第17話 シャルロットSide 1

17 シャルロットSide 1



「本当に忌々しい女ね!!」


完璧な淑女であるはずのシャルロットは、らしからぬ表情で歯噛みをしていた。


レオンハルト様と懇意にさせて貰ってから、二年。二年もの月日を費やしたのに

アーネストが現れてからは、何もかもが上手くいかない。


初めてレオンハルト様のお姿を拝見したのは、学園に入学をして間もない頃。

深い緑色の艶やかな髪に、吸い込まれそうな深い緑色の瞳。美しいお顔。成績も良く、家柄も良い。

貴族としての立ち振る舞いも、完璧。


シャルロットは出会って直ぐに恋に落ちた。


それからのシャルロットは、レオンハルトに近づきレオンハルトの好む様に振る舞った。


噂では婚約者が居るらしいけど、そんな事は関係ない。

相手はしがない伯爵令嬢。

それに比べて私は、皇室にも縁のある侯爵令嬢。地位、財産、品格、美貌、どれをとっても

私ほどの令嬢はいない。レオンハルト様と婚姻を結ぶであろう世代で、一番相応しいのは私だ。



それなのに・・・アーネストが入学してきて毎日、毎日。

レオンハルト様はアーネストの手を取り登校し、アーネストと昼食を摂る。

二年かけて縮めた距離も、少し離れてしまった。



大枚を叩いて雇った輩達も、役立たずだった。

アーネストを誘い出して襲わせようとしたのに。


どうしたら良いものかと、考える日々が続いた。

そんなある日、朝起きて侍女に朝食を準備させていると、机の上にノートが開かれてあった。


『シャルロット様へ

レオンハルト様の攻略は、順調でしょうか?私がアドバイスをして差し上げます。

このノートへ今までの経緯を書いておいて下さい。』


謎の文章が書き綴られていた。


私は半信半疑で、これまでの経緯を綴った。

アーネストが入学してから、上手くいっていない事。そして輩達を雇って襲わせようとした事。

最後に、貴方は誰ですか?と書いて。


次の日の朝、机の上のノートに新しいページで返事が書かれていた。



   ***



あの日から、私達の交換日記が始った。

彼女の名前は、ユキナ様。異世界からの転生者だと言う。私は直ぐに嘘だと思った。

侍女が直接アドバイスを出来ずに、こんな手段に出たのだろうと。


それでもレオンハルト様と結ばれるのであれば、手段を選んでいる場合ではない。

私はこの嘘に乗っかる事にした。



でも、真実は違っていた。ユキナ様は色々な事を知っていた。

この先に予定されている、新入生歓迎ダンスパーティや皇太后様が主催のガーデンパーティの事を。

ガーデンパーティの事は、私も知らなかったのだが・・・暫くしてから、招待状が届いた。

それは、侍女には知り得ない情報だった。



私はユキナ様の存在を信じる事にした。

その日以来、あらゆる質問を日記にしたためた。


ユキナ様は、とても要領良く説明文を残してくれていた。


彼女は異世界の乙女ゲームのプレイヤーだったのだが、交通事故で亡くなったらしい。

この世界に転生をしてきて、アーネストに入ろうとしたのだが・・・

先客が居て、はじき出されてしまったのだ。少し彷徨ったあげく、私の中に入って来たらしい。

ユキナ様は私の心の中にいる。


!!!そう、アーネストの中にも転生者が居るのだ。


ユキナ様は私の中で、少し観察をしていたらしい。

アーネストは、転生者と入れ替わっていると。


「私は、プレイヤーに徹する。」と言って、ユキナ様は入れ替わりを望んではいないらしい。

入れ替わると、私自身の記憶がなくなってしまうからだ。

私の中でユキナ様は、情景を見る事が出来るが、逆は無いのだとか。

ユキナ様が表に出てしまうと、私は眠ってしまって記憶に残らない。

それを防ぐ為に、私達の通信手段は専ら交換日記だ。


それからの日々は、アーネストの観察も行った。

学園に入学をした頃の、小動物の様に大人しいアーネストとは違い今は社交的?積極的だ。


私達と違ってアーネストは、入れ替わりをしているのが見て取れる。

この気付きの差は、かなり大きい。


私とユキナ様の作戦は、順調に進んでいた。ユキナ様はかなり頭の切れるお人の様だ。


シャルロットは、勝利を確信してほくそ笑んだ。













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