第26話 ベガティ公爵令息Side

26 ベガティ公爵令息Side



皇帝陛下から、呼び出しを食らってしまった・・・

ベガティは思いの他、落ち込んでいた。

悪い事は重なるものだ。



人生でこんな恥ずかしい思いをしたのは、初めてだった。

公開プロポーズを無視されるなんて。


どこが間違っていたのだろう?


私はモテる。次期公爵という身分も手伝っているとは思うが、ルックスが良い。

言い寄って来る令嬢も、数多くいる。そんな日常に馴れていた。


学園で初めてアーネスト嬢を見た時、天使の様だと思った。

ハニーピンクのふわふわの髪、水色の瞳で陶器のような白い肌。コロコロと鈴の音の様な喋り方。


公爵家からは、シャルロットを勧められていた。

シャルロットも美人ではあるが、冷たい印象が否めない。

ベガティは、婚約をするのを引き延ばしにしていた。


シャルロットも、婚約をする事を進めたくない。

両家の親達が乗り気であったので、躱すのも一苦労だった。


アーネスト嬢には婚約者がいる。レオンハルト公爵・・・

だが、諦めきれない。自分も次期公爵家を嗣ぐ身分だ。負けていない。


気を取り直して、新入生ダンスパーティの時にダンスを誘ってみた。

踊ってくれた!!!楽しそうにしている。


ベガティは今まで軟派な事ばかりしていたが、今回は初めて本気になった。

それ程までに、アーネストは魅力的だったのだ。


皇太后様主催のガーデンパーティでは、エスコートをするお役目があった。

運良くアーネストのエスコートをする事が出来、空いた時間には話しをする事も出来た。


「アーネスト嬢、ピンクと緑のネックレスがとてもお似合いですよ。ピンクはアーネスト嬢の髪の色ですね。アーネスト嬢の美しさを、一際引き立たせています。」と言った。


アーネストは「ありがとうございます。」と微笑みを返してくれた。

やった!!いい感じに事が進んでいる。


レオンハルト公爵から招かれたお茶会でも、雰囲気良く出来たと思う。

後は卒業パーティで赤い薔薇を送るだけだった。

それなのに・・・



   ***



「公爵家を嗣ぐ者としての振る舞い、立派であった。」

何故か皇帝陛下から、お褒めの言葉を頂いていた。


「卒業パーティでの事、レオンから聞いたぞ。」そう言われた時は、顔から火が出る思いだった。


「身分を鑑みず、公爵であるレオンハルトへの発言をする子爵令息への牽制は、流石である。そして、自分を道化としてでもパーティの流れを変える行動。あの場が丸く収まり、他の令息令嬢達も感謝をしているとか。頼もしく思ぞ。」


自分に自覚のない事を、褒め称えてくれる皇帝陛下。


ベガティは、心にハテナを浮かべながらも

「次期公爵家を嗣ぐ者として、当たり前の振る舞いをしたまでの事です。」

と言ってその場を乗り切った。


皇帝陛下より、公爵家へも知らせが届いていた様で両親からも大変褒められた。

シャルロット嬢との婚約をせず引き延ばした事も先見の明があったと。


シャルロットと言えば、卒業パーティでの失態が元となり社交界からも、はじき出されている様だ。

公に罪に問われてはいないが、一部貴族の間では『金で輩を雇ってアーネストを襲わせた。』という

情報もチラホラと噂されている。


娘に甘かった侯爵も、シャルロットを修道院に送る決意をしたらしい。




新入生歓迎ダンスパーティ・・・

皇太后様主催のガーデンパーティ・・・

レオンハルト様のお茶会・・・


次々とラッキーパンチを繰り出していたベガティであったが、最後の最後で運も途切れた。


そんな残念なキャラのベガティだからこそ、攻略対象キャラに成れなかったのである。


こうしてベガティの淡い初恋は、胸に少しの痛みを残して幕を閉じたのである。


元々は素直で楽天的なベガティである。

まだまだ逞しく成長するであろう。

その時が来れば、自分だけの真実の愛を見つける事も出来るかもしれない。



余談ではあるが、皇帝陛下の呼び出しはレオンハルトのお願いを皇帝陛下が叶えた形であった。

卒業パーティで、活躍をしてくれたベガティの顔を潰さぬように公爵家が、汚名を被らぬ様に配慮されたものだった。












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