第15話 イベントの反省会

15 イベントの反省会



イベント終了・・・翌日


朝からレオンハルトとレイカの定例会。午前はレイカの時間、授業を真面目に受ける。


午後からはクルミの時間。こちらも真面目に令息達の好感度を上げるために奔走する。


そして夕方、アーネストの時間。

扉がノックされ、レオンハルトの姿が現れた。


「昨日はお疲れ様。クルミ嬢。・・・棒読みの台詞を有り難う。」

レオンハルトは嫌味の1つでもクルミに言いたかった・・・だけだった。


「レオンハルト様の棒読みも、中々のものでしたよ。」

クルミは、自分には関係ないと目を反らしたが


「シャルロット嬢に嫌みを言われたよ。」と言われ向き直る。


「ふ~ん。何て?」


「有り難う御座います。レオンハルト様の髪と瞳の色ですから。・・・と

シャルロット嬢のネックレスを褒めた時に、クルミ嬢と同じ口調で返された。

どうやら、我々の会話が聞こえていたらしい・・・」


クルミは一瞬、会話を流そうとしたが・・・

ちょ、ちょ、ちょっと待て!!!


頭を抱え込み、その場に蹲ってしまった。美しいアーネストの姿で、とんでもない格好をしている。

そのまま、う~う~と唸る事数秒・・・



「レオンハルト様、何攻略されてんのよ~!!」と大声で叫んだ。


何故だか・・・怒っている様子だ。


「今すぐにレイカと相談するから、お茶は自分で入れて!」

と言い残して、慌ただしげにソファに座りアーネストとスイッチした。


レオンハルトは、クルミの言っている事が分らずに只アーネストの身体を支た。

いきなりスイッチしたら、アーネストが危ないじゃないか!明日、レイカ嬢にお願いしなければ・・・と

見当違いな事を思いながら。






   ***



レイカとクルミの会議中


「レイカ、レオンハルト様がシャルロットに攻略されてるかもしれない。」

クルミはレイカにいきなり告げた。


「どう言う事なの?」

レイカが落ち着けと言わんばかりに、穏やかな口調でクルミに聞き返した。


「ダンスパーティのお相手も、ガーデンパーティの会話もクリアしてるのよ。」


クルミは思い出せる限りの状況をレイカに説明をした。

そして、レイカにも気になる事を質問しながら、2人の意見をすりあわせるように考えた。


!!!レイカが恐る恐る口を開く。

「レオンハルト様専用、好感度上げの朝の挨拶も・・・」


「そんなのがあるの?」クルミも知らなかった様だ。


「ええ、地味な作業だから人気が無いのだけれど・・・。偶にレアなメイキングシーンをゲット出来るのよ。レオンハルト様専用の攻略法よ。好感度アップ度も、そんなに高くないし。

でもゲームの補正力は、作用しないのでしょ?レオンハルト様とアーネスト様は、愛し合っているわ。」


「補正力は、作用しない。有り得ない事は起こらない。不自然な事は・・・

でもシャルロットは、自然に攻略している。だから、有り得ない事ではないかもしれない。」


2人は少し無言の時を過ごした。

私達のせいで、レオンハルト様とアーネスト様の幸せな未来が壊れるかもしれない・・・


レイカは勿論の事、クルミも2人の幸せを壊す事は本意ではない。

卒業パーティでは、何人もの人から求愛をされるだろう。そのための攻略だ。



卒業パーティには、男性は赤い薔薇を。女性には白い薔薇を一本持たされる。

その薔薇を思いを寄せる人に差し出すのだ。

クルミの思い描いた卒業パーティでは、いかに沢山の赤い薔薇(プロポーズ)を受け取るか。


そしてその中から、アーネストはレオンハルトに白い薔薇を送るであろう。その事が前提にあった。


卒業パーティに、私達は表に出てこれない。レオンハルト様のお茶会で攻略は終わる。

卒業パーティは、只エンディングを見守ることしか出来ない。


レオンハルトが赤い薔薇をシャルロットに差し出す可能性はあるのだろうか?


レイカは、そのエンディングを迎えた経験があった。いつの間にか、自分は悪役令嬢で

断罪イベントで追放刑になり、レオンハルトの横には微笑むシャルロットの姿があった。


残るチャンスは、レオンハルト様のお茶会。

何とか軌道を修正しなければ・・・



クルミは生まれてこの方、こんなに脳みそを使った事が無い程に頭をフル回転させている。

そんな時、レイカの頭に疑問が過ぎり口を開いた。


「シャルロット様は、攻略法をご存じなのかしら?」


「それよっ!それ!この間から、何か引っ掛かってたの。シャルロットはきっと転生者よ。

二度ある事は三度ある。2人転生者がいるんだから、3人転生者がいても、おかしくないわ。」


レイカとクルミは、シャルロットが転生者として乙女ゲームの攻略者として動いている事を

前提として、作戦を見直す必要があった。













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