第89話 家族
「その件って......?」
「今から話す内容は普通では到底信じられないような内容だと思います......それでも耳を傾けて頂けますか?」
「分かったわ。あっ......もしかして━━」
もう察したのか? さすが社長、話が早いな......。
「エッ○スの裏垢で誤爆して同業者の人を整形とリプライしたり売上をバカにしたり、ファンとレスバしあったりグラドル売りを批判リツイートがバレた......?」
「......はい?」
「え......? 違うの?」
全然違ったわ。この人何と勘違いしてんだ? さっきの俺が褒めた言葉返してくれ......!
「社長......それ僕じゃないです。そもそもエ○クスなんて僕も、作者すらやってませんよ」
「そう......よかったぁ。最近ネットの隅で話題になってるから心配になっちゃって......もし本当なら不正アクセスによる乗っ取りをされたって公式アカウントからポストするように指示しようと考えちゃったよ」
「......それ一番の悪手なんでマジやめてください」
「そうなの......? じゃあやめておくわね」
「ありがとうございます。それと一応訂正しますが僕ならそもそも裏垢で文句垂れずに本人に面と向かって言いますよ」
「確かにそれもそうね、あの海原を挑発したみたいに━━」
「ああ......そんな事もありましたね......」
「アレ隣で聞いててヒヤヒヤとスカッとが同時に押し寄せてきたもの......今までの人生で滅多に無い体験だったわ」
有機EL画面越しにコレを見ているみんなはもう忘れているかもしれないが、俺は月野社長を陥れようとした海原を殺す前に相手の事務所で口喧嘩になったことがある。
そのことを社長は言っているのだろう......。
でも誰だってあんなクソ野郎に対してならああ言う口調になると思うし、失うものがない
「懐かしいですね......。社長、その後に起きた湖での出来事も覚えてますか?」
俺がそう尋ねると社長は目を瞑り顎を少しだけ上げて椅子の背もたれに深く寄りかかる━━。
「覚えているわ......あの時私は信じられないものを見たもの.......アレは間違いなく━━」
「社長の妹さん.......ですよね?」
「っ......! 何故それを.......?」
社長の目はカッと開いて前に乗り出す━━。
「......ですよね。僕はあの時気絶していたから知るはずがない......ましてや亡くなった妹さんがあの湖に現れるなんて現実では考えられない話だ。でも僕は知っているんです」
「そんな......まさか......!」
「はい、今僕の隣にいる彼女こそが━━」
「ワタシ......レイだヨ......」
「......うそ.......! そんな......本当に
社長は信じられないような顔をして椅子から立ち上がりレイに近づく━━。
「うん......! ワタシ本当に帰ってきたヨ......お姉ちゃン......!」
「信じられない......だって零はあの湖で━━」
「確かにワタシは死んであの湖に居た......でもアイラに出会ってワタシはこの通りこの世に姿を現す事が出来たノ......」
レイの言葉に姉である社長は涙をポロポロ溢しながら今目の前に居るレイの存在を確かめるように優しく撫でた。
「そっか......そっかぁ......あの時また会える気がしたのは間違ってなかったんだ......! ......っ......ぅぅ......」
「お姉ちゃン......遅くなってごめんネ.......」
「良いの......私は貴女にもう一度会えただけで充分なんだから......。で......でもどうやって生き返ったの? それにアイラくんのおかげって......?」
「それハ......」
「僕から説明しますよ社長。さっき言った普通では到底信じられない話をこれからしますね━━」
「分かったわ......」
「まず初めに.......僕は今明星亜依羅を名乗ってますが本当の名前は黒羽真央、そして外見も今とは違い普通の高校生でした。でもそれだけじゃないんです.......」
「......それだけじゃないって?」
「はい、海原親子をあの湖で殺したのは......
