第13話 皇太后様主催のガーデンパーティーイベント 1

13 皇太后様主催のガーデンパーティーイベント 1



本番当日・・・

今日の住み分けは

朝から庭園に着いて前半の挨拶までは、アーネスト。後半の時間はクルミの攻略時間に充てられる。

今日はレイカの出番は無し・・・である事を祈りたい。


朝からアーネストの中では、最終確認がされていた。


「クルミさん、分っているわよね。私は何時でも蹴り飛ばす準備は出来ているわよ。」


「怖いな~レイカは。それより、このドレス素敵じゃない?よく似合っているわよね。私達」


「私達・・・」クルミの表現の仕方に、レイカは思わず吹き出してしまった。


パーティの準備を侍女にお願いし、ドレスを着てヘアメイクをして貰った。

アーネストはピンクの髪をハーフアップに結わえて、銀の髪留めで飾った。

侍女は早々に下がらせて、鏡の前に立つアーネストの姿にクルミがウットリとしている。


確かに今日のアーネスト様は、一段と美しい。

この姿を見れば、攻略以前に皆惚れるであろう。可憐なアーネスト様をしっかりとお守りしなければとレイカの気合いも十分に入っている。



   ***


馬車が到着し、案内人がテーブル席へとエスコートしてくれる。


アーネストは皇太后様、皇后様への挨拶を控えて緊張をしていた。最初は一斉に挨拶をして、その後個別に1人1人呼び出されるのだ。

レオンハルト様の婚約者として、失敗は許されない。そうで無くても最近、ボーっとしたり記憶が飛ぶ事が多い。レオンハルト様は、気にするなと言って下さるけれど・・・


いよいよアーネストの順番がやって来た。

エスコートは、ベガティ公爵令息だ。アーネストはドクンと鳴る心臓の音を感じた。


アーネストはカーテシーをして挨拶をする。

「皇太后様、お初にお目に掛かります。クレルモン伯爵家のアーネストと申します。」


皇太后様からは優しい笑顔で、未来の公爵夫人としての教育をしっかりと励むようにとの言葉を頂いた。その優しい声と微笑みで、アーネストは少し緊張が解れた気がした。


続いて皇后様への挨拶、カーテシーをすると皇后様の方から声が掛かった。

「お久しぶりですね。アーネスト様。レオンハルト様とは仲良くしていますか?」


皇后様のお言葉に、耳まで赤くしたアーネストは

「はい。お久しぶりで御座います。皇后陛下。」


「あらあら。その様子だと、心配する事も無さそうですね。」


「お気遣い頂、有り難う御座います。」


「レオンハルト様が皇帝陛下を支えて下さる様に、アーネスト様にも私の側でいて欲しいのです。仲良くして下さいね。」


「勿体ないお言葉有り難う御座います。宜しくご指導下さい。」


無事挨拶を切り抜けたアーネストは、席に戻りホッとして小さく息をついた。

落ち着いて見回すと、テーブルには沢山の花とケーキが置かれていて席に着いたタイミングで従者が紅茶を入れてくれた。

アーネストは紅茶にミルクを少し入れて、一口、コクンと飲んだ。美味しい・・・



アーネストの出番は、ここまで。 


クルミが顔を出す番だ。攻略を開始する前に、やらなければならない事がある。合い言葉の挨拶。

これを済まさなければ、安心して対象キャラに向かえない。

クルミはレオンハルトを目で探した。レオンハルトは挨拶を終えたシャルロットをテーブル席へとエスコートしていた。


クルミはタイミングを測りながら、レオンハルトに近づいて行った。合い言葉の為に。

レオンハルトに目で合図をすると、


「アーネスト、緑の刺繍を施したドレスがとても似合ってますね。」

レオンハルトが思い出したように、棒読みした。


「有り難う御座います。レオンハルト様の髪と瞳の色ですから。」

クルミも見事な棒読みを返し、ツンと顎を上げて去って行った。


それを近くで見ていたシャルロットが目を丸くしていた。

「レオンハルト様・・・今のは?」


褒めているレオンハルトの棒読みと、褒められているのにツンと澄まして去って行ったアーネスト。

疑問しか残らないだろう。


レオンハルトは慌ててシャルロットに

「シャルロット嬢、ネックレスがとてもお似合いです。」と言った。

シャルロットの胸元には、一際大きなエメラルドのネックレスが光っていた。


「有り難う御座います。レオンハルト様の髪と瞳の色ですから。」とクスリと笑いながら返した。



合い言葉は聞こえてしまっていた様だ・・・











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