第80話 流石にBAN


 とある郊外の施設━━。


 辺りには長閑な風景と森林が覆う林道に一台の黒い車がその風景に似つかわしくない速度で一棟の豪邸に入り、その車から秘書と思われるスーツをピシッと着こなした女性が慌ただしい様子で施設の玄関へと入った━━。



「総理! 大変です!」


「何だ騒がしい......ここはマスコミや他の連中から唯一身を休められる場所なんだ。静かにしてくれ」


「申し訳ございません......ですが今世間では総理の事で大変な事が起きています!」


「は? 一体何の話だ?」


「やはり見ていませんでしたか......これを見て下さい......」


「一体何だこれは......私か━━?」


「はい......今総理を名乗るものがライブ配信で人間を殺害しております」


「何だと!? 一体コイツは誰なんだ!? 私はこの通り何もしてないぞ!」


「それは分かっております! 総理を騙る人間が人を殺していることも大問題ですが肝心なのはそこではありません......殺された人間が問題なのです!」


「一体どういう事だ! しっかり説明をしろ!」


「......先程この偽物に殺された者は侠道会の田所会長なのです......。彼は様々な業界幹部に未成年女性の斡旋をしていた事や、私も一切知らない軍事開発用の計画に伴い攫って殺害した件をカメラの前で語っておりました......」


「何だと......それに今青い体液を流しているのはまさか!」


「そうです......彼は警視総監の氷川氏......恐らくその体液に関する事や他の事もこの偽物にバラされるかもしれません」


「馬鹿野郎っ! 何故お前らコイツの配信を止めないんだ!? すぐに通報すれば即刻停止に追い込めるだろうが!」


「仰るとおり通報は複数のアカウントを使って試みました。しかしこんなに残虐なコンテンツを流しているにも関わらず何故か配信が止まらないのです!」


「言い訳をするなっ! 良いか? 君は私の秘書になって日が浅い......最速でクビにされたくなかったら何としてもこの配信を止めろ!」


「はい......!」


「君にも家族が居るんだろ? 確か最近引き取った高校生が居た筈だ......私に逆らったらその子がどうなるか分かってるな━━?」


「はい......承知しております......」


「ふむ......。それともう一つ、氷川は情報を最後まで漏らす事が出来ない......だから猶予はまだある。それまで君の体で楽しませてくれよ......? 配信を止めさせるのはその後で構わない」


「っ......」


「ふっ......君のその悲しそうな顔とピッタリとしたスーツ姿から見えるその胸の大きさは実に唆られる。私は君が秘書になっていつも我慢していたんだ......手を出しても口出し出来ない弱みを私が握っている事を忘れるなよ? 私がこれから世間の皆様に顔を出す前に先ずは癒してもらおうか......脱ぎなさい」


「......はい......っ......」


 

 パチン......パチン......。



「ふっ......良い子だ━━」



 ドサッ......!



*      *      *



 磔台にて━━。



「ふごぉっ......!」



 ハ゛コ゛ッ゛━━!

 


 殴りつけた鼻からは夥しい量の青い血が流れ始める━━。



「......そう......り......」


「おいおい、そんなに鼻血を出すなんてチョコの食い過ぎか? 今日がバレンタインだからって欲張るなよ......アンタのその腫れ上がった顔じゃ精々貰えるのはキャバ嬢の営業チョコくらいさ。それで......そのトンネルから出てる血の色は何かね? どう見てもイカの血じゃなイカ━━」


「っ......」


「さっさも説明して下さいよ。BANされる気配漂ってるからなるべく早めに頼んますよ━━」


「ま......待ってください......これはあなた方が......」


「あなた方が何だ? 総理の命令が聞けないというのかね君は? 次に従わなかったらその再生力でも追いつけない深傷を負わせて息子ごと豊洲に卸しますよ......?」


「っ......これはアナタの協力者の指示なんですか? 私と息子に対するこの仕打ちは......!」



 協力者? もしかして大葉が言ってたH.Kの事か?

 なら少し話を合わせるか━━。



「ああもちろん、あの方もここまで事が大きくなればもうどうしようもないと仰っていた。であれば早い内にこの事を世間に公表して鎮火させろと御達が出たわけだ━━」


「そんな......結局私も息子もアナタ方にとっては捨て駒だった訳か......。それよりさっきまで車走らせてたガ━━」



 ト゛コ゛ォ゛ッ━━!