この僕です━━」
「......え? でもあの時君は......それにアレは零が復讐をしたって......」
「.......実はゆーちんと潜入した例の心霊ロケ終わりから僕の家にレイが出るようになりました。最初は死ぬほどビックリしましたけど次第に話すようになって......それで幽霊になった理由聞くと海原に殺されたせいであの湖近くの廃墟を彷徨っていたと打ち明けられました。海原はちょうど僕のターゲットだったので、レイに身体を貸して復讐を遂げてもらい僕が最後トドメを刺しました」
「そんな......」
「お姉ちゃン......ごめんなさイ。でもワタシはアイラのおかげで今此処に存在出来ているノ。アイラがいなければきっと今もワタシはあのまま湖で彷徨っていたと思うしお姉ちゃんにもこうして会う事もアイツらに復讐する事も出来なかっタ......」
「そう......よね......」
「社長の気持ちはお察しします、妹さんを復讐の道具に使ったと思われても仕方ないと思ってます。でも僕も妹さんに共感する部分があって恨みを晴らしてあげたいと思っての行いでもありました」
「共感......?」
「.......実は僕、昔複数人からイジメを受けて最後殺されたんです━━」
「っ......そんな......」
「でも僕はそこで死んだはずなのに気がついたらこの姿に生まれ変わりました。僕はそれをきっかけにイジメの復讐を誓って明星亜依羅を名乗り、今まで何人もの人間を始末してきました。それこそ宗教施設を破壊したりデカい歯科医院の親子を不可解な死に追いやったり......そしてその中の1人があの海原だったんです━━」
「そんな......でもその事件は普通の人間には出来な━━、まさか......!」
「はい、お察しの通り人間には不可能な事件で一時期ニュースで話題になった"神の使い"は僕です......。大葉政調会長殺害も飛美侠道会組員大量殺害も全て僕がやりました」
「そうだったの.......」
「社長......今までこんなとんでもない犯罪を犯していた事を話さず、本当に申し訳ございませんでした......!」
俺は目の前にあるテーブルに頭を擦り付けるぐらいの勢いで頭を下げた。
もし俺の正体が今後バレてとんでもない連続殺人犯として世間に知れ渡った時、確実にこの事務所と社長に迷惑を掛けてしまうのは間違いない。
そう思うとゆーちんから経由したとはいえお世話になった社長に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった━━。
「今はまだ有力な証拠はありませんが、今後俺の本当の仇と対峙した時に俺の姿が晒される可能性があります。なのでそうなる前に社長には僕が不祥事を起こしてクビにしたと世間に公表して頂きたいです、僕の犯した罪が公になる前に不祥事でクビにしたことにすれば社長や事務所に掛かる損害は最小限に抑えられると思います......」
社長は再び椅子に戻り深く腰を下ろし、俺の顔を真剣な目で見つめる━━。
「アイラくん......」
「はい......」
「私に真実を打ち明けてくれてありがとう━━」
「.......え?」
「貴方が何か隠している事があるのは薄々気がついていたわ。それがまさか今世間を騒がせている大事件の黒幕だったのは少し驚いたけど......でもだからって今すぐ貴方を解雇して私たちだけ逃げる事は絶対にしない、それは私がこの目で見てアイラくんを所属させたいと思った自分自身に嘘をつきたくないの。それに......死ぬまで酷いことをさせられて復讐したい気持ちはとっても分かる、世間では復讐は何も生み出さないとか綺麗事を軽々しく言うけど当事者でもない外野の生温い考えなんて耳クソより価値は無いし、復讐してもしなくても大切な人や時間が戻ってくるわけじゃないのが現実だからそれなら復讐した方がいいに絶対良いに決まってるわ━━」
社長の言葉は妹を殺された姉という肉親としてとても含蓄のあるものだった。
確かに復讐は悲劇の繰り返しだとよく言うけれどそうなら被害者は我慢して終わりなのか? そんな一方的なやられ損で済む話なんてどこにもあってはいけない。
法で裁ききれない......法を司る人間が甘く見ている悪人に対し、被害者は目には目の精神で冷酷な制裁があっても良い筈だ━━。
「それと零にとって貴方は大切な人なんでしょう? 私たち姉妹の復讐と妹と再会する機会を与えてくれた恩人で妹が愛する人を私は絶対に見捨てない。私は一経営者として......零の姉として貴方の味方で居るわ」
「社長......」
「お姉ちゃン......」
