第88話 ヤンデレクソチート


『よおイケメン......朝早くに電話して悪いな』



 スマホのスピーカーから聞こえた声は渋い声をした鷲野獅郎イケオジだった━━。



「なんだイケオジかぁ......良かった......」


『ん? どういう意味だそりゃ? お前まさか......悪いが俺にそっちの気は無いんだ。すまない━━』


「ふざけんなよおっさん、僕だってアンタとヤるくらいならウツボカズラにチ○コ突っ込んだほうがマシだよ。それにしても突然電話してくるなんて......まさか愛しの部下との夜を自慢しに電話を掛けて来たんですか?」


『言うねぇ......。君の方こそ何か一つデカくなったような声をしてるが.......さては昨日あの後どっかの女とお楽しみだったか?』


「っ......! そんなことあるわけないですって.......」


 

 なんで分かるんだよこのおっさん......!

 そういえば幽霊とヤるのって童貞卒業にカウントして良いのか......?



『ふっ......別にセックスは悪いことじゃないしむしろ良いことだ、お互いの愛情を確かめられる上に気持ち良い事なんだからそう恥ずかしがるなよ。しかし復讐鬼の高校生に恋人が出来るとは......きっと良い子なんだろうな、今度紹介してくれよ』


「オッサンが視覚する事が出来れば紹介します......」


『何だそれ......? まさか恋人は二次元とでも言うんじゃないだろうな? まぁ確かに現実の女は感情的且つ打算的で面倒なヤツが多い......だがそこに可愛さがあるんだよ少年』


「いやそうじゃなくて。まあいいや......」


『なんだ? まあとにかくどんな次元の女だろうが大事にしろよ」


「もちろん。大事にしないと僕の体が大事に至りそうだし......そんな事より本題はなんですか?」


『ああ......実はあの後、東海林ちゃんと俺と仲間の刑事で虎谷柊のことを調べたんだ。そこで気になる資料を見つけてな......』


「......何か不可解な点があったんですか?」


『それが不可解だらけだったよ。まず資料によるとヤツが警察庁長官に就任したのは1983年7月20日......普通こんな昔に就任したとなれば現在は退職してるくらいの年齢の筈だ、なんせ過去最年少で警察庁長官に就任した人間でも50代前後だからな。しかし奴は未だに長官を名乗っている━━』



 なるほど......確かに歴代最年少の長官でも就任時はおっさんの言う通り50歳前後だった筈、それを踏まえると虎谷柊と言う人物は現在相当な年寄りという訳だ━━。

 


『それに今まで歴代の長官の経歴を調べると2人を除いて国内最高学府である帝国大学の出身なんだが虎谷柊だけは......』


「......経歴が載っていない」


『そうだ、不自然なまでに経歴が載っていない......。顔写真はあるが明らかに偽物だと分かるくらい誰かの顔をランダムにモンタージュしている画像だ......。もしかするとそこまで明かしたくない何かがあるのかもしれない、イケメンはどう思う......?』


「何か起きてもすぐに痕跡を消せるように細工を予め施しているかもしくは......」


『もしくは何だ......?』


「.......この世界で言える程の経歴が無い可能性もある」


『......そりゃどう言う意味だ? まさか......』


「うん......」


『そうか......そうなるとソイツを殺せるのは本当にお前だけかもしれないな......。まあ何か助けが必要なら俺に連絡してくれ、お前に死なれちゃ俺はお前を捕まえられないからな』


「......そんなに人の逮捕に執着するなんてアンタ銭○警部かよ」


『そりゃ執着もするだろ、ヤクザの構成員含めてお前は単独で15000人以上殺害という聖書も神話もビックリの人数を殺してるんだ。もし仮にこれが戦争なら国の英雄かもしれないが今回それは通じないからな......まぁ1万人規模の殺人なんて死刑の前に裁判だけで一生を終えそうだが━━』


