第81話 チーズフォンデュ


 ブシャァッ.......! ドサッ......!



「あーあ......」



 氷川盾は暴露をしようとした瞬間突然悲鳴を上げて全身が破裂し、青く染まった残骸が磔台から落ちて床に転がった。


 これは俺がやった訳じゃない......別の何かがコイツの体を破裂させたんだ━━。



「氷川が......なぁイケメンこれって......」


「うん......

 iTubeBANされちゃったよ━━」


「そこじゃねーよ」


「最悪だ......なんで引っかかったのかな? 全く意味分からない。通報しないように脅しだってしてたのに━━」


「意味は分かるだろ。ヌードに恐喝に暴力......トドメに総理に成りすまして配信と来れば跳満どころか役満だよ」


「えぇっ!? アニメとかファスト映画をアップロードしてるヤツの方がよっぽど悪質なのに僕だけが悪いの!? 世の中不平等だ! 毎週発売前のワ○ピースをネタバレしてるヤツとかそっちの方が速攻BANされるべきじゃん!」


「なぁイケメン、そいつは最近捕まったよ......」


「ちぇっ......これならBANされる前に虐められたエピソードを猫ミームにでもすれば良かったよ! あー猫飼いたいっ!」


「......話を元に戻してくれよ頼む」


「はいはい、じゃあ氷川ジュンの血......というか青い血自体には言論統制のプログラムでも入ってたみたいだね。コイツが口にした虎谷柊こたにひいらぎってのは仲間にすらその名前を口に出して欲しくない程人見知りなんかか?」


「相変わらず減らず口だな......警視総監より上の人間が改造人間を指揮した上に君のお母さんを殺した事件の黒幕って分かったんだぞ? 少しはビビってくれないと......」


「ふっ......」


「......どうした? やっぱり君のお母さんの事で何か引っ掛かってるのか......?」


「まあね......人造人間を作るために鷲野さんの結婚相手や海原に斡旋された人達が攫われて殺された事件の黒幕ってだけなら話は分かる。でも母さんは家の中で殺されてそのまま放置されていた......それも"アイス"っていう人体実験にも使ってるクスリがわざとらしく置かれた状態でさ......。母さんの捜査を打ち切りにした虎谷ってヤツは恐らく氷川父にも告げていない何かを隠してる筈━━」


「だろうな......俺もその辺りを洗ってみるよ」


「うん」


「それと、その前に一つ言わせてくれ......






 葵の仇を取ってくれてありがとう━━」


「......」


「俺1人じゃ田所を追い詰めてこんな目に遭わせる事なんて出来なかった......。それだけじゃない、痛めつけて殺すっていう最悪の汚れ役まで引き受けてくれた......本来は大人が責任持って対処しなきゃいけない事を俺の半分も生きてない君に全てを背負わせてしまった。本当に申し訳ない━━」



 オッサン......いや、鷲野刑事は背筋を俺に向かって深々と頭を下げた。

 よくよく考えれば警察に頭を下げられたのはこれが人生で初めてだな......でもあんまり気持ち良いもんじゃない。



「良いよ僕は......オッサンに謝られても困るしそれに━━」



 俺は黒い靄を身体から発生させて明星亜依羅の姿に戻る━━。



「僕はこの姿になってからどんな手を使っても復讐するって決めてたんだ。そのターゲットの中にたまたま・・・・葵さんを殺した奴が居ただけのことだよ」


「そうか......お前はやっぱりアイツの子供だな。全く素直じゃない」


「......それよりおじさんは若い彼女のところに行った方が良いよ。彼女たちもまだ安全ではない......敵はまだ完全に滅んでないからね」


「分かってる......俺はお前の親父の車借りて安全運転・・・・で向かうとするさ━━」


「最後まで嫌味かよ......車は後で返してね。それと2人によろしく」

 

