第77話 偽りの権力者
「さて......権力だけが取り柄のこのガラクタ達をスクラップにしますか。よっこいしょっと......あー腰痛ぇ......」
俺は爆発したスポーツカーを持ち上げ、肩に乗せると峠道から森の中へと入る。
「おいおい......人が乗ってる車をラジカセ感覚で持ち上げんなよ」
「アメリカのラッパーみたいでかっこいいでしょ? Hey yo-yo......作者は女性? 口調は男性? 思考は中性? 嫌味な習性? 自撮り無修正? 晒して粛清? sad to say! yeah......」
「yeah......じゃねぇよ高校生の癖にオッサンみたいなクソ寒い韻の踏み方で俺の背筋凍ったぞ。そんなんじゃ将来おじさんみたいに若い女から煙たがられる存在になるから気をつけろよ」
「部下の手籠にしておいて何言ってんだよおっさん。よろしければこの後ラブホまでア○ファードで送迎しましょうか? 意外と硬派なおっさんはそうでもしないと
「ア○ファードで送迎とかデ○ヘルかよお前......。確かに俺は臆病な男だがガキに背中押してもらわなきゃ誘えないほど落ちぶれちゃいねぇよ」
「そうですか......まあ少ない手掛かりでコイツらにたどり着いた人ですもんね━━」
「たが結局その手柄もどっかのお化け高校生に全部持ってかれちまったけどな。全く怖いもの知らずのガキってのは恐ろしいもんだよ━━」
「いやいや......僕にだって怖いモノはありますよ」
「お前程の男でもおっかないヤツが居るってのか? 冗談だろ?」
「この世に天敵が居ない動物は白頭鷲かシャチくらいだよオジサン......。オンナ・ユウレイ・コワイ......」
「そ......そうか......世界は広いな......」
「まぁそんな話は置いといて......ちょっと部屋作るから待っててください━━」
俺は木魔法を用いて30坪くらいの建屋を作り、車内で気絶している全員を車から引き摺り出して小屋の中に担ぎ入れる。
そしていつもの犯行通り鉄魔法で磔台を生成し、有刺鉄線で全員を磔台に縛り上げて目が覚めるのを待った━━。
「......お前家まで作れるのかよ。将来はハウスメーカーに就職した方が良いんじゃねえのか?」
「それ良いですねぇ卒業したらそっち方面に就職しようかな? いや、やっぱやめておこう......僕が施工するとネジが外に見えちゃうかも」
「......お前やっぱりこの件が終わったらしっかり逮捕してその
「えっ......それってもしかして僕の住所特定して訪問してくるパターンですか? やっぱ阿○寛の方にしようかなぁ......」
「うん、もうこの話は止めようか━━」
* * *
「う......ん......ここは......」
「お目覚めだね田所飛美さん。ここは天国だよ━━」
目を覚ました田所は俺の顔を見た瞬間食ってかかるような勢いで俺を睨みつける━━。
「っ......! 明星......亜依羅......!」
「どうも明星です、保健室デートは楽しかったよ。でもまさか一回のデートで君のお父様に御挨拶するハメになるなんて僕は完全に外堀埋められたようだね。参ったなぁ......」
「ふざ......けんな......アンタ......!」
「人聞きが悪い......僕はこの物語で
「えっ......嘘......何これ......!」
田所は自分の身体を見回すとその姿に青ざめた顔で絶望していた━━。
「なんで私......裸で縛られて......私の手足が......イ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
田所は有刺鉄線で裂かれた皮膚に全裸の身体、そして身体の末端に有るべき手と足が無くなっていた。
そしてその事実を理解した瞬間痛覚が脳に伝達されて悲鳴を上げる━━。
「そりゃ痛いよな......文字通り"手も足も出ない"身体なんだもん。でもさっきはもっと酷かったんだよ? 爆発の衝撃でその陳腐な体はバラバラ、まともに残ってたのは履いてた紐パンくらいだったんだ。逆にそこまで身体をプラモデル僕に感謝して欲しいくらいだよ」
「っ......こんな姿にして......私をどうするつもりよ......レイプでもするの......?」
田所は痛みと置かれている状況を少し理解したのか先程とは打って変わって怯えた表情を俺に見せる━━。
「おいおい勘違いするなよ、君とヤるくらいならカナブンをベッドにエスコートするさ」
「なんですって......」
「ふっ......そんな顔をされたら僕がまるで加害者じゃないか、あくまでも先に喧嘩を吹っ掛けてきたのはそっちだろ? そこを忘れるなよヤリマン」