「確かに......ならどっかのルフィみたいにフィリピンへ逃亡しようかな」


『ふっ......どっちにしろ強制送還だよ。じゃあまたな、最後の休日を彼女と楽しめ』



 ピッ......。



「アイラ......電話長イ.......」



 レイは頬をプーッと膨らませてヤキモチを焼くような目で俺を見る━━。



「ごめんごめん、レイにはまだ話してなかったけど俺の母さんを殺した本当の犯人が分かったんだ。今ソイツの情報をあの刑事から聞いてさ......」


「そっカ......オンナじゃないなら電話相手はとりあえず呪い殺さなくて良いネ。それより......昨日の続きしよォ......?」


「はい......!? 幽霊の癖になんでそんな元気なの!? 俺から精気でも吸い取ってるんか!? なぁ昨日俺達がどんだけ試合したか知ってる!? 6回だよ6回! 5個入りのサ○ミオリジナルはとっくにカラなんだよ!」


「たったの6回だモン......」


「たっただと!? 賢者タイムも碌に与えられず連戦した俺によく言えたもんだよ! しかもそのうち一回は俺が疲れ果てて寝てる時に襲ってきたよな!? もうゴムが無かったのにさ!」


「......何のコト......?」


「お前が惚けようとも俺のムスコは覚えてんだよ! 寝てる最中下に妙な気配感じて目を開けたら俺のチュロスを取り憑かれたような目で激しく頬張ってたじゃねーか!」


「だっテ......寝るまであんなだったのに萎んでちっちゃくなってるおち○ちん見てたら可愛くて......あとツンツンいじくってたら大きくなっていくのが面白かったんだもン.......。それに根こそぎ搾り取らなきゃアイラが他のオンナに気を取られるかもしれない死......」


「"し"を"死"に置き換えるな! と......とりあえず今はもう良いだろ? なぁ......?」


「......まだ足りナイ......」


「お前は覚えたてのサルか! ヤンデレの性欲はみんなそうなんか!? 俺の邪神剣は刃こぼれ起してるんだよ! "おさるの情事じょーじ"はもうおしまいにしてくれ!」


「嫌......! まだ足りナイ! アイラはワタシのモノだから他のオンナに取られる前にアイラの証を私のナカに残さなキャ......残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ残さなキャ!」


「ひ......ヒイィッ......! だ......誰か助けてくれぇっ......!」



 俺はレイの鬼気迫るオーラに全裸のまま腰が引けた情けない状態でベッドから飛び出しリビングへと逃げ込むが━━、



「逃がさナイ......アイラ......! 搾り取ってアゲル......!」


「勘弁してくれぇ! 搾取を目の当たりにするのは男ViTuberのサインボールガチャだけで充分なんだ!」


「搾取じゃないよ愛情だヨ......? そうだ......良い方法考えタ......」


「何だ......!? まさか俺にViTuberの弁当でも買わせる気じゃないだろうな!? 冗談じゃねぇ......ぼったくり価格に目を背けて奴隷の鎖自慢をするのはごめんだ......!」


「フフフ......そんな低レベルのモノじゃナイ......」



 レイは浮遊しながら追いかけて俺に迫るが、何故か一旦立ち止まり俺に向けて手を翳す......。

 すると俺はまた金縛りに遭ったように全く身体を動かせなくなった━━。



「レイっ......何を......!」


「フフフ......昨日気がついちゃったんだぁ、一回交わるとその人の身体に入って色々な事が出来るっテ......」


「お前......まさか......」


「ウン.......アイラが逃げるならアイラの身体をナカから操って思い通りにするしかないよネ......?」


「やめろ......! そんなゴテんクスみたいな事がこの世界に通用すると思━━」


「一つになろウ......!」


「やめろぉぉっ!」



 ジュワッ......!



