第92話 最強の敵
「ふぅ、しかしなんだその
「その聖なる剣はそんな名前じゃない......気安く触らないでよぉ......。そんな事より......何故君は斬られてもピンピンしてるのかなぁ......♡」
クレーターのど真ん中でふらりと立ち上がった変態女はアイラが捨てた剣を拾って平然とヘラヘラしていた━━。
「それならさっきボンドをご飯にかけて食ったら治ったよ。お前こそ墓地をヤム○ャの死体現場みたいにする勢いで殴ったのにピンピンしてるとは恐れ入ったよ」
「フヒヒ......そりゃ私は主人公だもん♡ じゃあこれはどうかなぁ......」
ヤツは剣を収め俺に向かって銃のジェスチャーで指を構えると、その指に光が収束される━━。
「喰らいなさい......《
チ ュ ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!
指から放たれた光線はマシンガンの様に連射され一直線に俺へと向かってくる。
それを紙一重で避けるたびに周りの木々は燃え、墓石はまるで溶けた様にドロドロになっていた。
「っ......! 光だけに速いな流石に......。にしても質量が軽いとされる光の癖になんだあの攻撃力はチートかよ! 卑怯だぞっ! ゆーちん達に当たらない様にしないとアイツらが僕の代わりに蜂の巣になっちまう......!」
俺は気を遣いながら最小限に被害を抑えながら奴へと近づく━━。
「ふぅん......女の子の為に気を遣ってるんだぁ......♡ 私に対してそんな舐めたやり方するなんて気に入らないなぁ。ムカつくからトドメを刺してあげる.......《
変態女は剣を空に掲げると身に纏っていた光と同じ色のものが空に無数に現れる。
そしてそれはそれぞれ剣のような形になり、その切先が全てアイラに向けられた━━。
「まぶしっ......! お前が一家に一台立ってれば撮影用のリングライトは必要なさそうだな!」
「な.......なんなのこの人......これが人間のできる技なの......?」
「あへへぇ......♡ 由美ちゃんは可愛いリアクションだなぁ......♡ アイラくん......貴方はこの光によって消滅するの......痛みも無く消してあげるわ......。はあぁぁぁぁぁっ!!」
ス゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!
変態が剣を振り下ろすと同時にその光たちはまるで神からの天罰のように全てアイラに降り注ぐ。
その速さはまさに雷の様なスピードでアイラが逃げる動作をする間も無く全てアイラ突き刺さったように見えた瞬間、その衝撃で一帯に砂煙が立ち込めた━━。
「アイラっ!!」
「ふふふ......直撃ね......♡ もう灰すら残ってないかも━━」
「そんな......」
終わりだ......あんなの勝てっこない......。
アイラが殴ったあの人間とは思えない一撃が私にとって唯一の希望だった......でもまさか敵があんな力を持ってるなんて理不尽すぎる......こんなの勝てるわけない......。
「さぁお楽しみの時間を再開しましょうか由美ちゃん......貴女は私の優秀な奴隷になるのぉ......♡ 貴女を筆頭に他の人間たちを洗脳すればみーんな私のお友達♡ 一緒にお人形遊びをしましょう......♡」
その神聖そうな姿とは裏腹に変態女は狂気的な笑みを浮かべながら再び私の元へ近づく━━。
「なぁ......物語で砂埃を巻き上げた時って大抵は無傷なんだぜ━━?」
「嘘......! その腕に抱えてる光の剣......まさか私の技を全て受け止めたのぉ.......?」
「そうだよまったく.......。しっかり歯を食いしばれやクソチート、お前は
砂埃から背後に登場したアイラは光の剣を腕に全て抱えながら変態女の頭上に長い脚を振り上げる━━。
「ブラジルの皆さんにお前のサンバが届くよう南半球まで旅行させてやるよ、今回は特別に航空チケット無しで行けるぜ? 良かったな━━!」
「なっ......やめ.......っ.......!」
へ゛キ゛ィ゛ッ......!
「ふ ヘ゛ぇ゛っ.......!」
ハ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛━━!