「うるさい! アンタが私に逆らわなければこんな事にはならなかったのよ......! 私達と違って何の権力も地位も無いアンタがこんな事して許されるとでも思ってんの......?」
「はっ......親の七光りでよくそんなデカい顔出来るよな......人のふんどし借りて取ってる相撲を偉そうに語るとかどっかの脚本家連中かよ。そのうち真っ当な批判コメントを誹謗中傷とか騒いで鍵垢にしそうだな」
「ふん......どうせこんな事件起こしたらすぐに警察が来る。教頭を殺して私達にもこんな酷い仕打ちをしたとなればアンタは死刑確定よ! 二度と表の世界を歩けないわ!」
「ご心配ありがとう。でも僕よりも先にメンチカツになるのは君達だから先ずは自分の心配をしたらどう?」
「ぅ......此処は━━」
「おっと、権力者であるお父さんも全裸でお目覚めだ。おはようございます......ここは僕が急遽生成した撮影スタジオです」
「スタジオ.......だと......?」
「はい......貴方達が始末しようとしていたADの鷲野君も此処に居ますよ。ほらリアクション芸人の方達にちゃんと挨拶して......それとこの人の下半身汚いからちゃんとモザイク掛けてね」
「誰がADだよ高校生。確かに汚いが生放送でモザイクは中々掛けられんぞ」
「だそうです。すみません」
「貴様ぁ......! こんな事をして......ク゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
田所父は娘と同様に手足の先が無くなった痛みに歯を食いしばりながら暴れた結果やはり有刺鉄線により皮膚が裂けて血が滴っていた。
「おいおい、今まで散々色んな人を痛めつけておいて自分は身体の先っちょが少し無くなっただけでそんな情けない悲鳴上げるのか......アンタは大人しく風俗のケツ持ちレベルでその粗末なチ○コを納めておくべきだったな。てそしたら逆に風俗のオーナーにケツ持たれて掘られたりして━━」
「貴様ふざけるなよ......私がこんな事態になれば2万人の組員がお前を殺しに━━」
パチンッ......!
俺は指を鳴らし魔法陣を出現させるとその中から1人の血塗れになったアロハシャツの男を召喚する━━。
「2万人? 話を盛るなよ......正確には1万3千500人だろ? ねぇアロハのおじさん......」
「っ......」
「お前......何故そこまで正確な人数を......」
「さぁね......。ちなみにこの人はその1万3千500人の最後1人、本州最西端の県でスナックのママに脅しを掛けてたゴロツキのアニキだよ━━」
「そんな男はどうでも良い! 何故そこまで構成員の数を貴様が把握しているんだ! 答えろ!」
「うるさっ......親子揃ってすぐにデカい声出すとかヒステリックファミリーかよ。しかしアンタ年寄りなのにテレビでニュースとか見てないの? ったく仕方ないなぁ......これ見てみ?」
俺はアプリを開き、スマホの画面が田所に見えるように顔に近づけるとニュース動画が再生される━━。
『本日"神の使い"と名乗る者が全国各地に出現し、日本最大の暴力団組織"飛美侠道会"の全国に点在する事務所全てを襲撃しました。この事件で侠道会の組員約1万4千人が殺害された事が警察関係者の調べで新たに判りました。続いて速報です......『拝啓クズ勇者様。今から報復に向かいます』の作者が窃盗の容疑で逮捕されました。調べによりますとこの作者はRサイズの値段でLサイズのコーヒーを━━』
「おっと、次のニュースはいらない情報だな......」
「そんな......何かの嘘だ......。あり得ない......」
田所父は自分の部下達が1人残らず始末された事実を受け止められないのか呆然とした顔でスマホを見つめていた━━。
「良い顔してますね、その顔が見たかったよ。そもそも何故僕がホテルに到着するのにこんなにも時間が掛かったのか......それはアンタの力の象徴でもあるこの可愛い可愛い子分達を1匹残らず始末してきたからですよ━━」
「ハッタリだ......! そんな事1人の人間に出来るわけ━━」
「ほ......本当なんです......!」
アロハシャツの男はドス黒く腫れ上がった顔で田所父の話を遮り、怯えながら口を開いた━━。
「コイツは......俺と舎弟がアガリを納めさせようと脅してたスナックに入ってきて舎弟をぶち殺しました......。その後も訳わからない魔法で散々連れ回されて直系から末端まで全員1人残らず素手で......まるで雑巾搾りでもするように簡単に人の体を......っ......解体したんです......。コイツは普通じゃねぇ......人の皮を被ってるだけのイカれたバケモンです......! 会長は一刻も早━━」
ス゛シ゛ャ゛ァ゛ッ━━!
