第82話 あの日の真相


「お前......一体何してんだ......」


「聞いて驚くなよ? 俺は今電話を掛けてるんだ、お前の可愛い彼女にテレフォンショッキングしようと思ってさ。あそこまで残酷な事をして手に入れた彼女だ......お前にはコレが1番効くだろ?」


「まっ......待ってくれ! 万季だけは......万季だけにはっ!」



 プルルルルル......フォンッ......。



「もしもーし」


『も......もしもし......アイラ君......?』


「やめろ......黒羽っ!」


「こんばんは万季さん。今君の彼氏とチーズフォンデュパーティーしてるんだけど君も来ない? この前僕が言ったあの件で話があるんだけど━━」


『......分かった......でも私どこに行けばいい?』


「5分後に君の家に魔法陣が現れると思うからそれに入ってくれ。この前の出来事を知ってる君なら分かってくれるよね?」


『分かった......!』



 ピッ......。



「さて......君の彼女と3人で話す前にそこの食いしん坊を処理するか」



 俺への恐怖からさっきまで涙ながらに氷川を食べていた田所の腹は限界に達してパンパンになっていた━━。



「......食べ......おぇっ......もう許して......はひ......ひぐぅっ......」


「チーズ美味かったろ? しかし今日1日でずいぶん立場が変わったもんだな。君の裸は世界に晒され親父は虐めていた奴にぶっ殺された......最高の気分だろ?」


「お願い......許して......」


「ふっ......俺もあの時何度もそう訴えていたよ。でも君達は止めるどころかイジメを加速させていった......そんな奴に救いの手なんかあると思うか?」


「私は......真央ちゃんの事が本当に......」


「キモーーーーいっ! そういう一方的な恋愛の押し付けはLIZEで風俗嬢相手に困り顔絵文字付きのキモい文送ってるオジサンだけで充分なんだよ」


「......一緒に......しないで......」


「いや、お前はそれ以下だ。そういえば君が食べた氷川の肉って壊れかけたナノマシンか何か入ってるんだよね? もしそのナノマシンがなんらかの電気信号で暴走して細胞の復元が始まったら......一体どうなるのかな?」


「......な.....何を考えてるの......真央ちゃん......さっき直接殺さないって言ったじゃん!」


「確かに俺は直接・・は殺さない。殺すのはお友達のジャーキーだよ......ヴァジュラ雷電━━」



 俺は抵抗する田所の腹に手をかざす━━。



「いや.......何するの......やめっ......ウ゛ッ━━!」



 バチバチバチィッ......!



「ウ゛カ゛カ゛カ゛カ゛カ゛ッ━━!」



 ミチッ......ミチミチッ......!



「うぉぇっ......ぐるじ......おなかが.......!」



 俺の強制的な電気信号によって活性化した氷川の肉片は驚異的なスピードで増殖して田所の胃を侵食する。

 そして肉が引き裂けそうな音と共に田所の腹はどんどんと膨み限界を超えた分は食道を逆走し青い液体と肉を口から吐き始める。

 しかしそれでも追いつかず腹ははち切れんばかりになっていた━━。



「うおぇぇぇぇっ.......! 息がっ.......助けっ......」



田所は尚も口から吐き出すも顔は鬱血して赤く変色し碌に息も出来ず限界に達しようとしていた━━。



「じゃあなアバズレ、先に地獄に落ちたお前の親父によろしく伝えといてくれ。核物質を地獄で密売しちゃダメだよってさ━━」


 ミチミチミチッ......。



「田所っ......! 黒羽もうやめてくれ! 田所が死んじまう!」


「いや......じにだく......」


「バイバーイ」



 ミチミチミチミチッ━━!



「た゛す゛ケ゛......☆#¥€+>=#→☆・○*ッ━━!」

 


 ズシャァッ......!



