第84話 育ての母と墓にあったモノ
『......明星亜依羅君だね?』
「......だとしたらなんだ? ホット○ッパーのクーポンでもくれるのか? こっちは今から墓参りをしようとしてたのに邪魔しやがって━━」
『ふっ......噂通り生意気な態度だ......だがそんな態度で良いのか?』
「そりゃこっちのセリフだよ。まず自分から名を名乗るのが先じゃないのか? しかもそれ他人から奪い取ったスマホだろ? 自分のスマホを持つ金も持ち合わせていないのか? バイトでもして頑張れよ」
『ふっ......クソガキが......。私の名前は大神総司、現総理大臣だ━━』
「あー......さっき生放送で人ぶっ殺してBANされたネットリテラシー0のやつか。予言してやるよ......アンタは近々元総理大臣になるぞ」
『なんとでも言え......私はあんなことしちゃいない、アレは偽物だ。まぁ世間は私への信頼ですぐにその事も理解するさ』
「ははっ......支持率2%の総理に果たして信頼なんてあるのか? ズレた眼鏡外して少しは周りをよく見てみろよ」
『なんだと? 小僧が......お前に電話している意味が分かっていないようだな? あんまり調子に乗るとお前の育ての母親は━━』
パチンッ......!
「私のところに居る━━、だろ?」
「な......なにっ.......!」
「━━もう電話切って良いか?」
ピッ......。
「お前どうやっ━━」
「フンッ......!」
「ぐびゃぁっ......」
ト゛コ゛ォ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!
俺は大神の顔面を軽く殴りつけるとヤツは思いっきりすっ飛び広間のデカい窓ガラスに思いっきり叩きつけられた。
「しかしまぁ広い家だなぁ......HIKA○INんちみたいだ」
俺が転移した場所は施設というより豪邸と呼ぶのに相応しく、一体何畳あるんだと思うくらいのリビングの広さとど高い天井という如何にも金ありますよ的な空間だった━━。
そして俺に殴られた大神は顔面の骨が折れ、鼻や口から流しながら瞼をピクピクさせて焦点の合わない目でなんとかこっちを見ている。
「ほ......おまえ......どうひて......」
「
「しょ......しょんな......うっ......っ......」
「もう寝るのか......緊張感を持って対応しないからこんな一般高校生に殴られるんだよエロ総理。秘書のスカート覗く前にインターホンを覗くべきだったな━━━」
俺の目の前で気絶した大神総司は何故か股の部分にヒールの跡のようなものが付着していた。
そして近くのソファーで体育座りをして固まっていた瑠奈さんは、ブラウスと黒いストッキングが破けて中の下着が少し見えている状態で俺の方に走って来た。
「アイラくん......ありがとう......!」
俺が近くに寄ると瑠奈さんは俺の姿を見て安心したのか俺を強く抱きしめた。
「遅れてごめん瑠奈さん......。コレってアイツにやられたんだよね? 殴って正解だったよ」
「うん......でも私負けなかったよ。アイラ君が来る前にあのジジイに少しだけやり返してやった! でもやっぱり力では勝てなくて......」
大神の股に足跡がついている理由が瑠奈さんの一言で完全に理解した。
「あー......そういうことか......総理が新手のMなのかと思ったよ。それより少し離れてもらって良い......? 育ての母とは言えそんな姿で強く抱きしめられると思春期の僕にはフ○スクよりも刺激が強いんだ」
「あっ......! ごめんなさいね私ったら! アイラ君もそういうお年頃だもんね! いやぁ〜今の子は成長が早いわぁ......」
「いやいや......僕と10歳くらいしか違わないのに何言ってるんですか。それに僕はもうほぼ大人ですよ?」
「それもそっか! 最近部屋に女の子連れ込んでるもんね! 青白い肌をした黒髪メイド服の可愛い女の子━━」
「え......!? なんでそれを......!?」
「ふふふ......それは内緒っ♡」
瑠奈さんは白く細い人差し指を唇に当ててニコッとしながらウィンクをする━━。
さっきまでレイプされそうになってた人とは思えない切り替えの速さだな......それよりも今の......ちょっと可愛い......?
「ねぇねぇアイラくん......今私のこと少し可愛いと思ったでしょ......?」
「えっ......えっ!? 何言ってん!?」
「冗談だよ。なにを慌ててるのかな━━?」
冗談かよ......女っておっかねぇなおい......!