「がっ......」
「お喋りが過ぎるな。アンタはヤクザよりコメンテーターの方が向いてたよ━━」
俺の左腕はその男の顔面を貫いて脳みそを抉り取り、その貫いた腕にはアロハシャツの体がぶら下がる━━。
「ひっ......!」
「いざ人に化け物って言われるとムカつくなぁ......『私ブスすぎてつらたん』とか言いながら自撮りアップしてコメントで『ブスですね』って書かれたらマジギレする奴の気持ちが今初めて分かったわ」
「お......お前ぇ......こんな事してタダで済むと思ってるのか!? 1万人以上の人間をたった1人で殺すなんて前代未聞......貴様の極刑は免れないぞ!」
「ふっ......冗談は見た目だけにしてくれよ全裸の王様。お前らが権力をイキリ立たせてフェラ○オしてる裏で慎ましく生きてきた無実の人間をこの刑事さんの恋人含めて何人殺してきた? それをご自慢の権力とやらで何度握り潰してきた? アンタらの下衆具合にはこの僕ですら到底追随出来ないよ」
「ふん......ただの快楽殺人鬼には何を言っても分からないだろうな......。我々にはこの国の舵を取る責任がある、貴様にその重圧が分かるか? 責任を背負うリスクとして多少の犠牲はつきものなのだ!」
「そっか......じゃあ僕が明日からこの国を変えるからお前はココで死んでくれ、責任を背負うには多少の犠牲はつきものなんだろ━━?」
「何を馬鹿なこ......」
ザシュッ......!
「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
「お父さぁぁぁんっ!」
俺は田所父の右目に指を突き刺して眼球を抉り抜く━━。
「いちいち喚くなよ女の子か? 今夜はクマのぬいぐるみでも抱いて寝るんだな」
「んぐ......はぁ......はぁ......」
「そうだ......大葉政調会長から聞いたけど青い血液の件には総理大臣も関わってるんだっけ? その総理って今どこにいるの? 教えないとその高く止まった鼻をへし折るけど良い?」
「なにを......私は何も知......」
グシャッ......!
「か゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」
田所父の鼻を掴み思いっきり引っ張ると骨と皮が千切り取れて血が吹き出し、顔面が真っ赤に染まる━━。
「質問にしっかり答えないからその高く止まった鼻っ柱を折られるんだよ? アンタに拒否権は無い......次はその偉そうに喋る口が無くなるぞ」
俺は田所の口を少し引っ張り脅しを掛ける━━。
「く゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ! ひゃめろぉ......やめてくれぇ......」
「じゃあ早く答えなよ、3......2.....1......」
「かれは今かくれがにいる.....! メディアも知らない本当の隠れ家だ......そこで今夜落ち合うことになってた......」
「ありがとう。てことは総理は今此処で何が起きてもすぐに対応出来ないって訳だね?」
「ああ......連絡が行ったとしてもメディアの前に動けるのは連絡から1時間は掛かるだろう......。だがそれを聞いて何をするつもりだ......貴様がいくら強大な力を持っていたとしても一国には絶対に勝てないぞ。我々を殺すということはこの国自体を敵に回すというこ━━」
ザシュッ......!
「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」
俺は田所父の脇腹を引きちぎると血がそこから吹き出し、下半身はまるで苺ジャムをつけたように赤く染まる。
「国ねぇ......只今絶賛大ピンチのアンタをその国とやらは果たして助けてくれるかな?」
「ぐっ......な......なんだ......と......!」
「じゃあADさん、打ち合わせ通りこのスマホでカメラ回して」
「分かったけどお前まさか......」
「ふっ......コイツらの裏にいる連中を全員表に引きずり出してやるからまぁ見てなって━━」
俺はカメラがONになる直前、とある人間へと姿を変える━━。
ピコンッ......。
「貴様......その姿は......!」
「はーい皆さんこんばんは、今をときめく支持率最悪の総理大臣大神総司です。今から僕ちんのプライベート生配信をお見せするのでチャンネルはそのままでよろしくね! 裏金最高っ!」
ゆーちんによって鍛え上げられたスキルを存分に活かす前代未聞生配信が始まった━━。
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