第91話 イカれ主人公
「......そんなっ......アイラ......!」
「アイラくん.......目を覚ましてアイラくんっ!」
「アイラ.......!」
「可愛い叫び声だぁ......♡ 邪魔者は静かになったし美少女3人をゆっくり堪能しますかぁ......♡」
私と青海さんをそれぞれ閉じ込めているこの変な膜にゆっくりと
「ふんぐぅぅぅ......! こんなもの......! なんで......こんなに丈夫なの......!」
早くここから脱出してアイラのそばに行かないと......!
彼をあんな悲惨な姿で一人ぼっちにはさせたくない......!
でもこの頑丈な膜は私の意思に反していくら叩いても爪で引っ掻いても全然破れない......一体どうしたらいいの......!
「そんなに頑張っても無駄だよ......? それに見て、アナタの隣にいる青海万季さんはもう変化が始まってる......」
キィィィン......。
甲高い音と共に龍崎の目が純白に輝く。
その状態で龍崎は青海さんの方を見ると彼女の表情はおかしなものに変わっていった。
口は半開きになり涎を垂らして頭を抱え、目からは大量の涙を溢している......そしてその目は次第に心の光が無くなっていく様に見えた━━。
「ふぐ......ぎぎ......嫌.....やめて......わたひのあたまのにゃかにはいってこないでぇ......! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ.......!」
「ねぇ......アナタ何をしてるの......!? 一体彼女に何をしたのっ!」
私の怒りを耳にした龍崎はニヤリと笑みを浮かべてこっちを見る━━。
「ヒヒヒ.....知りたい? 見てればもうすぐ分かるよ......?」
龍崎が顎で彼女の方を差すと先程の悲鳴はピタリと止み、ボサボサになった髪の毛を前に垂らしてガクンと項垂れているが━━。
「ま......お......? ま......お......」
「そうそう......私......いや俺は真央だよ。君が心から好きな人である真央だ......!」
先程まで項垂れていた青海さんは、虚な表情でニヤリと顔を歪ませて球体の膜越しに自分から龍崎へと詰め寄る━━。
「まぉ......? まぉだぁ.......! わたしのところにかえってきてくれたんだぁ......!」
「うんっ! 俺は真央だ。いつでも君のそばにいるよ」
何言ってるんだこの変態女......! お前は黒羽くんなんかじゃない! 青海さんを洗脳して自分を黒羽くんだと認識させているのか!? でないとこの状況は説明がつかない......青海さんは女の子の龍崎さんを黒羽くんと思い込んでいるんだ、なんとかしないと!
「変態女! 青海さんから早く離れなさい! 一体なんのつもりよ!」
「なんのつもり? 何を言ってるんだい? 俺は黒羽真央、この青海万季さんが愛する唯一の男さ。ねぇ万季......ずっと会いたかったよ」
「うんっ......っ......あいたかった......そばにいたかったよぉ......! わたしのことゆるひてくれたのぉ......?」
「許す......? 俺は別に怒っちゃいないさ、これからもずっとそばにいるから━━」
「なんて事を......お前みたいな人間が黒羽くんの名を騙るなっ! 青海さん目を覚まして! ソイツは偽物なの!」
私の叫びが通じたのか青海さんはこちらを見る。
しかしその顔はまるで男を他の女に取られて恨む鬼の様な顔つきになっていた━━。
「......なにいってるの? 私のまおをうばうつもりなの? そんなのゆるせない......まおはわたしだけのものよ! こっちにきてまおぉ......ここから出して......やさしくぎゅってして......」
「ごめん万季......まだそこから出す事はまだ出来ないから俺の方からそっちに入るよ。それで君は完全に俺のモノだ━━」
龍崎は私にウィンクをして次はお前の番だと言わんばかりの顔をした後青海さんを閉じ込めているあの頑丈なバリアを、私が何をしても歯が立たなかったバリアを"むにゅん"とすり抜けて簡単に入っていく━━。
「そんな......どうやって......」
「これは私が作ったから好き勝手弄れるんだぁ......。さて私の手駒が作った気持ち良くなる白い粉を口に混ぜてっと......それじゃ早速口付けを交わそうか万季......」
龍崎は口の中をムニムニとさせて唇に少しだけ白い粉をつけながらゆっくりと青海さんの顔に近づいていく━━。
「うん......♡」
一体私達は何を見させられているんだ......!
これは個人的な考えだが女同士のキスは全く受け付けない......というか正直に言うと嫌悪感まである。
なのになんでだろう......何故あんなに青海さんは嬉しそうな顔をしているんだろう......そんなに良いものなのかな?
いやダメだそんな事考えちゃ......! もし彼女とアレをしてしまったら終わってしまう気がする......私が止めないと......!