「いやいやいやいやいやいや! 慌ててない慌ててない! 今からハーレムとか作っちゃおうかなぁ〜! 例えば口にパンツ咥えて曲がり角でメスとぶつかって━━」
「パンツは兎も角女性をメスって言うのはアウトだよ.......。そもそもアイラ君はあの子に尻に敷かれてる時点で無理でしょ? 君は多人数の女の子を同時に扱えるほど器用じゃなさそうだし、なにより一途なのが向いてるよ」
ダメだ......完全に見抜かれてる━━。
「も......もうこの話やめよう......調子が狂っちゃうって。とりあえず瑠奈さんの安全を守らないと━━」
「ふふ......優しいのねアイラ君は。そういう所は私の旦那......あなたのお母さんのお兄さんに似てるよ」
「そっか......」
「それとこれ見つけたよ。コレが見たかったんだよね? この中に写ってるこの人を━━」
瑠奈さんが渡してくれたのは一枚の写真だった━━。
「......ありがとう瑠奈さん、リスクと引き換えにこんな奴の秘書なんかをやらせちゃって申し訳ない。瑠奈さんが居なければ大神の居場所を完全に把握する事も、母さんの本当の仇の確証を得られなかったよ」
「全然良いよコレも一つ勉強になったし......とりあえず今日限りで秘書は辞めさせてもらって本業の経営に戻るとします。アイラ君はこの後どうする?」
「とりあえず転移魔法で瑠奈さん送って証拠を消してから考えますよ」
「分かった......必ずお家に帰って来てね。私はアイラくんの帰りを待ってるから━━!」
万季にもさっきそのセリフを言われたな......。
母さんが死んで......あの日虐められてから俺は何処かで孤独だと思ってたけど今の俺には待ってくれている人がいるんだ。
そしえその人達の中でも瑠奈さんは中学の時から俺の面倒を見てくれていた......俺にとって大切な人だ━━。
「ありがとう、絶対に戻るよ━━」
シュワァァァン......。
転移魔法を掛けて瑠奈さんが家に帰した後総理が気絶している間に瑠奈さんが此処にいた証拠を消すため、乗っていた黒塗りの車の消滅や防犯カメラのデータ削除、あらゆる痕跡を消した━━。
「しかし総理が新人秘書をレイプしようとしてたなんて一大スクープだな......流石はいろんな所に女作って妊娠させまくった挙句口止めしていただけはあるよ。"異次元の少子化対策"を自ら実践するなんて素晴らしい下半身を備えてるよアンタは━━」
「......」
「ふっ......こりゃあと30分は気絶から醒めないな。とりあえず動けないように拘束しておくか」
血を垂れ流して気絶している大神を有刺鉄線で縛り上げ、俺は自分の墓を確かめるため母さんが眠っている墓地に転移した━━。
* * *
「久しぶりに来たな......」
俺が住んでいる街外れに佇む小さな霊園、その場所に来るのは俺が死ぬ前に一度訪れて以来だった━━。
俺は死んでから此処に一回も来ていない......人を殺すと決めたあの日から俺は此処に来る資格が無いと思っていた。
それは死ぬ間際まで俺のことを心配していた心優しい母さんが殺人鬼の息子を見たら心底悲しむと思ったからだ......そう思うとどうしても足を踏み入れる事は出来なかった━━。
でも今夜だけは違う......。
俺は母さんを殺した奴の復讐相手を自力で見つけたことを報告しに来たんだ━━!
「母さん......やっと......やっと母さんを殺したヤツに復讐を果たせそうだよ」
そう呟き墓を改めて見るととても綺麗な状態で墓は整備されており、草ひとつ砂利の隙間から生えていない状態だった。
そして香炉の脇に何やら見覚えのある"箱"を見つけた━━。
「コレって......」
間違いない! この箱は......!
「そうか......万季が風邪ひいた原因はコレだったのかぁ......」
その箱は俺があの日万季にプレゼントしようとして最後川に放り投げたブレスレットの箱だった━━。
こんなに綺麗に保管してあるのは彼女が言っていた通り毎日墓の整備をしてくれていたからなのであろう......恐らく雨が降ると分かった日は箱が濡れないよう家に持ち帰っていたのかも知れない......。
「いつも気がつくのが遅いよな俺は......っ......こんな力を手に入れたって女の気持ち一つ分からないとは情けない限りだよ......本当に......」
俺は自分に対して怒りと呆れを抱えながら不意に卒塔婆を見るとそこには青海万季の名前が書かれたものが何本か立っていた。
おそらくそれぞれ節目に備えてくれていたんだろう......。
「レイの言う通りここに来て正解だったよ......。一度死んだ俺の為にさ......本当にありがとう......」
そしてその卒塔婆の周りを見た時、一つの違和感に気がついた。
「......何故こいつのモノが......!」
俺は総理が気絶していあの豪邸へ再び向かった━━。
* * *
再び豪邸に戻った俺はリビングで気絶している総理を確認する為にリビングへ向かう━━。
「やぁ明星亜依羅君。まさか......まさかこんな所で会うとはね......」
「それはこっちのセリフだよ......。まさかお前が総理の近親者だったとはな━━!」
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