「だから......全てを抱え込まなくても良いのよアイラくん。貴方のやってきた復讐を見れば分かるもの......"神の使い"やあり得ない犯行方法は痕跡を残さないだけじゃなくて復讐対象者以外を巻き込まない為でもあるんでしょ? 飛美侠道会組員の件だってそう、彼らに虐げられてきた人達を貴方は救ったの。その人達から見れば貴方は英雄なのよ......世間は理解しなくても、貴方にとって個人的な復讐の過程でたまたま起きたものかもしれないけど心の内を分かってくれる人は此処に居るから......」
「ありがとうございます......」
「いいのよ......それと他にも用があるんでしょう?」
「はい、お姉さんが持ってるレイの骨をお借りしたくて━━」
「......骨を? 何に使うの?」
「それがあれば僕の力でレイの本当の身体を取り戻せるんです」
「え!? そんな事が出来るの!? 凄いわね......でも残念ながら此処には無いわ、あの事件の後に霊園のお墓に追加埋葬をして埋めてあるの」
「霊園ですか......その場所を教えてもらえます?」
「街外れにある小さな霊園よ、今位置情報を送るわね」
情報を送ってもらった街外れの霊園......そこは俺の母さんが埋葬されているあの霊園だった━━。
「でも墓荒らしは立派な犯罪よ? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ、歴史的犯罪者も真っ青の人数始末してる僕が墓の一つや二つサイレントに掘り返す事くらい楽勝ですよ」
「ふふ......たしかに1万人以上の人間を1人で殺めた人間なんて早々居ないものね。それもただの高校生が......普通は想像つかないわ」
「ええ......たった1人の刑事以外誰も辿り着けませんでしたよ。それじゃあ僕は一旦これで失礼します、忙しいところ時間を作って頂きありがとうございました」
「いえいえ、またいつでも遊びにいらっしゃい。今度また由美とVtuberきんせいちゃんとのコラボを楽しみしてるわ」
「......それをするくらいなら木にぶら下がってカブトムシと樹液舐め合います」
「そんなに嫌なのね......分かったわ。零も気軽にいらっしゃいね? 今度お茶でもしましょう」
「ありがとうお姉ちゃン......! また絶対遊びに来るネ......!」
こうして俺たちは事務所を後にして最寄駅へと歩き出した━━。
「良かったなレイ、ちゃんとした形でお姉さんにまた再会できてさ」
「ウン......! これもアイラのおかげだヨ......ありがとウ......!」
「さてこの後どうするか? 今日は休みだしデートでもしよっか?」
「デートしたイ......! 今までしたアイラと事ないから楽しミ......♡」
確かに復讐続きでレイとまともに出掛けたことなんて無かったな......。
まぁ幽霊と出掛けるのもおかしな話だが、今は仮にも身体があるし何より俺の大切な人だからな......プレゼントの一つや二つしてあげたいし何より喜ぶ顔が見たい。
めちゃくちゃヤンデレだけど━━。
「そうと決まれば電車に乗ってヨコハ━━」
ブッブー......ブッブー......。
おいおい全く誰からだ......? これから美人な女性を横に肩切って歩こうって時に......!
「もしもし......?」
『もしもしアイラ? ゆーちんだけど今何してる?』
「今俺はエ○・ワトソンとデートしてるんだ、電話なら後にしてくれ━━」
『はいはいそうですかっ! せっっっかく今アイラと仲良しのクラスメイトと2人で遊んでるからアイラも誘おうとしてたのに......』
「そうか......それで2人はどこで遊んでるんだ?」
『今はお花を買ってある人のお参りに行くの。ほら、前に言ってたアイラの席に昔座ってた━━』
「黒羽真央......か?」
『そうそう、実はその男の子私の......』
「分かった! そっちに行く! 1時間後に霊園で待ち合わせでいいか?」
『うん、良いけど......急にどうし━━』
ピッ......。
「どうしたのアイラ......今の電話ダレ......?」
「悪いレイ、急遽予定変更になった。今から霊園に行っていいか?」
「ウン.......良いけどどうしたノ.......?」
「ふっ......まさか向こうから仕掛けてくるとはな......。とりあえず向かうぞ━━!」
俺は拳を握りしめ、街外れの霊園へとレイと2人で向かった。
いよいよだな......これからが本当の
* * *
作者より。
更新が遅れてすみません(T ^ T)!
私生活でいろいろバタバタしててなかなか書く時間がありませんでした。+゚(゚´Д`゚)゚+。
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