第69話 愛する人


 校舎爆破後━━。



「どうやら上手く行ったようだな。しかし明星亜依羅は何者だったんだ......?」


「私にも分からない.......ただ一つ言える事は彼は人間という枠組みを遥かに超えた化け物だったってことかな。あんな奴ここで死んで正解だったのよ」


「そうか......強さも俺以上なのか?」


「もちろん......彼はアンタ程度の改造人間じゃ背中すら拝む事が出来ない正真正銘の悪魔。あの・・教頭の首をヘラヘラしながら私に放り投げたあの姿は一生のトラウマもんよ━━」


「......そりゃ普通じゃねぇな。俺も万季をモノにするためにあらゆる事をやったが何枚も上手だ......。今脅威を知って奴が死んだ事に対して心底ほっとしてるよ」


「でしょ? まぁお父さんの狙い通り彼と付き合う事は出来なかったけどBパターンだった彼の始末は完了した......少し惜しい気もするけど仕方ないよね。とりあえずこれで邪魔ものは1人消えて残りはお父さん達がしつこく追ってきた人間を殺すだけ......。さぁ行くわよ━━」












「ねぇねぇ2人とも何の話してるの? もしかしてこれから高級ホテルで1発する為の打ち合わせ? ならシャワーより先に校舎の瓦礫浴びてきなよ」


「っ......!」


「お......お前......








 何故生きてる明星っ......!」





「やあお二人さん。僕の演技にぬか喜びした感想を聞かせてくれよ━━」



*      *      *



「アンタ......なんで......不死身なの......!?」


「良いリアクションだねぇ。僕はどっかのイケメン俳優みたいに山奥で3人の女優と共同生活するという夢を叶えるまでは死ねないんだ。あーマジであんな風にモテてぇー.......渡○謙の娘と結婚してぇー」



 田所と氷川は俺が目の前に居ることに対して明らかに動揺を隠せていなかった━━。



「そんなバカな......アンタは確かに亜門司に仕掛けた爆弾と校舎の爆発に巻き込まれて死んだはず━━!」


「そうだ間違いない! 俺達は絶対にお前を殺したはずだ!」


「その解説はサブチャンネルに載せるからチャンネル登録して待っててよ。それと次からはロンギヌスの槍体を突いて本当に死んだかちゃんと確認するんだな、残念ながら俺も亜門司もバイアグラが要らないくらいビンビンして......じゃなかったピンピンしてるよ」



「み.......みよせぇぇ......っ......!」



 ガシッ━━!



 俺は氷川の顔を手で鷲掴みにして宙吊りにする。



「ぐっ......! 離せぇぇっ!」


「僕がヘラヘラしてるからってあんまり偉そうな口叩くなよ血液カブトガニ.......今さっきの件で友人だった奴を巻き込んだお前らに対して気が立ってるんだ。これからお前らは人生の活動無期限休止になるんだよ......この意味分かるよなぁ━━?」



 ミシミシッ......。



「ぐあっ......いてぇ......何故だ......痛覚は緩和されてるはずなのに......!」


「そりゃ僕が主人公補正されてるおかげさ、なんせ僕はこの物語で2番目・・・に強いからね。万季のことは後でたっぷり話を聞く......今は地面とお友達になってろ━━!」



 グシャッ━━!



「くぶぇぁ......!」



 俺は氷川の顔面を思いっきり地面に叩きつけ、青い血がアスファルトに飛び散りヤツは意識を失う。

 その顔はまるで大型トラックのタイヤにでも踏まれたようにグチャグチャになっていた━━。



「あーあ......せっかくのイケメンがこれじゃあ台無しだぁ。でもすぐにキズが治るトカゲの尻尾みたいな体してんだから良いよなぁ......。ねぇ田所さんちのお嬢さん━━」


「そんな......! 身体強化されてる氷川が簡単に.......」


「ふっ......次は君の番だよ。とりあえずスマホを貸せ、さもないとアプリで加工してもイ○スタにアップ出来ないレベルの顔面に加工するぞ」


「っ......分かった......」


「素直に従ってくれてどうも。《スペクルム邪神の写鏡》」



 俺は田所からスマホを受け取ると即座に田所の顔に変身する━━。



「え......? 嘘......私......? これはどういうこと......? 一体なんなのよアンタは.......!」


「へへー凄いっしょ、実は私って原口あ○まさよりモノマネ得意なんだよね。なんせ姿そのものを真似できるからFaceIDの突破すら楽勝ってわけ、それに顔の骨格と声帯さえコピー出来れば人の声真似も簡単なんだぁ。今からアンタの親父にオレオレ詐欺してやるからそこで寝てなよ〜」


「いや......やめっ......」



 ガシッ━━!



「おやすみ私」



 バゴッ━━!