アイラの踵は凄まじい速さで振り下ろされ、その速さから発生した衝撃波の轟音と共に龍崎ゆりは音速を超えるような速さで地面に叩きつけられめり込んだ。
そして龍崎の姿が消えた代わりに底が見えないくらいの穴が地中深く掘られていた━━。
「自らスコップになってくれるとはな......しばらくこれで静かになる━━」
* * *
「アイラ......貴方本当に何者......? あの光の剣を受けた傷も無いし今のキックもまるでアニメかゲームみたい......」
ゆーちんは俺の力に驚愕しているようだった。
確かに俺は今の今まで彼女に力を見せたこともないしこんなピンチに彼女が晒される事もなかったもんな━━。
「ごめんなゆーちん......今までこういうのを隠してたんだ。でもこれだけじゃないんだ、君に隠しているのは......」
「......他にも何か隠していることがあるの?」
「......ああ......」
正直隠してない項目を探す方が難しい......。
今まで散々人を殺してきたこと、ゆーちんの熱狂的なファンや母親がハマってた宗教の連中......それだけじゃない、学校の生徒や先生だって俺を貶めた奴は全員始末してきた。
親友だった亜門司も俺がこの手で......。
そして......そんなクズの本当の正体が黒羽真央だという事も━━。
「なんで......なんで一言も言ってくれなかったの......? 私達友達じゃなかったの......?」
ゆーちんは俺を悲しんだ目で見つめる━━。
この子はなんだかんだ言いながら俺の事を心から信頼してくれていたんだな......でも俺はそんな目をされる資格すらないんだ━━。
「ごめん......僕は君が思ってるほど良い人間じゃない。その事実がこれから分かる......それを目の当たりにしてもまだ信じてくれるなら僕は友人として、一緒に過ごしてきた仲間として.......なにより僕の雇用主として君に本当の事を話すよ━━」
「分かった......。でもそれより━━、
そんなに喋る元気があるならもっと早く助けなさいよっ!!!!」
「......え......?」
「本当に心配したんだからね......! ていうかあんな分かりやすく死んだフリなんかして、私達をおちょくってたの!?」
こんのクソ女ぁ.......! こっちがどんな気持ちでお前らを......!
「そんなわけあるかっ! こっちにも色々事情があるんだよ! 僕の立場になって考えてみろ! 人質を取られた上に突然斬られたんだぞ!? あんな変態は誘拐罪と銃刀法違反で警察が捕まえるべき案件だろうが! 今映画で忙しいのか知らんが怪盗キ○ドの相手なんかしてないで仕事しろや警察共っ! 100万人を
「アンタ何言ってんの!? そんなことしてるうちに青海さんが犠牲になったんだよ!?」
「ああ言えばこう言いやがって.......ああどうせ僕のせいだよ! でもなチンチクリン、僕はストーリーテラーでも烏丸○耶でもないんだ! あの変態がこんな力を持ってるなんて思わなかったんだよ! 僕が知ってる例のゲームでは主人公が魔法を使う場面なんてなかったし......万季さんの頭がハッピーセットになっちゃったのは申し訳ないけど後で必ず治すから我慢するようその減らず口で本人に言っておいてくれ!」
「あへへ......まぉ......♡ まぉ......♡」
「あ......」
「......こんなトンチンカンになった子に言っても聞き取れるわけないでしょう!? まったく......私だって危ない所だったんだからね!」
「ちぇっ......こんなにうるさいならそのままイカれちまえば良かったのに......」
「......なんですって......?」
「すみません......」
「いい加減にしなさいよ......?」
「はい......ごめんなさい。それとレイは......全然大丈夫そうだな......」
「もちろン。この中も別に居心地悪くないし、しばらくここで愛しのアイラを見ようと思ったけド......今みたいに他のメス豚とあんまりお話ししないで......呪い殺しちゃうかラ......」
「め......メス豚......!? それって私の事ですか......!?」
「もちろン.......貴女以外に誰が居るノ? もしかしたら事のはずみでついでにアイラもヤっちゃうかもしれないシ......」
「終わった......。コレ勝っても負けても死亡フラグのヤツだ」
「私人生で初めてメス豚って言われた.......。それよりアイツはなんだったの? 龍崎さんが龍崎さんじゃなくなってた......というかアレが本当の龍崎さん......?」
「ああ......アイツが間接的に学校を爆破した黒幕で悪い奴さ━━」
「そうなんだ......いろいろあるんだね......。でももう倒したんでしょ......? ここから出してよー」
「いや......その分かりやすいフラグと拘束魔法が解けてないという事は奴はまだ━━」
「あへへへぇ......ふひひ......♡ アイラくん捕まえたぁ......♡」
龍崎は変な笑い声と共に穴の中から飛び出し、無傷の状態のまま一瞬で俺の背後に迫り剣を突き立てた━━。
「嘘......」
「ほらな? だから言ったろゆーち○ぽ......」
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