「間違えた。核物質は違うヤーさんだったわ━━」



  田所飛美は青い液体とチーズ、そして自身の肉片を撒き散らしながらバラバラの死体となった。

 その死に様は先程死んだ自身の父親と似たような無惨極まる姿だった━━。



「ふぅ......チーズを食べるのは当分控えようかな」


「そんな......田所......たどころぉぉぉっ!」


「そんなに囀るなよせっかくのイケメンが台無しだぞ? それにこれから君の愛する彼女も来るんだ、少しは落ち着いて男らしいところを見せようぜ......なっ?」


「くそぉ......俺の仲間と親を皆殺しにやがって......お前だけは絶対に許さねぇ!」


「ははっ......じゃあ逆に許して貰ったらどうなるんだ? ClubH○useにでも招待してくれんのか? 言っとくがもうあのSNSをやってるヤツは居ないぞ」


「ふざ......けんなよ......俺から何もかも奪うつもりか......!」


「もちろん、なんてったってこの血に塗れた物語が始まった一因はお前・・だからな間男さん。さてそれじゃ......前回に引き続き2回目の登場かな? 青海万季さんですどうぞー」



 俺達の前に魔法陣が現れるとその中から万季が困惑した表情で現れた━━。



「......此処は......真央......勇樹......その血の色は何......?」



 万季は彼氏が田所に食われている上にチーズフォンデュまみれになっている悲惨な光景に息を呑んでいた━━。



「.......ま......万季......」


「やあ。あれ? 髪切った?」


「切ってないよ......」


「そうなの? じゃあ早速お友達を紹介してもらおっか......じゃなくて本題に入ろうか。さっきまで総理が配信してたライブ動画は見た?」


「見てないけど......何の話?」


「そうか......なら俺の口から教えた方が良いかな」


「やめろっ! 万季、そいつの話を鵜呑みにするな! そいつはとっくに死んでるはずの詐欺野郎なんだ! 俺からお前を奪われた逆恨みで俺たちの関係をぶち壊そうとしてる! だからこれからコイツが言うことは全部嘘っぱちだ! 俺を信じ━━」



 ドスッ━━!



 俺は氷川の食い散らかされた腹に思いっきり拳を叩き込んだ━━。



「ぐべっ......! オェェェェッ......!」



「お喋りが過ぎるぞ......彼女が俺の話を信じるか信じないかなんて俺にとっちゃどうでも良いんだよ。どうする万季さん? 聞くか聞かないか選択するのは君自身だ━━」


「教えてほしい......。私の両親が何故あんな目にあったのかを!」


「万季っ......お前俺の言う事を聞けないってのか!?」

 

「勇樹は黙ってて!」


「っ......」



 万季が怒り口調で氷川に文句を言うとヤツはその剣幕に少し怯んでいた━━。



「ごめんなさい真央......教えてくれる?」


「ああ、4年前君の両親を巻き込んだ大事故を引き起こして闇に葬った犯人......」


「やめろ......黒羽ぁぁぁっ!」






「そいつの名前は氷川盾。そこで死にかけてる君の彼氏の親父だよ━━」





「......それ......本当なの......?」


「本当だよ。これについて俺が嘘を言うメリットなんて無いからな」



 俺から万季に真実を話しても氷川は万季を諦められないのようでなんとか言いくるめようと口を開く━━。



「違う......黒羽真央は嘘をついている! お前と俺の仲を引き裂こうとしてるだけの出まかせだ! だから信じるんじゃねーぞ万季......!」


「はっ......お前脳みそまでブルーキュラソーになっちまったのか? 強気な彼氏を演じてるところ申し訳ないが......実はさっき撮ったライブ配信がオフラインで俺のスマホに保存されてるんだ。コイツを見てみなよ━━」


「なんだと......やめろぉっ!」



 ピッ......。



『あれは4年前、とある場所へ向かう為林道に向かっている最中でした......私はハンドル操作を誤り対向車線を走っていた車にぶつかりその車は谷底へと落ちました。私は直ぐに私の息が掛かった部下を手配しNシステムの記録を削除させて事件に私が関わってる事を揉み消しました。その後意識不明だったその夫婦の身柄を引き取って延命治療と称しアレキサンドブラッドの最終実験を行っておりました━━』


「っ......くそぉっ......!」


「感情が籠った良いビデオレターだったな。ついでに言っておくとこの親父の悪行を当の息子は全て知っていた上で君に両親の事で脅していたそうだ......付き合っても付き合わなくても治療なんて全くされずそれどころか実験材料にされたままでね━━」