 何かが溶け込むような不思議な感覚と共に身体に歪なモノが入り込んで来るのを感じた。



『フフ.....入レタァ......♡』


「な......何だコレ! 身体が......!」



 俺は身体を必死に動かそうとするが、まるで鉛のように重くて思い通りに身体を動かす事が出来ない。

 それどころか身体のそこら中をレイにまさぐられているような不思議な気持ち良さで頭がボーッとしてくる━━。



「冗談だろ......こっちは仮にも裏ボスの身体だぞ......? こんなのヤンデレクソチートじゃねぇか.......!」


『フフッ......アハハハハ......! 本当に一つになれタァ......もうどこにも渡さないよ......アイラ......!』


「や......やめろ......やめてくれぇぇ......!」



*      *      *



「はぁ......はぁ......やっと解放された......。アスタリスクでカットされてる部分は確実に後日作者のPix○vアカウント行きだな......」


「フフフ......でも操られた挙句ワタシの分身に(ピーーーー)は気持ちよかったでショ......?」


「そんな事俺の口から言わせんな......! これから出掛けようってのに疲れちまったよ」


「出掛けるってドコ? まさか女......? そうならおち○ちん一旦切り取ってから出掛けよっカ......。それかもっと疲れさせてワタシの介護無しじゃ1ミリも動けないカラダにしないとダメかなァ.....?」


「マジ勘弁してください......俺の息子はコイツ1人なんです......。それとBプランにおいても僕の身体が持ちません......」


「......じゃあどこ行くのかちゃんと説明しテ......? アイラの事好きすぎて少しでも離れただけで心配で心配で......ワタシおかしくなって周りの人を呪い殺しちゃうかモ......」


「分かった! ちゃんと説明する! 今からレイのお姉さんとこ行って事情説明して身体を取り戻そうとしてたんだよ最後の敵を殺す前にそれだけはやっておきたくてさ。それに━━」


「それニ......?」


「早く顔色が良くて可愛いレイを見たいし、ホンモノの身体でデートして服とか色々買ってあげたいし━━」



 こう言っておけばヤンデレなんてすぐ妄想膨らませて上機嫌になるチョロい存在だろ。

 おだて方さえ知り尽くせば俺の勝ちだな━━!



「可愛イ......? 今ワタシの事可愛いって言ってくれタ? 初めてアイラに言われたの嬉しイ......!」



 ほーら案の定乗ってきた━━! 

 レイに対する攻略法をようやく見つけたぜ!



「あ......ああレイは可愛いよ......。恥ずかしくて今まで言えなかったけどさ......」


「ありがとウ......! ワタシ嬉し過ぎてもう死んで良いカモ......!」


「いやとっくに死んでるだろ......とりあえず着替えて行くぞ。さっきお前が俺を操って作ったレイの分身に乗り移って服を着てくれ」


「分かっタ。それよりアイラ......」


「......どうした?」


「ワタシに対する"攻略法"ってナニ......?」


「え......えぇ......なんのこと......?」


「誤魔化しても無駄だヨ......? 全てワタシにはアナタの全てが分かるカラ......」


「そ......そんな......」


「お仕置き......しないとネ......?」



 その後もレイに散々好き勝手された後、ようやく俺は外に出る事が出来た━━。



*      *      *



 ゆーちんが所属する芸能事務所内にて━━。



「久しぶりのアイラくん。なんか物凄く疲れてるみたいだけど大丈夫?」


「え......? ああ......はい......死にかけてます......」



 今話しているのは人気iTuberゆーちんこと多田井由美が所属する芸能事務所の社長で《月野ゆい》さんだ。

 久々の紹介になるが彼女はレイの実の姉でこの前海原を始末した湖でレイと再開し別れたエピソードがある。



「まぁ学校も謎のテロリストに爆破されて色々大変だったようだし無理はしちゃダメよ? それに由美の暴走でアナタの家にドッキリ仕掛けた件は本当に申し訳なかった......ワタシからもキツく言っておいたからもうしないと思うわ」


「ありがとうございます」


「それより隣にいる彼女さんは......この前そのドッキリの時に出てた可愛いメイドさんよね? 失礼かもしれないけどワタシの妹に顔が物凄く似ててずっと記憶に残ってたの」


「社長......実はその件で話があったんです」



 レイのお姉さんにレイの事や海原の件、そしてなによりレイの身体を取り戻す為俺の力の事全てを説明する時がやってきた━━。



*      *     *



 総理の隠れ家にて━━。



「司......私のお人形だったお前も遂に死んでいよいよ私の元へ迫ってきている訳か......だが簡単に返り討ちにしてやる。この世界で私より優れているキャラクターなど誰1人として存在しないのだから━━!」

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