第96話 話のターンが長いヤツは大体自分勝手
俺は鉄魔法で手術台のようなものを作り出しヤツをそこに縛り付ける━━。
「《
ヴァリ......ヴァリヴァリッ......!
「や......何をするつもり......」
「お前には今まで敢えて魔法を使わず打撃のみで対応していたからな。ここで使ってやるよ」
「い......いや......あんなものを食らったら......回復しても......」
上空で巨大な音を立てて青く光る雷の塊に龍崎は怯えた顔を見せる━━。
「大丈夫だ主人公なんだろ? あれくらい1、2発受けても髪の毛アフロになるだけさ━━」
「いや......やめ......」
ヴァリッ......ス゛ト゛ト゛ト゛ト゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン━━!」
「キ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛━━!」
龍崎に目掛けて落ちた巨大な落雷は周囲の木々を燃やし尽くし、龍崎の体を貫通する。
ヤツの髪の毛は溶けて皮膚は黒く焦げ、爪や片方の目玉は焦げた皮膚と同化し元が美少女とは思えないくらい悲惨な姿となった。
しかし少しずつ体は修復されていく━━。
「再生能力はあの血のせいか......にしては再生の仕方が何か変だな......?」
「ぐるじいぃ......あづいぃぃ......だすげ......」
中途半端な黒焦げ状態になった龍崎は唯一まともに動かせる口を動かしながら俺に助けを懇願する━━。
「さて、ジビエ料理になったコイツが後生大事に持ってたひのきの棒を使い易くするかぁ......」
俺はヤツの聖剣を真っ二つに割り、そこからまた何個かに割ってそれぞれを手で無理やりひん曲げていく━━。
「そんな......私の聖剣が......一体何を......!」
ヤツはまだ溶けていない片目を丸くしながら俺と聖剣だったものを交互に見る━━。
「ナイフさ、医者だってオペするのにわざわざ日本刀なんか使わないだろ? 俺が言いたいことは......もう分かるよな......?」
俺は小型になった聖剣の一つを見せびらかしながら徐々にヤツの手首にナイフを近づける━━。
「それ......だけは......! ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
ザシュッ......。
ナイフはヤツの手首にザックリと縦に刺さり瞬く間に血が流れ出すが、俺は躊躇せず更に深く刺して腕をゆっくりと縦に割いてゆく━━。
「ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ! や゛め゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ......!」
「おいおいまだ始まったばかりだぞ? 手首を切る時ってさぁ......横より縦に切った方が確実に死ねるらしいぜ? だから横に切るやつは大体がポーズ、本気で死にたい時は縦なんだと......お前は一応再生する身体なんだから簡単に死んでくれるなよ?」
グジュッ......! グジャッ......! ズシュッ......!
「く゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ......!」
作った残りのナイフもヤツの身体にゆっくりと刺して内臓を抉り出し、ヤツの身体は人体模型のように分解していく。
その一本一本でダメージを与えるたびヤツは雷で黒焦げにされたとよりも苦しそうは顔を見せ、その度に俺は母さんが血まみれになって倒れていたあの日の光景を思い出す━━。
「......天下の主人公様がモブキャラと勘違いしてたヤツにここまで好き勝手されるなんてざまぁ無いな。おっと加護とやらはどうした? 着ていた
俺は膵臓を抉り出しながら奴に問いかける━━。
「ぐ......ぐぞぉ......! お前なんがっ......お゛ま゛え゛な゛ん゛か゛ぁ ぁ ぁ ぁ い゛た゛ぁ゛ぁ゛......!」
胃、腸、腎臓をそれぞれナイフで抉り取り、話すために最低限必要な肺や心臓、脳以外を
「これくらい我慢しろよ......? これまで殺してきた普通の人間でさえもう少し控えめな叫びだったぜ? しかし鎧は剥がされてご自慢の聖剣はもはやお前を苦しめるただの道具になってる……実に滑稽だね。ずっと見ていたいよ」
「お......お前の本性は......それか......!」
「本性? 違うね......お前が母さんを殺したあの日から俺に芽生えたモノだよ。にしてもお前のその舌っ足らずな喋り方......ムカつくな━━」
俺は聖剣の一つを元にデンタルフロスを生成する━━。
「あっ......」
「おいおいそれ以上下手な事口走るなよ? サプリで腎臓を悪くするぞ」
「や......めろ......ぉ゛......」
「シコバヤシコ○薬の奴より効果は高いぜ。なんせ歯茎ごと抉るからな━━」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛━━!」
ヤツの歯間にフロスをゆっくりと刺し込み歯茎を縦に裂き、歯の根っこよりも深いところで今度ばは横にギコギコと歯茎を切っていく━━。
