第59話 後悔


 私は今までの人生の中でたくさんの事を後悔してきた━━。

 両親の事や自分の事、思い返せばキリが無いけどその中でも自分が死ぬ瞬間まで一生心を抉り続けるであろう1番大きな後悔がある......。

 それは自分や家族の為に逃げた結果、彼を裏切ってしまった挙句2度と償う事も謝る事も......顔を見る事すら出来なくなってしまった事だ......。

 

 しかしその彼が......もうこの世に居ない筈の彼が今━━、



「......反省してても殺す、命乞いしてても殺す、償いをされても殺す......お前には死という選択肢以外ねーんだよ」



 私の目の前で血塗れになりながら男に向かって悪魔のような顔で残酷なセリフを浴びせていた━━。



*      *      *



「......真央......」



 大切な人の変わり果てた佇まいに思わず声を出してしまった......。

 しかし彼は目の前の男達に気が向いているためか、私が目覚めて声を出した事に気がついていない様子だった━━。



「真央が......生きてる......」



 一体どういう事か全く説明がつかない状況だが、今ハッキリしているのはアイラ君が真央だったという事実だ━━。

 私が初対面の時にアイラ君に感じていた懐かしい雰囲気と余りにも多い真央との共通点、そして時折何処か遠くを見つめる悲しそうな顔......私の予感は間違っていなかった━━。



「私......っ......」



 あの日の事を思い返すと涙が溢れてくる━━。


 私が氷川にあの日『好き』などと言わされ自分からキスをしてしまいその現場を真央に見られてしまった事、現場を見た真央が後に想像もつかない程酷い仕打ちを受けても真央はそれを必死に隠そうとしていた事、そしてそんな状況に気付いていたにも関わらず私は助けるどころか何も出来ず最後真央は死んでしまったという現実が毎日心に押し寄せ色々な感情が込み上げる━━。


 何故あの時私は何も出来なかったのか......アイツらのオモチャにされている理由を彼が眠っているお墓の前で今更遅いと分かっていても全てを打ち明けたかった......。


 でもいざお墓の前に立つと私が行動しなかった所為で結果的に彼を殺してしまったんじゃないかという自分に対する悔しさと無念が込み上げ、結局出来た事と言えば亡くなってしまった彼にお花を添える事とお墓の手入れをする事だけだった......。



「本当に......ごめんなさい......真央......っ......」



 今目の前に立っている真央に今までの事を全て話し全力で謝って私の人生を賭けて彼に償いたい......。

 でも彼を復讐の鬼に変えてしまった原因である私なんかが彼に対して謝る資格も、ましてや事実を言う資格なんて到底無い......。


 だから今の私には気絶したフリをして彼の復讐をただただ見届け、私が彼に殺される順番をここで待つしか出来ないんだ━━。











「アナタ......そうやってまた彼から目を背けるノ.....?」



*      *      *



「ごぁ......黒羽......悪かった......お前をイジメたこと謝る......! だから頼む.......殺さないでくれ......!」



 血まみれで涙を流して俺に命乞いをする大葉を見ていると笑いが込み上げてくる━━。



「ははっ......死ぬほどの恐怖を味わうとみんな同じセリフを言うんだな。コンビーフになった富田、笛吹、海原も同じセリフを言ってたよ」


「なっ......お前がアイツらを殺したのか......?」


「今更かよ......もう少しまとめサイト・・・・・・を見たほうがいいんじゃないのか? もちろん俺が殺したよ......文字通りこのでな━━」


「っ.......俺はまだ死にたくない......頼む許してくれ......許して下さい......」


「なぁ.......お前ら加害者って被害者側に回るとなんで同じセリフを繰り返すんだ? 頭にスヌーズ機能でもついてんのかよ。じゃあ聞くが俺が辞めてくれと何度も言った時お前は何をしていた? 殴る蹴るは当たり前で焼印押し付けたり挙句男に犯されるのを見てるどころか和気藹々と特典映像の撮影してたよな? もっと楽しもうよこの状況を......人生で2度と味わうことの出来ない恐怖と絶望、そして痛みをさ━━」


 

 俺は用意していた拷問道具の一つである食用フォークを手に持った━━。



「何を......する気だ......」


「何って......パスタでも食うように見えるか? お前の爪をこれでネイルアートすんだよ。家事って大変だよなぁ......こんな凶器を毎日洗ったり拭いたりしてるんだ、そりゃヘトヘトで仕事から帰ってきた夫に家事やれってブチギレるイタい専業主婦様も増えるってもんだ━━」


「やめろ......やめ......」


「食材のくせにいちいち喋るなよ」



 ザクッ......。



「く゛お゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛━━!」



 俺は奴の指の皮膚と爪の間にゆっくりとフォークを刺していく。

 ちょうどフォークの4つの爪の内2本が大葉の人差し指の爪に入り徐々に血がフォークに滴る━━。


 

「おいおいまだ人差し指一本目だぞ? 剥がしてもいないうちにそんな悲鳴上げてりゃどっかの宇宙開発局みたいにおしっこ以外の機密情報までお漏らししちまうぞ? マミー○コパンツ履いて股間のセキュリティを強化しておくべきだったな━━」


「えいいちっ......! なぁ頼む......息子にもう手は出さないでくれ! 私の今までしてきた事を全て話すか━━」



 グサッ.......キンッ━━!



