87話 想いを繋げる夜
「なぁレイ......俺は今日残業終わりで疲れてるんだ。そういう濃密なヤツは金曜の夜とか休みの前の日に頼むよ」
「分かってル......でもアイラはこうでもしないと身体を休ませられないでしょ? それにアナタ今......」
レイは何かを言い辛そうな顔をして少し俺から目を背ける━━。
「......何だよそんな顔して。小○製薬の株でも買っちまってたか?」
「そうじゃない。今アイラの顔にハッキリと出てるの━━
死相が......」
「......死相? おいおいどんなお化けジョークだよ。それは死相が見れる張本人に監禁プレイされるからじゃないのか?」
「ジョークなんかじゃなイ。ワタシにはハッキリと見えるノ......多分それはワタシが死んでるからだと思うんだけど何かとても嫌な予感がすル」
「......そうか......それがもし本当なら俺の最後の復讐相手は何か異質存在かもしれないな━━」
「異質なソンザイ......?」
「うん......さっき司を手にかける直前に少しだけ話をしたんだけどその時に司が言ってたんだ、『あの人は人智を超えた力を持ってる』と......そしてそれは俺の予想する犯人に照らし合わせると確かにそうでないと不自然な点が一つ存在するんだ......。だからもしかすると俺に出てる死相はあながち間違ってないのかもしれないな━━」
「そう......なのネ......やっぱりワタシ決めタ......!」
レイは再び俺から目を背けて俯き......そして━━、
ドスッ━━!
「なっ......!」
レイは思いっきり俺をベッドに押し倒した━━。
「ねぇアイラ......やっぱりワタシと此処にずっと一緒に居よ......?」
* * *
「おいおい何すんだよレイ......」
手錠で手を塞がれた俺をレイはベッドに突き倒し、初めて出会った時のように金縛り状態にさせる。
そして幽霊なのにどういう手品で着ているか分からないメイドをベッドの下に投げ捨て、これもまたどうやって着ているのか説明つかない薄い水色をした可愛い下着姿を俺に初めて見せた━━。
「手錠だけだと簡単に引きちぎられるからこうして金縛りを掛けたノ......。身体は痛くなイ......?」
仰向けに倒れる俺の上にまるで抱き枕のように抱きつき密着するレイは優しい声を耳元で囁く━━。
「痛いっていうか......これから痛くなりそうだよ股間がさ......」
レイの大きな胸が俺の薄い胸板にピッタリと密着し、サラサラの黒髪が俺の鼻を少しくすぐる。
以前も似たような事はあったが正直此処まで感触を感じるほどの薄着で強く抱きつかれたのは初めてで俺は少し......いや、かなり動揺していた。
「っ......ほんとダ......。可愛イ......♡」
「そんな事耳元で囁くなよASMRか! それに幽霊の癖に髪の毛から良い匂い醸し出しやがって.......4Dシアターじゃないんだよ此処は!」
「フフ......そんなにお喋りになるなんて興奮してるノ......? アイラの大きいからあんまり大きくならないように調整してネ......。大きすぎると痛いかラ......」
「そんな器用な事出来るわけねーだろ! 風船じゃねーんだよ俺のチ○コは!」
「エ......? 出来ないノ......? ワタシ付いてないから知らなイ......」
「はぁ......。それよりココにずっと居ようってどういう意味だよ、またヤンデレの発作でも起こしたのか?」
「そうじゃなイ......ただワタシはアナタに死んでほしくないだけ......ずっとワタシのそばにいて欲しいだけなノ......」
「......そっか......」
レイは悲しそうな顔で俺を見つめる━━。
「確かにアナタは強イ......でもこの国が生んだ強大な敵に立ち向かってまた此処に帰ってきてくれる保証は何処にも無いのヨ......? 大好きな人を今日失うかしれない不安と恐怖に苦しむのは辛いノ......いくら復讐を心に決めても人を1人殺す度に心の何処かで傷を背負って苦しんでるアナタを見るのが辛いノ......。でもなにより......復讐を終えたら生きる意味を失って何処かに消えてしまいそうなアナタを止められないワタシの無力さが何よりも辛いノ......!」
「......大丈夫だよレイ、君は決して無力なんかじゃない。俺は母さんを失って周りにも変な目で見られて恋人にも裏切られてさ......そんな俺を......確かに普通には重すぎる愛情かも知れないけど想ってくれるレイをこれ以上泣かせたりするもんかよ」
「っ......うっ......うぁぁ......っ......!」
レイは崩壊したダムのように今まで溜めていた大粒の感情を頬に溢す。
あのヤンデレな行動はレイなりの愛情表現だったのだろう......そう思うと俺は胸が締め付けられるくらいレイの存在を愛おしく感じた━━。
「アイラ......約束しテ......。ワタシにはアナタの死相は見えてもアナタの未来まで見ることはできなイ......だから絶対此処に帰ってくるって約束しテ......! ワタシの元に絶対帰ってくるっテ.......お願イ......」