「ああ......君もオジサンが取り調べするまで怪我に気をつけるんだぞ」


「......もちろん」



*       *      *



 おっさんが建屋を出て行った後、俺はただの青い残骸になった氷川父を見つめていた。



「虐められた復讐もこれで一旦一区切りか......」



 色々なことを考えていると滅多刺しにして最後気絶した氷川勇樹が意識を少し取り戻した━━。



「とう......さん......」


「やあ元イケメン、お父さんは君が三度寝してる間にブルーハワイになっちまったよ。悪いな━━」


「そん......な......」


「今から回復魔法でも使って復元してやりたい所だが......僕のクラスメイト且つ君の彼女の親を材料にしたコイツにそれをする価値は無いよな━━」


「......なんの......話だ.......」


「惚けるなよ、調べは全てついてるんだ。君の親友の大葉君からも話は聞いてる......話を全部聞かせてもらおうか」


「誰が......話すかよ......」


「ふっ......そういう態度は逆に僕を勃起・・させるんだぞ? まあ良い......自分から話したくなるようにそこで死にかけてるヤクザの娘を使うとするさ━━」



 ト゛ス ッ━━!



「ん゛か゛ぁ゛っ......!」


「愛するパパが死んで感傷に浸ってるとこ悪いな、君にやってもらいたい事がある」


「な......に......」


「もしやってくれたら僕は直接・・君を殺すのは止めようかなぁ〜って思ってるんだけど乗る?」


「そんなの信じられるわけ.......」



 パチンッ......! ドサッ......!



 俺が指を鳴らすとさっきまで拘束していた磔台と有刺鉄線は煙のように消えて田所は床に落下した。

 そして深傷を負って死にかけている田所に少しの回復魔法を施し、汚い裸をこれ以上見たくないので着ていた服も元に戻した━━。



 シュワァァァン......。



「なんで......元に......」


「ここまでやれば信じるだろ? 根は尽くすタイプさ」


「ふざけないで......一体どういうつもり......?」


「一度だけ説明するよ。今から君はそこでバラ肉になりかけてる友人氷川勇樹を......

 

 










 その口で食え━━」




「え......?」


「明星......お前一体何を......」


「コイツって改造のお陰で傷を負っても再生するんだろ? 将来の食糧危機に役立つサンプルになりそうだから今の内にどうなるか見たいんだ」


「ふざけんな......これはナノロボットで強制的に治癒力と免疫力を......」


「もし断るなら君はパパとお揃いの奥歯・・になってもらうだけだよ━━」


「あ......あ......」



 俺は田所の親父が間近で死んでいった様をワザと言い恐怖心を煽らせる。

 誰だってあんな意味不明な死に方はしたくないだろう......言葉ではとても表現出来ないあんなグロい死に方は流石の俺でも願い下げだ━━。



「早く答えろよケツから奥歯を捻り出したいか?5......4......3.......」


「やめろ田所! これは罠だっ!」


「2......1......」


「分かった......やります......!」



 田所は氷川の言葉を無視して震えながらそう言い切った━━。



「よーし良い子だ......偉そうなギャルが従順になるってストーリーはマニアックな男達に刺さるかもな」


「田所......! ふざけるなよ明星......お前一体何がしたいんだ!」


「ふざけてるのはそのピッコ○大魔王みたいな身体したお前の方だろ。何がしたいかって? 僕を殺そうとイキってた奴らが泣き喚く光景をこの目で見たいだけだよ......さぁ早く食べようか」


「く......狂ってやがる......」


「狂ってる? 女をモノにしようとして健気な少年を死ぬ寸前まで虐めさせた改造人間、その少年に振られた腹いせに痴漢をでっち上げ、ネットへ晒してイジメに加担していたヤリ○ン女......狂ってるのは一体どっちなんだろうな?」


「アンタ......」


「お前......何故......」


「へへっ、それを知ってるかって? ようやくだ......ようやくこの時が来たよ━━」



 俺は黒い靄を纏ってこの2人がよく知っている俺本来の姿に戻る━━。



「嘘......」


「そんなバカな......!」


「馬鹿なのはお前らだよずっと近くに居たのに今頃気が付くなんてさ......。俺がお前らの仲間や家族相手にSMプレイを楽しんでいた犯人......黒羽真央だよ━━」


「そんなバカな......お前は自殺したはず......」


「......アンタが......真央......ちゃん......」



 2人はボコボコにされて腫れ上がった目をこれでもかというくらい見開きながら俺を見た━━。



「その顔が見たかったよ......そう俺はあの日死んだいじめられっ子だ。だがこうしてお前ら虫ケラに復讐するため地獄から蘇った......嘗て虐めていた相手に好き勝手嬲られる気分はどうだ? 最高だろ?」


「クソッ......お前如きにこんな事されるなんて......俺のプライドズタズタにしやがって......!」


「はっ......プライドどころか身体がズタズタになってるから心配すんなよ。ほら田所さん早いとこそいつを食ってよ......面食いのヤリ○ンなんでしょ?」



 ビクッ......!



