レオンハルトは、学園の令息達に囲まれている人混みを掻き分けてアーネストの元へ進み出た。
「アーネスト嬢。私の赤い薔薇も受け取って頂けますか?」
レオンハルトが赤い薔薇を差し出すと
「はい。レオンハルト様・・・」と言って顔を赤く染めて白い薔薇を差し出した。
この瞬間に多くの男子生徒達の失恋が決定したのだが、会場は拍手に包まれた。
レオンハルトが、両手にあまる赤い薔薇の花を持つアーネストを見た時に
「私のアーネストは、誰にも渡さない。」と些かの焦りを感じていた事は、内緒の話だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます