第19話 レオンハルト様のお茶会作戦会議

19 レオンハルト様のお茶会作戦会議



ここ数日に渡り、レイカとクルミの話合いは困難を極めていた。

レイカは解決策が見つかるまで、身体をアーネストに譲る事を約束させた。


急に現れたライバル、シャルロットとその転生者の存在・・・。

シャルロットは転生者の攻略法を持っている。その事を前提として、レオンハルト様を奪い合う。


クルミは、ガチンコ勝負に萌えていた。


レイカは、負けられない戦いがここにある。・・・三つ巴、女達の仁義なき戦いよ。

と訳の分らない奮起の仕方をしていた。


暫くの間は、あーだこーだと言い合っていたが、やがて無言になる。

話が纏まらない。良い解決策が見つからないのだ。


レイカは、思考を切り替えて

「クルミさん、乙女ゲームのバッドエンディングについて考えてみましょう。・・・敗因は・・・」



   ***




「さぁ、学園に着いたよ。アーネスト。」と言って、アーネストの手を取った。


レオンハルトは、久々に充実したアーネストとの学園生活に喜びを感じていた。

・・・本来であれば、この光景が日常なのだが。


今日のアーネストは、頭の中がスッキリとしていた。

何時もなら、モヤが掛っていたり、ボーッとしていたり、記憶が飛ぶ事さえあった。

午前の授業が終わり、穏やかな気持ちで学園内の庭を歩いて行く・・・


すると、色々な人から声をかけられて戸惑っていた。


「アーネスト嬢、今から昼食ですか?御一緒にどうですか?」

「アーネスト嬢、先日は大変楽しかったですね。またの機会も宜しくお願いします。」

「アーネスト嬢、困っている事はありませんか?何時でもお手伝いします。」


・・・アーネストは意味が分らず、頷きながら微笑みを返して

「レオンハルト様と待ち合わせて居りますので。」と言った。


何人目かに声を掛けられている時、レオンハルト様が早足でこちらに向かって来るのが見えた。


「アーネスト、待たせてしまったね」と言いながら腕を出してきた。


アーネストはレオンハルトの腕に手を添えて

「失礼致します。」と頭を下げた。




   ***



敗因・・・敗因・・・敗因・・・

2人はまた黙り込んで、各自の思考を巡らせていた。


ガーデンパーティまでのイベントは、攻略対象キャラの好みを熟知していれば、そう難しくはない。

相手の長所を褒める・・・などで、接点を多く持つこと。


その時、クルミが急に顔を上げて歯を見せてニヤリと笑った。

「レイカ聞いて・・・凄い事を思いついたんだけど。」ちょっと焦らしたように言った。


「このまま、レオンハルト様の攻略に成功するとするでしょ?あと3人の攻略対象キャラから赤い薔薇を受け取ると・・・クアトロコンプリート達成するの。」


「ええ、それで?」


「それでって・・・クアトロコンプリートよ。凄くない?私史上初の快挙だわ。攻略対象者の4人からも赤い薔薇を受け取る。」クルミはウットリとしている。


「分ったわクルミさん。・・・そんなに私に殴られたかったのね。」


「だって、だって~。私は猪突猛進を心に乙女ゲームをしてきたもの~。」



力を合わせてなんて・・・所詮無理な話しだったのか・・・

レイカとクルミはプレイヤーのタイプが全然違っていた。


クルミは十数人いる対象キャラの全てを攻略している。1度には無理だが、何回も何回もプレイして。

プレイヤー令嬢もアーネストを含めシャルロットやフリースタイルで挑む事もあった。


一方のレイカは、レオンハルト様だけを攻略してきた。プレイヤー令嬢もアーネストのみで。

何回もプレイしているのは一緒だが、レオンハルトのメイキングシーンをゲットする為だった。



お茶会ルートまで残っている対象キャラの殆どが、卒業パーティで赤い薔薇をくれる。

その中から、白い薔薇を差し出す相手を選べば良いのだ。

断罪イベントが発生しなければ、そのままエンドロールが流れる。普通のハッピーエンド。



しかし、お茶会ルートを制した者だけに与えられた特典。『教会での結婚式のシーン』

それは未来までの幸せをも保証されているのだ。


レオンハルト様とアーネスト様のウエディングシーンは、何回見ても美しい・・・

レイカは脳内で、ウエディングシーンの回想をしていたが


クルミがブツブツと文句を言っていて、邪魔をされた。

「私・・・断罪イベントの時なんて、脳みそがグルグル回るから、虹が出なかった事くらいしか覚えてないし・・・まぁ、お茶会も空回っていた気もするけど・・・」


「そう、それ!!!虹よ。・・・私が引っ掛かっていたのも。」レイカがクルミの声を遮って叫んだ。



レイカはクルミの手を両手でしっかりと握り、作戦の内容を細かく告げた。


「成る程、成る程。流石はレイカ。レオンハルト様オタクね。良く見てるわ。」

とクルミも感心した様子だ。


・・・今の言葉は、褒められたのか?それとも貶されたのか?




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