「ね......ねぇ......真央ちゃん......落ち着こう......? 私はあの時真央ちゃんに振られた悔しさでやっただけで本当は━━」



 グシャッ......!



「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」


「家畜以下の存在がペラペラと喋るなよ。お前がやるのは目の前の餌にかぶりつくことだけだ......さっさとやれ」


「うぅ......っ......」



 田所はたった今俺に踏みつけられて潰された顔を涙と鼻血でグシャグシャになりながら氷川へと近づく━━。



「やめろ......田所......頼むやめてくれっ!」


「田所さん。お父さん苦しんで死んでいったよね......? 皮膚や内臓から歯が突き破って出てきてさ......痛いだろうなぁアレ━━」


「ひっ......! 殺される.......やらなきゃ殺される......」


「田所......」


「やらなきゃ殺される......やらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺されるやらなきゃ殺される......!」


「おいっ......!田所しっかりしろよっ!」


「そうだ......しっかり噛んで残さず食べろ」



 田所はフラフラとしながら氷川にゆっくり近づいてゆく━━。



「やめろ.......それ以上来るなぁぁぁっ!」



 カ゛フ゛ッ......! ク゛チ゛ョ゛ォ゛ッ......!



「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!」



 田所は氷川の首に思いっきり噛み付くとそこから青い血が吹き出し、田所の顔面と髪の毛が青く染まる。

 氷川の肉を齧り切った田所は俺の指示通りよく噛んで肉を無理やり喉奥へ押し込むように飲み込んだ━━。

 


「おーおーそんなに頬張っちゃってフードファイターかよ。フォークとナイフ持ってこようか?」


「っ......うぅ......おぇっ......」


「吐いたら殺すぞ、俺は食べ物を残す奴とツイフェミが1番嫌いなんだ。それにまだいっぱい残ってる......たんとお食べ━━」


「うっ......っ......」


「やめ......ろ......田所......痛みに......耐えられ......ない......」


「うるさいっ! やらなきゃ私が殺されるのよ......アンタは黙ってて......!」


「そんな......黒羽頼む......やめさせてくれ......俺本当に死んじまう......!」


「うん、死ねばいいんじゃない? しかし脆いね実に脆い.....死んだ仲間を含め君達の熱い友情も死を前にすれば脆いもんだな。でも俺はそんな君達のおかげで学ぶことが出来たよ......人を陥れるには非情なサメになれ、弱肉強食ってさ━━」


「頼む......黒羽......!」


「ほら早く食えよ......もしや口に合わないのか? 仕方ないなぁオプションでトッピングしてやるよ。神が作りし食べ物チーズフォンデュ



 俺は鉄魔法で容器をボウルを用意し、熱々の神が作った食べ物チーズフォンデュを生成してボウルにぶち込む。

 


「な......何しようってんだ......」


「コレ掛ければ田所さんも食べやすいと思って」


「何言ってんだお前冗談だろ......やめろ......やめ......やっ━━」



 ジュッ......ドロォォォォッ......!



「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」



 氷川の懇願を無視して俺はグツグツと沸騰したチーズを容赦なく頭から掛けると良い香りが部屋中に広がった。



「出来たぞぉハ○ジ、ペ○ターにチーズをたっぷり掛けたんだ......残さず食べなさい。おじいさんはその間フランクフルトに住んでるアイツに電話するから━━」



 田所が氷川に齧り付いてる間俺はとある人間に電話を掛けた━━。



*      *      *



 作者より。

 近況ノートにも書きましたが体調不良のため少し更新が遅くなります。

 お待たせして申し訳ありません......チーズフォンデュを食べて早めに治しますのでよろしくお願いします_:(´ཀ`」 ∠):

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