「......そう......なんだ......」


「くっ......!」



 スマホの映像と俺の話を聞いた万季の表情は絶望と怒りへと変っていく━━。


 そりゃそうだろう......事故の加害者が自分の幼馴染の父親且つ、両親を治療をするという嘘を平然とした顔で言ってきた人間だ。

 そして裏では実験材料にされて今も意識が戻らない......。

 そんな事実を突きつけられた挙げ句それを材料に脅されて無理やり氷川ゴミクズと今まで付き合っていたんだからな━━。



「まぁ大凡の話はこんな感じだ、信じるか信じないかは君次第だけどね。これで君とした約束は果たしたよ」


「教えてくれて......ありがとう......っ.......お父さんとお母さんはコイツらが......! 許せない......!」


「ああ......。まぁ親父の方は俺が文字通りズタズタにして最後は爆発して死んだ、あとはコイツをどうするかだ。まあいくらあの青い血が強いといえど俺が治さない限りもうじきコイツは死ぬだろうけど━━」


「ぐ......くそぉ......俺は......万季......お前を......」


「うるさい.......! 私の名前を気安く呼ばないで! 家族をめちゃくちゃにした張本人のくせに! いつ帰ってくるかわからない両親をずっと1人寂しく待ってる気持ちがアンタに分かる!? アンタ達さえいなければ......アンタさえ幼馴染じゃなければ私はお父さんお母さんと今も仲良く暮らせたのに......! 真央とだって......! ううっ......っ......」



 万季はこれまでの辛い出来事を思い返して涙を流しながら氷川に怒りを撒き散らす。

 その顔は俺が今まで見たことが無いくらいの怒りで氷川も少したじろいだがすぐに反論を始めた━━。



「う......うるせぇ......お前は昔俺のこと好きだったろうが! 惚れてただろうが! だから好き勝手して良いんだよ! じゃなかったらキスなんかしないだろ......!?」


「ふざけないで......! あれは勇樹が脅したからでしょ! お父さんお母さんの事を引き合いに出してきたじゃん! 人の弱みに漬け込んで騙してたなんてアンタ最低よ!」


「仕方ねーだろ! そうでもしないと俺は━━」


「なぁ......夫婦喧嘩するなら寝室でやってくれよ。それより教えろ、俺が虐められるキッカケになったあの日・・・の出来事をお前らのやり取り含めて全部話せ。さもないとお前の肺に穴開けてリコーダーにするぞ━━?」



 グジュッ......グリッ......グリッ......!



 俺は指を氷川の胸に向かってグリグリと押し込み脅しを掛ける━━。



「んぐっ......! わ......分かった......話すから殺すな......頼む......!」



 ヤツは俺の脅しに屈したのか徐に口を開いた━━。



「あの日......俺は確かに万季を脅したよ......。両親の治療を続けて見捨てない事を前提に俺と付き合えってな......」



 なるほど......あの日万季が言った『勇樹が本当に━━ないって言うなら』と言った時の聞こえなかった部分は『両親を見捨てない』って事だったのか━━。



「......それで脅して教室でキスをしたのか?」


「そうだ......『俺を怒らせたくなかったらしろよ』って言ったんだ。それでコイツは俺の首に腕を巻きつけてキスをしてきた......そしたらお前が━━」


「万季さん......今の話は本当か?」



 万季はあの日のことを思い出したのか再び涙を溜めて暗い表情で俺の方を向いた。



「......本当だよ......それで私は『これが私からする最初で最後のキス』って言ったの」


「そうか、もう一つ確認して良いか? 俺はあの日のことを鮮明に覚えてる......聞こえなかった部分は除いてさ、あの日氷川はキスを脅す前に『さっきの続きをしようぜ』って言ったんだ。続きってのはあの教室に来る前に一度何処かでキスをしてるんだよな?」


「うん......真央の言う通り1回目のキスはあの教室に入る前に同じセリフで脅されて無理やりされた......。その時はそれで終わると思っけどその後何故か教室に行くぞって脅されて......だから私は『本当に・・・これで両親を見捨てないなら』って再確認したの━━」


「だよな。なぁ元イケメン......今万季が言った事が本当なら俺が隠れていた・・・・・あの教室で何故改めて脅す必要があるんだ? 事前に脅してるならわざわざ教室で言う必要なんか無いよな?」


「それはっ......」


「おかしいよなぁ? それと......実は大葉からある事を聞いたんだが、俺と教室で鉢合わせる前に『予定が急遽変更になった、黒羽真央を死ぬ寸前まで追い込め』ってお前に言われたんだそうだ。それで思ったんだがあの日教室でのやり取りは俺が居ると知った上でイジメの口実を作るためにワザと・・・やったんじゃないのか?」


「っ......!」



 氷川の表情が先程よりも確実に焦ったモノへと変わる━━。











「答えろ......お前一体誰に指示されてあの教室に来たんだ━━?」

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