「......約束するに決まってんだろ? 俺は母さんを殺した奴を殺すまで、この俺をぶち殺して嘲笑ってる奴を地獄に叩き落とすまで絶対に死なないよ。それに━━」
「......それに?」
「レイのお姉さんに話してレイの身体を生き返らせる約束を果たすまで死ぬ訳ないだろ? なんせイリュージョンが出来るのはこの世の中でこの俺だけなんだからな」
「アイラ......」
「だから心配すんな。それと......もし復讐を終えて何処かにふらっと行く事あっても、その時にはレイが必ず隣にいて欲しい......これからもずっとさ━━」
少し濡れたレイの頬を優しく撫でながら俺はレイの目を真剣に見つめる。
思い返せばレイの顔を此処までしっかり見たのは初めてかも知れない━━。
「レイ......大好きだよ。いつもありがとう......」
「ワタシも好き......愛してる.....。だからその証をここに......して......?」
「......わかった......」
「んっ......」
レイの柔らかい唇に口付けを交わしたあと、手錠を外された俺はレイにこれまでの愛情のお返しをするように力一杯抱きしめた━━。
* * *
\チュンチュン/ \チュンチュン/
「ん......あぁ......朝か......にしてもまさかこの物語で"朝チュン"を迎えるとはな......。それも幽霊相手に━━」
正直何故幽霊とあんな事がデキたのか全く説明はつかないが、確かな感触が股間に今も残っている......。
そして幽霊にも痛覚があったようで途中何度も中断し、色々な小細工をしてやっと......という感じだった。
だがなによりも驚いたのはレイの身体は冷たいはずなのにあの中だけは暖かった事だ━━。
「おはようアイラ......」
「うぉっ!」
ふと横を見るとレイは瞳孔を開きっぱなしで俺の顔を至近距離でジッと見つめていた━━。
「ビックリしたぁっ! そんなデス○ートのLみたいな澱んだ目で俺をガン見するなよ! まさかそうやってずっと俺を見てたのか!? 一体いつから見てたんだ!?」
「......かれこれ4時間くらイ」
「怖っ......! 毛穴の数でも数えてたのかよ!?」
「うん......アイラの全てを知りたくて先ずは毛穴から数えたヨ」
「いやいや怖いって......」
「なんで怖がるノ......? 好きな人の事は全て知り尽くしたいと思うのは普通でショ? それに約束したくれたじゃない......アイラはワタシのそばにずっと居てくれるっテ。あの言葉は嘘なノ......?」
「嘘じゃないよ......でも俺も毛穴もシャイだから楽屋では人目を気にせずに休みたいって言ってるんだ。だからガン見しすぎるのは勘弁してくれ......」
「ふーん......分かっタ。じゃあキスしていイ.......?」
「いや......朝起きたばっかで俺の口多分臭いから後でいい......ですか?」
「いや.......キスして.......キスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスしてキスして......」
「怖い怖い怖いっ! お前柴咲○ウの歌でもそんなに『Kissして』って言わねーぞ!?」
「柴○コウ......? ダレ? まさか......女?」
レイの目は先程よりも目力が更に増し、金縛りに掛かっていないはずなのに俺は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。
「お......お前......ポケ○ンの"くろいまなざし"でも使ってんのかよ......。頼むからその目をやめてくれ......その顔で包丁持ってピンクの髪にしたら未来○記に出て来そうだぞ!」
「未○日記? ダレそれ? またオンナ? アイラはワタシの前で女の話するんだ......。昨日あんな事したのにアイラはワタシ以外のオンナに興味あるんだネ━━?」
「え.......? そそそそんな事ないよ......」
「やっぱり女は全て消さないとダメかナァ......? でもその前にまずアイラを誘惑するオンナ共と連絡を取る手段を全て消さないとネ━━」
レイは俺から目を逸らして俺のスマホをじっと見つめていると━━、
ブッブー......ブッブー......。
「ダレ......?」
「だ......誰かなぁ......男の人だとは思うけどなぁ......? い......今はレイとお喋りしたいから後で出るよぉ......」
「......出なさイ━━」
「はい......」
ちくしょう! 最悪のタイミングでスマホが鳴りやがった......! 頼む......男の人であってくれ! もしこれが女なら手始めにそいつから消されちまうかもしれない......!
俺は画面から目を逸らし、名前を見ないように恐る恐るスマホの通話ボタンを押した━━。
「も......もしもし......?」
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