「か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ━━!」
「答えろ。何故母さんを殺した? 何故あの日女のお前は母さんをレイプして......助けを求めたであろう母さんをこの薄汚い聖剣で滅多刺しにして殺したんだ.....? 総入れ歯になる前に答えろ......」
「......彼女は......黒羽晴香は今まで出会った女性の中で魔性の女性だった......。だから殺した━━」
「どういう意味だ......?」
「それは......私がデビルハンターの世界から来たからよ......」
「なんだと? それと母さんの何が関係あるんだ?」
龍崎は血だらけの口でポツポツと語り始めた━━。
「私はね......この世界に転送される前まで生まれてからずっと一人ぼっちだったの……右を見ても左を見ても悪魔だらけ......私と同じ種類の生き物なんて一体も居なかった……。そして私の本能は悪魔を殺し尽くす事、そんな奴にあの世界で仲間なんて居るわけなんて無かった。でもそんな中唯一私に似た形をしている者を見つけたの......それが魔王━━」
『魔王......僕の母さんか......!』
「そうよ......まああの人にこんな綺麗な娘が居るなんて当時の私は知らなかったけど。とにかく私はその人に一目惚れをした、魔王はとても綺麗で凛としてて......そして仲間であるはずの悪魔を殺し尽くしている私にも何故か優しかった」
「彼女と初めて会った時.......私は彼女の仲間である悪魔を散々痛めつけている最中だった。そんな私を見て彼女は最初警戒したけど私の顔を見て何かを感じ取ったのかすぐに警戒を解いたの……。そしてなぜか私を強く抱きしめた━━」
『......』
「抱きしめながら魔王はこう言ってくれたの......『貴女も繰り返しの毎日で辛かったのね......』って......」
「繰り返し......?」
「......意味は分からなかったけどその時に感じたのは生まれて初めての心の何処かがポカポカするような暖かい気持ちと彼女の肌から伝わる温もりで私は幸せだった。でもそれを私の本能は許さなかった━━」
「本能.....?」
「ええ......恐らく私が魔王に抱いた”愛情”というあの世界の危機を消すために発動したんでしょうね......。気がついたら私は笑いながら魔王を滅多刺しにしていた━━」
『そんな......』
「その時よ......魔王は涙を流しながら私にとある呪文を唱えたの。瞬間突然辺りは光り、気がついたら今から40年前の1983年7月15日にこの世界に来てたってワケ」
「そういうことか......でも40年前ならホンモノのアイラもその時に来てるはず━━」
「......それはよくわからないけどあの日私の周囲に彼女が隠れていたのならもしかすると世界は一緒でも違う年代に飛ばされたのかもね、私に殺される本当の最後の敵として......。とにかくこの世界に飛ばされた私はこの世界で自由に動けるようにするため、この国で一番力があると思われるニンゲンを探した。そして見つけたのが警察庁という名前の組織でその中でトップの存在である長官という地位のニンゲンだった━━」
「この世界に来て5日目で長官を殺しその地位を乗っ取った私は、スキルで幹部たちを洗脳して私が長官であることを定着させたの。そして悪魔が存在しない世界で悪魔殺しの本能を満たす代替品としてニンゲンを丈夫にし、何度もこの剣を突き立てられるように改造しようと計画した」
「それがアレキサンドブラッド━━」
「そうよ。そして同時にアイスもね......でも開発し始めて気がついたけどこの世界に来てからは何故かその本能は抑えられたの、まぁでもあの血は私が鎧を外しても身体が強化されたままにする為と置き換えて開発は進めた。でもニンゲンの身体は中々複雑で開発はなかなか進まなかったけど......」
「そりゃそうだろ......今から40年も前じゃ技術だって今よりも発展途中だ」
「.......その開発は当時の氷川に進めさせ、そこから大神達政治家やヤクザとパイプを作り開発を加速させた。それから20年の時が過ぎた時......開発室を地下に構えた病院でとある看護師に出会ったの━━」
「それが母さんか......!」
「えぇ......彼女を見た瞬間に私は一瞬魔王が蘇ったと思った......。あんまりにも顔と雰囲気が似ているから私は目を離せなかったの、すぐに私は彼女に近づきたかった。でも彼女にはもう愛する人がいた......天使慎一よ」
龍崎はため息をつくと再び話し始める━━。
「私は悔しかった......! 私がこの世界で唯一愛するニンゲンには別に愛するモノがいる......そんな現実を受け止めることが出来なかった! でも彼女だけは洗脳なんて虚しい手は使わず私のものにしたい、だから氷川を使って天使と彼女を無理やり引き裂いたの......家族を殺されたくなければ離れろと。家族思いの彼は言う通りにしたけど私たちの開発計画で犠牲にしたニンゲン達を氷川によって婚約者を殺された鷲野と秘密裏に捜査を始めた━━」
親父......親父はこんな奴を相手に戦っていたって訳か......それも生身で.......!
