第12話 イベントの前日
12 イベントの前日
本日もお日柄も良く、お昼の時間帯に学園内の庭園で生徒貴族達が賑わっていた。
そろそろクルミと交代の時間だ。
レオンハルトとレイカが庭園を歩いていると
「ご機嫌よう。レオンハルト様、アーネスト様。」
シャルロットとすれ違った。
「ご機嫌よう。シャルロット様。」
レイカが挨拶を返す。
「最近シャルロット嬢と、よくすれ違うな。学園寮が一緒になったからか。レイカ嬢は、挨拶を返してくれて助かるよ。クルミ嬢は、シャルロット嬢の事が・・・お気に召さないみたいだから。」
「シャルロット様とアーネスト様は、乙女ゲームの2大ヒロインですから。クルミさんも、自然とライバル視してしまうのでしょう。気持ちは分ります。実は、私もシャルロット様が・・・苦手ですから。」
「えっ・・・レイカ嬢も?」
「はい。私はアーネスト様が大好きで、アーネストプレイヤーなんです。それでシャルロット様に断罪イベントで追放刑にされた事がありまして・・・」
「断罪イベント?・・・」
「変な事を申し上げました。もうクルミさんの時間ですので。」
レイカはクルミと入れ替わった。
途端にクルミは、じゃ~ねレオンハルト様と言って攻略に向かって走って行った。
今朝レイカ嬢から聞いた話では、プレイヤー特典のメイキングシーン。
クルミ嬢はそれをゲットしに行っているのだとか。攻略方法により、レアなシーンが見られるとか・・・
水も滴るいい男とか、強い風が吹き髪がなびく姿とか、目にゴミが入り涙を流すなど
どうでも良いシーンを見たいのだそうだ。たいそう物好きな趣味である・・・
この頃には、毎日の様子がパターン化していた。
レイカ嬢が住み分けを提案してくれたお陰で、行動パターンが決まっていたのだ。
クルミ嬢の事も、レイカ嬢が諭してくれている様で暴走する事は無くなっていた。
暴走はしていなくても、心配は尽きないのだが・・・
明日に迫り来る、ガーデンパーティイベント。
レオンハルトは、目の回る様な忙しい日々をこなしていた。
皇太后様の主催されるイベントのホスト役だ。皇太后様に対してもゲストに対しても失礼な事があってはならない。クルミ嬢の事も心配だが、それだけに構ってはいられないのだ。
アーネストには、薄いクリーム色を基調とし裾には緑色の刺繍を施したドレスをプレゼントした。
胸元を飾るネックレスも、緑とピンクの宝石でレオンハルトとアーネストの髪の色で用意し馬車と従者も手配した。明日は、アーネストと一緒に皇帝宮に行くことは出来ない。ゲストを迎える役だから。
そしてクルミ嬢から教わったパーティ当日の台詞・・・
「アーネスト、緑の刺繍を施したドレスがとても似合ってますね。」
「有り難う御座います。レオンハルト様の髪と瞳の色ですから。」
合い言葉の様に、この会話をしなくてはならないらしい。それも、中身はクルミ嬢なのに。
私としては、アーネストと自分にそんな合い言葉の様な会話は必要ないと思うのだが
クルミ嬢だけでなく、レイカ嬢からも熱心に勧められた。
レイカ嬢曰く、安全策の予定調和を崩すのが怖いらしい。
慎重なレイカ嬢が此程熱心に勧めて来るのだ。これはゲーム攻略に必要な事だろうと思い渋々承知したが、台詞が棒読みになる事は否めない。
まぁクルミ嬢も棒読みの台詞になるだろうから、良しとするか。
学園寮に戻り、クルミ嬢がお茶をいれてくれる。相変わらずのお菓子付きで。
「レオンハルト様、いよいよ明日が本番ですよ。頑張りましょうね。」
と言って、アーネストと変わった。
クルミ嬢の入れてくれるお茶は、美味しい。誰にでも特技があるものだ。
アーネストとお茶をする時間は、今のレオンハルトには癒やしの時間だった。
明日の皇太后様、皇后様の挨拶を前に緊張を隠せないアーネストに優しい声を掛ける。
「アーネスト、明日は普段通りにすれば大丈夫だよ。」
「はい、レオンハルト様。」
私の可愛いアーネストが、少し緊張の糸を解く。
忙しい日々も明日が終われば落ち着くはず・・・
レオンハルトはアーネストを充電する事で、明日を無事に乗り切ろうとした。
下準備は、しっかりとした。・・・つもりだ。
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