「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ......!」


「アンタのセリフはまだ早いよ......モニターのテロップをよく見ろ、そんなんじゃ他の大御所声優や音響監督さんに怒られるぞ」


 

 俺は大葉父の手の甲にさっき爪を抉っていたフォークを突き刺すと、フォークは完全に手を貫通して鉄の台に弾かれる音が聞こえた━━。



「フォークならジョリーパ○タ並に在庫あるから一本くらいくれてやるよ。さてファミレスプレイを再開しようか......」



 ザクッ......。



「ク゛オ゛ォ゛ア゛ア゛ッ━━!」



 俺は指の何本かにフォークをゆっくり食い込ませて左右に動かし爪を剥がしていく......。



 メリッ......メリッ......。



「や゛め゛て゛く゛れ゛ぇ゛ぇ゛っ゛!」



 全ての爪が剥がし終えると壮絶な痛みを耐え抜いた大葉栄一は涎と涙、そして口や鼻から流れ出る血とボコボコにされた顔で笑えるくらいグシャグシャになっていた━━。



「ふぅ......ぐふ......うっ......はぁ......」


「そんなに喘ぐなよ感じてるのか? これであの日焼印をした方の手は剥がし終わった。次はコレを使ってお前をオーガズムに至らせてやるよ━━、《ディアボルスピーナ悪魔の棘》」



 俺はアイスピックくらいの太さの黒い針を空中に無数生成する。

 その針をよく見ると赤エイの毒針のようにギザギザの"カエシ"がついており、一度刺さったら簡単に引き抜けなさそうな形状になっている。

 そしてその凶悪な針の先端は全て大葉の腹部に向けられた。

 


「何を......する気なんだ......」


「お前の弱った膀胱を今から針治療するんだよ。お前は知らないだろうが今まで脱退したメンバーの腹部には、俺の頭文字を金田○少年の被害者みたいにわざわざタトゥーしてあるんだ。但しお前の場合この焼印の発案者として他の奴らとは違うディレクターズカット版をお届けしてやるけどな━━」



 パチンッ━━!



 俺が指を鳴らすと針は空中で移動を始め、MKの文字に形が整えられていく━━。



「それで......俺を刺すつもりか.......やめろ......! 俺はもう顔面も足首も切られてグシャグシャなんだ! これじゃ死んじまうよ......うぅっ......」


「こんな事くらいでいちいち泣くなよ......って散々お前が俺に言ったセリフを今くれてやるよ。大丈夫、お前には精神耐性と回復魔法を常に付与してるお陰で簡単に死ねないから安心しろ。だがもし次泣いたらこの針で眼球をたこ焼きみたいにひっくり返すぞ?」


「っ......!」



 無数の針は大葉の腹へ目掛けてゆっくり下がっていく━━。



「頼む......こんな事......黒羽ぁ......」


「いーいーないーいーな、平〜和っていーいーなー」


「助けてくれぇ......親父ぃぃぃっ......!」


「えいいちぃぃぃぃっ!」



 プスッ......プスッ......プスップスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスプスッ━━!



「キ゛ェ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ......! ぐぉぉっ......ううっ......うっ......」


「あっ......お前今泣いたな? 利き目はどっちだ━━」


「いやっ......」


「答えろ」


「......右です......」


「カーナビみたいな答え方しやがって......。後で眼帯つけてやるから地獄のコミケで伊達○宗のコスプレしながらケツ出して鬼の金棒・・相手にレッ○パーリィィィ! してこいよ」



 眼球の直径くらいに束ねた針を大葉息子の右目に徐々に下ろしていく━━。



「いやだああああっ━━!」



 グチャッ......グチャッグチャッグチャッグチャッ━━!



「う゛お゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛......!」



 カエシがついた針を眼球に何度も何度も往復させ、視神経ごと破壊していく━━。



「はははっ、こりゃたこ焼きって言うよりもんじゃ焼きだな......まあ脳まで針が達しなくて良かったじゃん。イってたら狂牛病みたいに脳みそ穴だらけになってたよ」



 大葉の右目は完全にグチャグチャになり右目だったものから無数の針が飛び出し、こめかみには血の涙が流れていた━━。


 

「ぐぁ......ゔべぇ......もう......ごろじでぐれぇぇ......」


「殺すさ、そのうちね......。そう言えばお前さっき万季の事オモチャって言ってたよな? アレどう言う意味だ?」


「......そ......それは......」


「しかも氷川は結局此処には居なかった。お前らと氷川の間で一体何があるんだ? ヤツとは親友なんだろ?」


「......今回の件にアイツは関係ねぇ......」


「それ本当かな? 嘘を吐くならこんな風に指切りするよ?」



 ミチミチミチッ......ザシュッ......!



「く゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ......!」



 俺は爪を剥がした方の小指を掴んで思いっきり引きちぎる━━。



「これでもまだ嘘をつく?」


「はぁ......はぁ......う......嘘じゃねぇ......! ヤツとは今連絡が取れないんだ! 今回誘き出したのはオモチャの青海が氷川の名前を出せば必ず来ると踏んでたからだ......。そして俺の呼び出しを断りそうなお前も青海が来るなら頭が働いて誘いに乗ると思っただけなんだ......!」



 なるほどね......万季はただ俺を誘い出すためのダシ・・に使われたわけか......。



「それじゃ次の質問だ、オモチャってのはなんだ━━?」


「......青海は......いや、青海の親は氷川家の力によって今現在生かされてるんだと......そのお陰で氷川の幼馴染・・・である青海は俺の言いなりだから好きにして良いんだって言ってたよ。氷川の友達である俺達も青海を好きにして良いともな......」



「......その話詳しく話聞かせろ━━」


*      *      *


作者より。

おかげさまで40万PVを達成しました٩(๑′∀ ‵๑)۶•*¨*•.¸¸♪

いつも暖かい応援本当にありがとうございます。+゚(゚´Д`゚)゚+。

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