「私はその間も晴香とやり取りを交わし、あの日の魔王に何処か似ていて私はますます好きになったわ......。でも何年も深く関わってくると私の想いに気がつくのよね、彼女は私を避け始めた......。私は許せなかった......! 私はこんなに好きなのになんでっ......そしてとうとうあの日が来た━━」
「......」
「私はあの日晴香に会いに行った......。政治家と繋がる過程で知った実験成功例の亜門司にだけは何処に居るかを伝えてね。そしてあの日私に再び異変が起きた━━」
『異変......?』
「殺しの本能が目覚めたの.......。今思えば多分
「......」
「今でも思い出すわ......晴香さんのあの愕然とした顔......犯した時の『真央......慎一さん......助けて......』って恐怖に駆られながら搾り出す声を......。私が晴香に"アイス"を盛って快楽でグシャグシャになりそうな疼きを必死に抑えていた事を、私は余計に興奮して外に声が漏れないようあのバリアを作り、その中で彼女を犯し続けた......。そして気がついたら彼女を滅多刺しにしていた━━」
「......てめぇ......」
「抑えられなかった......私は本能に逆らえない......! 魔王と同じ殺し方で私はまた1人の愛する人を殺してしまった......私はただ抱きしめてもらいたかった……愛されたかっただけなのに……! そんな時貴方と言う存在を思い出したの......この子は私に向けられなかった晴香さんの愛情を一身に受けたニンゲン.......憎くて憎くて仕方なかった......! だから偶然を装ってあの学校に入学し、青海万季というキッカケを氷川に作らせて貴方をイジメて殺した━━」
ガシッ......!
「はがっ……!」
「おい......人を馬鹿にするのも大概にしろよ......」
「アイラ......」
「黒羽くん......」
心の底からコイツに対して怒りが込み上げる......。
願う事なら何度も何度もコンティニューして全部新しい拷問の仕方で始末してやりたい......。
「何が本能だ......何が仕方なかっただ.....何が愛されたかっただ......! テメェのJPOPの歌詞みたいな生ぬるい思考回路でどれだけ人を苦しめたと思ってんだ......? 愛されなかった事を他人のせいにしてんじゃねぇ......! 他人に歪んだ愛情を押し付けてんじゃねぇ......! 本能にすら逆らえない雑魚のお前が主人公振り翳して思い上がってんじゃねぇ!」
「......でも君達だってそうだろう? ゲームの中じゃ関係の無い民間人を平気で殺したり、モンスターの卵を厳選して間引きしたり、村長や国の平和だからと言って魔族やモンスターを一方的に虐殺したり、挙句の果てにはただ経験値や装備の素材のためだけに何度も何度もクエストに赴いて平然と殺してるじゃないか……。君たちが作る物語だってそうだ、冴えないニンゲンが私のように異世界で強い能力を手に入れた瞬間それを使って見せ物のように魔物を平然と殺し、
「......そうか」
「わかってくれる......?」
「ああ、今のでよく分かったよ......
やはりゴミは殺すしか価値が無いってさ━━」
俺はヤツを刺していた聖剣を全て引き抜き切先を奴に向けて宙に浮かせる━━。
「やめ......なさい......!」
「やめねーよ。お前の理屈でいけば俺から見てお前はゲームのモンスターと同じ存在だ......だから俺も経験値感覚でお前を殺す━━」
「っ......!」
「別に悪いことじゃないんだろ? 経験値になれるんだ良かったな。それとさっき気が付いたんだが……お前はあの雷撃を受けても再生能力を見せたけどこの聖剣で切りつけた部分だけは再生しなかった。これがどういう意味か説明してくれるよな?」
「......なんの話......?」
「惚けちゃって......聖剣を改造した時の表情でピンと来たんだ、雷撃の時には見せなかった明らかな焦りをさ。つまりお前を
「......!」
「図星だな......俺があらゆるアプローチで拷問する
「そんなの......いや......」
「じゃあな主人公……地獄で悪魔が待ってるぜ。それと人の母親を呼び捨て呼ぶな、気持ち悪りぃんだよ━━」
「いやだ......や゛め゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ━━!」
「じゃあねバイバーイ」
ク゛シ ャ ッ━━!
「......っ......」
龍崎の全身にはナイフが突き刺さり、龍崎は腐りかけた目を見開いたまま二度と起き上がることはなかった━━。
「......終わった......。やっと終わったよ......母さん......」
「アイラ......」
全身の力が抜けるような感覚に囚われる中、ふと龍崎を見るとヤツを拘束している台からは夥しい量の血が流れ、そしてその血は徐々に六芒星のような形を形成していく━━。
「これは何だ......!」
『真央くん......お別れの時間だよ......』
「お別れ......?」
『ああ......さっき説明したリスクだよ......。この紋章が完成した時......発動する━━』
「そうか......それって一体......」
『......それは君という━━』
アイラ
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