「青海さん近づいちゃダメ......!」
ちゅっ.......。
「あ......へ......あ.......お......♡」
「あへぇ......♡ あへへへへぇ.......♡ これでこの子も私の人形だぁ......♡ あはははははははははははははははははっ!!」
変態女の高笑いと共に青海さんは完全におかしくなり、変態女の虜になっていた。
息遣いをハァハァとさせて頬を赤くし涎を垂らして目は焦点が全く合っていない、でも何故か心から幸せそうな顔になっている━━。
「そ......そんな......!」
「フヒヒ......♡ 次は誰にしようかなぁ......? そっちの可愛いメイドさんにしよっか?」
「......勝手にすれバ......。ワタシアナタみたいなクソ女に興味ないノ。それにアイラを傷つけた事は絶対に許さなイ......!」
「ふうん......なかなか良い度胸だねぇ......♡ 君は何か違うモノを感じるなぁ......なんでだろ?」
「さぁ......アナタと違って本当に好きな人が心の中に居るからじゃなイ?」
「そう......それって今そこで死んだ彼のことかなぁ? 心から彼のことが好きなんだねぇ......♡ その可愛い顔も心も私色に染めてあげたいなぁ......」
「......ワタシはアンタを血に染めてあげたイ」
「ふふふ......その顔も可愛い......私を見て......♡」
キィィィン......。
「......別に何もないけド。キモいメスブタ顔でワタシを見ないデ、顔が腐ル」
「え......? 効かないの......?」
「効かないも何もキモい顔が膜越しに見えて心底気持ち悪イ。逆にコレに閉じ込められてて良かったワ......アナタの匂いを嗅がなくて済んダ」
可愛いメイドさんは膜を指で突きながら平然と変態女に挑発的な態度をとる。
この人めちゃくちゃ可愛い見た目によらず凄い......私も見習いたいよ......。
「そんなぁ......この力はこの世に生けるもの全てに効くはずなんだけどなぁ......♡ まーいいや......君は最後にしてあげる。彼が死んで周りの子が死んで希望を無くして......私に縋るしか選択肢が無い状態で虐めてあげるねぇ......。じゃあ先にアナタの番ね、こっちを見て多田井由美ちゃん......♡」
変態女はアイラのメイドさんから離れて私に近づく。
そしてその目を見た瞬間外部から何かが入り込んで私を支配し、頭の中を何かがグルングルンと駆け巡って私の心をあの人で染めていく━━。
「い......や......やめ.......」
「もっと、もーっと強くしてあげる......♡ だから私の目を見てアナタがさっき語ってくれた昔の事を思い出してね......?」
キィィィン......。
私の好きな人......? 黒羽くんだ......!
黒羽くん......私の事覚えてる......? うん......そうそう私だよ幼稚園で一緒だったタダちゃん......。覚えててくれたんだ......その子は彼女さん? 違うの......? 私の事が好き......? ほんと......? 私も好き......! 黒羽くん......黒羽くん黒羽くん......黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん黒羽くん......!
でも......何かがおかしい......おかしいんだ......!
「だずげ......くろ......は......♡」
「まだ抵抗するのね.....♡ 此処には俺しかいないよ由美......君のことをずっと護る黒羽真央だけだよ━━」
私の意識が飛んでいく.......私の心が黒羽くんで染まっていく━━。
「ろ......は......く......」
「そうそうあと少しだぁ......♡ こうやって好きな人と思わせて犯して殺す間際に洗脳から醒めさせた時、心から絶望するあの顔がまたいっぱい見れ━━」
「よぉ......
モブ男を殺した気になって悦に浸った気分はどうだ?」
「......へ?」
「良いねぇその間抜けヅラ......。残念ながら僕を殺すにはちーっとばかしレベルが足りてなかったようだな主人公━━!」
ホ゛コ゛ッ......!
「く゛ふ゛ぇ゛ぇ゛っ.......?」
ト゛コ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!
「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
私の球体に入ってきた変態とキスをする直前、凄まじい轟音と共に球体から引き摺り出された龍崎は気がつくと地面にポッカリ空いた深いクレーターの真ん中にピクピクしながら倒れていた。
そしてその光景を拳から煙を出して悠然と立つ白髪の男が1人睨みつけている━━。
「はぁ......はぁ......遅いよぉ......っ......」
「やっぱり来てくれタ......」
「ったく.......さっきからベラベラうるさいんだよレズマ○コ。これだから女主人公様はお喋りで困る......お前は今流行りの攻撃する時だけ声を出すスマホゲーの無口系主人公を少しは見習え」
「いや......アンタも十分お喋りでうるさいけど......」
「なんか言ったか? うるさいならゆーちんに対して
「......んぐっ......私の......お楽しみ......を......!」
「お楽しみ? 性欲丸出しな主人公様はさっきから低レベルな官能小説程度の事しか出来てねーんだよ恥ずかしい。お前みたいなやつはマイ○クラフトの主人公にでもなって大人しく家でも建築するか、G○A5の世界ですぐに銃ぶっ放す警察にでも追われとけやイカれ主人公」
その男は軽口を叩きながら男女平等殴打で変態女を殴った拳をブラブラとストレッチを行い、自分に深く刺さった剣をいとも簡単に引っこ抜く
「覚悟しろ......お前にはエフエフのポー○ョンですら回復が間に合わないくらいのトマトシチューにしてやる。スコップ貸してやるから今のうちに墓でも掘っておくんだな━━」
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