「うぶぇっ......!」


「余計な事を今喋るなよ総監......失言は政治家の専売特許でしょ? 私を差し置いてそれをするのはルール違反だよ。君はその血とそれに繋がる人間の事を晒せば良いんだ」


「ぐっ......わ......分かりました......根幹に関わってるアナタがそう仰るなら話しましょう......。私、警視総監氷川盾は軍事用そして社会的地位が高い我々のために開発された身体能力を強化する人工血液、《アレキサンドブラッド》をこの身体に打ち込みました......。私や隣にいる息子の血が青いのはその副作用です━━」



 》やっぱりターミネーターか......。


 》まさかそんなSFみたいな事が本当にあるとはなぁ



「......それで? 君は過去に一つだけ|個人的な理由で隠蔽した事件があるよね? それについても話して貰おうか」


「っ......!」


「さぁ早く話せ私はこう見えて気が短いんだ。とっとと喋らないとレバ刺しにするよ」



 氷川父は苦虫を噛み潰したような顔をして口を開いた━━。



「.......私はその実験の中で1つの家族を犠牲にしました。あれは4年前、とある場所へ向かう為林道に向かっている最中でした......私はハンドル操作を誤り対向車線を走っていた車にぶつかりその車は谷底へと落ちました。私は直ぐに私の息が掛かった部下を手配しNシステムの記録を削除させて事件に私が関わってる事を揉み消しました。その後意識不明だったその夫婦の身柄を引き取って延命治療と称しアレキサンドブラッドの最終実験を行っておりました━━」



 青海万季......俺が好きだった人の両親をぶち殺した犯人は俺から万季を奪い取った氷川勇樹の父親であるコイツの仕業だった━━。



 》職権濫用かよ......とんでもねぇクズだな!


 》残されたお子さんが可哀想すぎる......。


 》こんなのが警視庁のトップとか終わってんな


 》総理GJ!



「......聞いてますでしょうか? そのお父さんとお母さんのお子様......。君の両親を......君が受ける筈だった愛情や幸せを簡単に奪い去って力で揉み消し嘲笑っていたのは全部コイツだったんです━━」


「あれは仕方なかった......私はぶべぁっ.......!」



 ハ゛コ゛ッ゛━━!



「仕方ないだと......? 人の親奪っておいて何が仕方ないんだ? なぁ? ならお前の目の前で大事な息子が小便垂れ流しながら私に痛めつけられる様を笑顔で見届けろよ......仕方ないんだろ?」


「やめてくれ......それだけは......!」


「起きろ元イケメン......おか○さんといっしょの時間だ━━!」



 ザシュッ......!



「うぐぁ......!」



 ザシュッ......ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ......! ジョボジョボ......。



「勇樹いいいいいっ!」


「んぐぉ.......だ......す......げ......で......」


「うーわマジで小便漏らしてるよコイツ。イケメンなのに走り方が変だった時と同じ何とも言えない感情が芽生えたわ......」



 俺は手から黒い刀身の刀を生成して問答無用で氷川勇樹の身体を何度も何度も滅多刺しにする。

 刀が身体から出し入れするたびに青い血が吹き出し、改造された身体によって再生しようとしているが俺の攻撃の前に追い付かず全く役になっていなかった━━。



「頼む......それ以上続けられたらナノマシンの再生が効かなくなる......! やめてくれぇぇぇっ!」


 

 ザシュッ......!



「ぐあ......」


「だからなんだ? お前のせいで崩壊したその子は再生出来ない程心に傷負ってんだよ顔面バスケットボール。その子にお前は実験の事を治療と騙して同意させて好き勝手してたんだろ? ならお前も身内を赤の他人に好き勝手寝取られる気分を味わえ......この配信見てる連中はそういうジャンルが好きなだから視聴率上がるぞ━━」


 

 ザシュッ......!



「うぐっ......ぇ......」


「何故それを......!」


「何故かって? 私は総理だからね......ハードディスクにドリルして証拠隠滅した大臣の事も、二次会の後車内で女を無理やり抱き寄せてわいせつした議員の事も何でも知ってるんだよ━━」



 ザシュッ......!



「うぶぇっ......!」



 話のノリでブッ刺しまくった氷川勇樹の身体は俺が本格的な拷問を施す前に既にボロボロになっていた。

 そしてその光景を間近で見ていた父親は涙を垂れ流しながら恐怖と悲しみで顔を更に歪めていた━━。

 


「さぁて次に話して貰うのはそのもう一つの事件だ。君は2年ほど前にとある殺人事件の捜査を圧力掛けて打ち切りにしたね? それは何故か説明したまえ......でないとアンタの息子がもうすぐハナクソ入りのピザ生地になるからな?」


「それは......あなたの......大神総司総理と警察庁長官である虎谷柊こたにひいらぎ氏の......












 く゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛━━!」



 



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*      *      *



「......はい! と言うわけでイジコロ転生が遂に大台の第80話を迎えましタ! みんな本当にありがとウ! そしてハッピーバレンタイン♡ ワタシ達からは髪の毛入りのチョコを皆さんにあげますネ♡ ねー作者サン♡」


「お願いです......メンヘラエディションのチョコに私を巻き込まないで下さい......。そんなもんは主人公だけにあげて下さい━━」

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