第23話 そして卒業パーティーの日へ
23 そして卒業パーティーの日へ
卒業パーティーの前日、それぞれがそれぞれの思惑に中々眠れぬ夜となった。
レオンハルトは、明日に起こりうる全てのハプニングに対応しなければならない。
自分自身とアーネストの未来の為に・・・レイカ嬢とクルミ嬢の思いを乗せて
シャルロットは勝ちを確信し、ワクワクとドキドキに心臓が落ち着かぬままにベッドに入った。
もう私の中には、居ないユキナ様へ話しかける。
「ユキナ様、作戦は大成功です。明日の晴れ舞台、見守っていて下さいね。」
***
そして、卒業パーティの当日を迎えた。
学園生徒達が、次々に集まる。その手には一本の薔薇を持って。
伝統行事のイベントとして設けられたオープン告白。それには何の保証もない。ただの行事だ。
いつの間にか、噂だけが先行している。永遠の愛を結ぶとか、真実の愛を見つけるとか・・・
もう都市伝説レベルだ。皆がそれを知っていた。
だが不思議と、卒業パーティで結ばれた2人には幸せな者達が多いのも事実。
たかが、イベント。されどイベント。
アーネストとシャルロット。2人の手には早くも数本もの赤い薔薇があった。
早い者勝ちではないのだけれども、気のはやる令息達がすでに手渡して居たのだ。
そしてアーネストとレオンハルト、シャルロットが鉢合わせた時に一種の異様な空気が流れ事が起こった。
レオンハルト様から赤い薔薇を貰うきっかけを欲していたシャルロットは、チャンスとばかりに
「アーネスト様、レオンハルト公爵様との婚約を解消なさって下さい。」
レオンハルトの隣に立って、泣きそうな声で告げた。
潤んだ瞳で上目遣いにレオンハルトを見上げ、レオンハルトの代弁をしたのだ。
シャルロットの発言に、回りにいた人達が息を呑んだ。
いち早く空気を察した令息が、シャルロットの横に並んで鋭い視線をアーネストに投げかけた。
「シャルロット嬢の仰ること。ご尤もです。アーネスト嬢は色々な令息を、趣味の様に籠絡して居ました。公爵夫人になるには、如何なものかと、思いますが?」
ミリアとオリビアもシャルロットとレオンハルトを挟んで立っていた。
レオンハルトの退路を防ぐかの様に。
その騒ぎを聞きつけて、見に来ていたベガティが
「私も次期の公爵になる予定の者だが、貴様なんぞに公爵夫人の是非を決めて貰うつもりはないが?」
軽く令息の肩を突いて、ベガティが睨みをきかす。
意外な登場人物に、レオンハルトは驚いていたが
「私もレイモンド子爵家に婚約者を決めてもらう必要は無いとは思いますが・・・」
「シャルロット嬢・・・」
レオンハルトは溜息が出るほどの美しい笑みで、シャルロットの方へと向きを変え少しづつ近づいた。
そんな一同が酸欠に陥りそうな、呼吸もままならない状態の時・・・ベガティがアーネストの元に進み出て薔薇を差し出した。
「アーネスト嬢、私の愛を受け入れて下さいませんか?」
この行動に慌てふためき、シャルマン・ヘンリー・エリオットもアーネストへ薔薇を送った。
予想だにしなかった光景にレオンハルトは一瞬目を見張ったが、シャルロットへと顔を近付けた。
「レオンハルト様・・・」シャルロットは顔を赤く染めて、溜息の様な声を出した。
『金で雇った輩でアーネストを襲わせた事、私は許さない。』シャルロットの耳元で告げると踵を返し
「アーネスト・・・」と言って薔薇を手渡した。
「レオンハルト様・・・」
アーネストは、ホッと息を付いて恥ずかしそうに俯き加減で、白い薔薇をレオンハルトへと渡した。
レオンハルトがアーネストの腰に手を回し、2人が笑みを交わし会うと
会場から拍手が起こった。ミリアとオリビアだった。
「何で?何で?何処が間違って居たの・・・ユキナ様・・・」
シャルロットが崩れ落ちて喚いていた。
***
俯瞰でみていたレイカとクルミは、2人を見守りながら抱擁をかわしていた。
「クアトロコンプリート達成よ。」
クルミは、ユキナの方をチラリと見ながら言った。
その2人を見ながら
「・・・バッドエンドか・・・」と舌打ちをしながらユキナは去って行った。
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