「ぶぇっ......!」



 氷川と同じように地面に叩きつけられた田所は鈍い音を立てて気絶する。

 その際に歯が先に地面に当たったのか、折れた歯が田所の元から地面を跳ねて転がった━━。

 


「はぁ......この程度で折れるなんてカルシウムが足りてないぞ」



 今回の爆破の件で俺なりに色々な事が分かった......あの時のコイツらの態度と俺の予想が合っているとすれば━━。



「しかしイジメの復讐がまさか国の闇にまで突っ込んでいく事になるなんてな......。どんだけ腐ってるんだよこの国は......」

 


 俺は血まみれで倒れている2人を抱えて転移魔法で自宅に戻った━━。



*      *      *



「おかえりおにーちゃん......? その顔はなに? だれ? それとその2人はだれ?」


「質問が多いな、この顔とコイツらは今夜侠道会を潰すのに必要な具材だよ。さて......ロリの殺し屋水木涼さん、復讐の準備は出来てる?」


「もちろん。涼は復讐するよ......おかあさんと涼の無念を今日絶対に晴らす━━!」


「良いね。いつもその顔と態度なら生活しやすいんだけどなぁ......気を抜くとメスガキ成分が出ちゃうのが難点だよ。もし父親と再会する事にでもなったらなんで説明しよう......」



 俺は涼に対する複雑な思いを抱きながら田所から奪ったスマホから電話を掛けた━━。



*      *      *



 ブッブー......ピッ......。



「飛美か......? そっちはどうだ?」


『コッチはなんとかうまく行ったよ。ただお父さんが気にしてた明星亜依羅は殺さざるを得なかったけど.......』


「そうか......まあ仕方ない、学生1人死んだ所でいちいち騒ぐような世の中じゃないから問題無いさ』


『そうね、それと氷川が首を吹っ飛ばした件だけど━━』



「ああ......そっちの件もお前が爆破したお陰で問題無い。それより今夜━━」


『分かってる、ホテルにはタクシーで向かうね』


「ああ......じゃあまたな。この件が終わったら少しの間海外へバカンスにでも行こうか」



  ピッ......。



「ふぅ......飛美のやつうまく証拠を隠滅出来たようだな」


「流石はあなたのご息女ですね......やる事が大胆だ。しかしこんな大々的な事をして世間にはなんと説明を?」


「そこは心配無い、今回の爆破は我々に敵対するヤクザ組織の自爆テロに仕立て上げる算段はついてるんだ。それにもし仮に世間が騒いでも大神総理や政治家の先生がいつもやってる通り芸能人のスキャンダルを各テレビ局に放送させて矛先をこの事件からズラすさ━━」


「なるほど......流石用意周到ですね。我々警察上層部が信頼を置く訳だ━━」


「おいおい、そこはいつもお粗末なケツを拭かせて申し訳ないと言ってくれよ氷川さん......。今回の件もアンタの息子が処理に手間取ったのが爆破の原因になったそうだぞ? あと事情があったとはいえ首を吹っ飛ばすなんてそっちもウチの娘に引けを取らない大胆さだよ。まあお陰でいろいろうまく事が運んだようだが━━」


「ウチのバカ息子には力を誇示しても構わないが血液・・の事はバラすなと強く言ってありますからね。しかし......明星亜依羅という少年は一体何者だったんですか?」


「さぁ......分かっているのは海原や俺の女だった秋山からその少年の処理を頼まれたが、その全員が1人残らず何者かに殺されていることくらいかな━━」


「そうですか......」


「ああ......だがそんな疫病神・・・の少年も今回の爆破でこうして死んだ。我々の秘密を追う者、秘密を知った者、少しでも関わった者、そう言った目障りなハエは早々に殺しておかないとコイツらのように後々支障が出るからな。なぁ......















 鷲野獅郎君」


「っ......」


「我々をここまで追いかける事が出来たその情報力をそろそろ我々に教えたらどうだ? さもないと今以上に肉体に苦痛を与えて君は死ぬ事になるぞ━━」


「はぁ......っ......お前らのことはYAH○O知恵袋のカテゴリーマスターに聞いたんだよ......アイツらはなんでも答えてくれる......」


「相変わらず減らない口だ。そんなんだから君は上に上がれなかったんだよ」


「なんとでも言え......。しかし警視総監ともあろうお方がヤクザのトップと一緒になって阿漕アコギこすい商売だけじゃなく民間人を誘拐してX-M○Nを作っていたとは世も末だよ......。マナー講師が酒気帯び運転で逮捕される方がまだ可愛げがあるな」


「ふん、お前ら愚民に何が分かる。我々はこの国の舵を取り国家を繁栄させるという重大な使命があるんだ......その為には多少の犠牲も必要なのだよ。いや犠牲というより人柱か、昔は皆神に対し人柱になる事を有り難がって居たが今となっては......なんとも情けない愚民達だ━━」


「......ならアンタが先頭切って人柱になれよ。その方が俺たち愚民・・も喜ぶ」



 ドスッ━━!



「ぐっ......!」


「たかが現場のハミ出し刑事が偉そうな口叩くなよ? お前にどんな手が残ってるのかは全て分かってる.......だが我々にはそんなもの通用しない━━」



 クソッ......俺とした事が東海林可愛い部下を巻き込まないために単独で行動した結果ヤキが回ったな......。



「さて......お前にはヤツを誘き出す餌として今夜まで生かしといてやる。いよいよ待ちに待ったアイツ・・・を潰す時が来た......夜が楽しみだな━━」



 すまない.......お前の為に20年間コイツらを追い続けて来たが俺はどうやらここまでのようだ━━。



*      *      *



 捕縛数日前━━。



「やっとだ......やっと見つけた.......神の使いとやらに俺は感謝しないといけないな。海原の事務所からこれが出てきたという事はもう間違いない━━!」



 海原親子が湖で殺害されてから数日後、あの日海原のビルに現れた神の使いみたいな奴がばら撒いた資料を見た俺はとある名前に釘付けになっていた。



水木・・葵━━」



 水木葵みずきあおい。彼女は20年前突如として俺の前から姿を消した俺にとって大切な......






 



 結婚相手だった━━。


*      *      *



作者より。

更新が遅れて申し訳ありませんm(_ _)m。

色々なことが重なって執筆できませんでした。

徐々に書いていきますので応援して頂けると嬉しいです。

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