第58話 人気が無い狂人


「しかし校長先生が生徒を盾に生徒を脅すとはね......全く世も末だよ。ある意味でレジェンド校長になれるよアンタ」


「だから......なんだ......これは全て学校のため、正義の為だ......!」



 校長は片膝を地面に突きながら失った両腕からの出血で意識を若干朦朧とさせつつ俺の言葉に反論する━━。



「正義ねぇ......その言葉を使えばなんでもかんでも許されると思ってんのか? そんなアンタに朗報だ......そんな似非正義を振り翳して痴漢撲滅動画してたヤツは収益停止に追い込まれた挙句最近捕まったよ。アンタもそいつと同じ穴の狢さ━━」


「お前に何がわかる......あの高校は大葉さんや亡くなった海原さんその他の力添えがあってこそ成り立っているんだ......。お前みたいな厄介者生徒なんてこの世から消した方が学校は安泰なんだ......!」


「ははっ......政治家がバックについた程度でそんなに強気になれるんか? 僕にもそのバフを付与してくれよ」


「なんとでも言え......お前みたいな化け物に何が分かる......!」


「アンタが子悪党な事だけは分かるさ、秋山の件で僕と賭けをして負けた時も大層悔しそうにしてたしな。あの件でアンタは生徒や教師の問題解決よりも学校や自分のメンツしか考えていない事が再認識出来た、まあそもそも生徒を守る立場の人間であればあんな賭け・・・・・自体やらないからな」


「ふん......あの女は侠道会の上のお気に入りだからって今まで好き勝手されてたんだ。挙句には担当クラスからお前という厄介なセクハラの被害者まで出してそれが拡散されて学校の信用を地に落とした......アイツが死んだと聞いた時は清々したよ」



「清々しただけは僕と意見が一致してるな。だがそんな学校の信用しか考えないアンタだからこそ、とある生徒への壮絶なイジメもそこの変態と共謀したんだよな?」


「イジメ......? 何のことだ......!」


「ふっ......まさか数ヶ月前に死んだ男子生徒の件すら記憶にございませんとはね、隣で馬鹿面してるオムツ穿いた変態より政治家に向いてるよアンタは」


「何だと.....!」


「忘れてるなら改めて説明してやる。今から数ヶ月前......とある男子生徒が些細なキッカケで5人を中心に壮絶なイジメを受けた。その内容は極めて残酷なもので真っ赤に熱された鉄で腹に焼印をされたり、便器のウンコを舐めさせられたり挙句の果てには男にケツを犯されたりした。だがそんな犯罪行為も5人がそれぞれ強力なコネと権力を持っている親のお陰で皆に見て見ぬふりをされたんだ......本来イジメから守るべきであるはずの先生にすらね。そして挙げ句の果てにはパッと見で冤罪だと分かる痴漢動画まで拡散されてクラス内では針の筵状態の上、真に受けた馬鹿な先生には停学か出頭かと脅され遂にその生徒は死んでしまった━━」


「......」



 校長は俺から目を逸らし、焦りの表情で体を震わせている━━。



「思い出して人の目を見れなくなったか校長センセ? その男子生徒が死んだことによって警察や世間という第三者から注目を受ける大事件になるはずがロクに捜査もされず自殺と片付けられ、トドメには痴漢動画の所為でSNSで自業自得と叩かれていた......まさに死人に口なしだ━━。そうなったのもアンタがイジメという行為から目を背けるどころか主犯格の1人である大葉栄一の父親、大葉光一にアンタが泣きついて様々な部分に圧力を掛けて無かったことにしたんだろ?」


「っ......!」


「そのリアクションじゃ大正解のようだな。全く手が込んでるよ......その男子生徒1人の力じゃどう足掻いても勝てる相手ではなかったってワケだ可哀想に━━」



「明星お前......何故そこまで......」



「知ってるかって? 栄一君はあの時わざわざ革手までして焼印を施してくれたよな、君とその他メンバーがやってくれた事は永遠に忘れないと言っていたよ。まあ半数は誰の仕業か最近この世から脱退して現在のKAT-○UNみたいになったけどな━━」


「なんでそれを......お前は一体なんなんだ!」



大葉息子は普通の生徒が知っているはずのないイジメの内容まで知っている俺に対して驚きを隠せていなかった━━。



「いい顔になったな変態息子、さっきの問いに答えてやる時間が来た。そのつぶらな瞳が無くなる前によーく目に焼き付けておけ......この僕が一体何者かという事を━━」



 俺は明星亜依羅の姿から黒い煙を纏って徐々に黒羽真央の姿へと変身する━━。



「黒羽お前......生きていたのか......!」


「黒羽......真央......!」



「久しぶりだね大葉君そして校長センセ......この通り地獄からバイアグラ飲んで蘇ったよ。ここからは僕の.......いや、この俺 《黒羽真央》による復讐を始める━━」



*       *       *



 黒羽真央の姿になった俺は全員と対峙する━━。



「さて、お前らをこれから精肉店に出荷するための準備をしないとな......《ディアブトゥーラフルカ悪魔の拷問台》」



 ス゛コ゛コ゛コ゛コ゛ッ......。



 俺は鉄で出来た十字架状の台を3つ生成する━━。



「なんだ......これは......」


「お前らが今からおねんねするベッドさ、俺が直々にスペシャルマッサージしてやるよ。ただし塗るのは真っ赤なアロマオイルだけどな━━」



 ガシッ━━!



「な......何をする......!」



 俺は校長の髪の毛を掴んで耳元に顔を寄せる━━。



「お前を床に叩きつけて寝かしつけるんだよ」


「やめ.....いやだぁぁぁっ.....!」



 グシャッ━━!



「か゛っ゛.....!」


「ひっ......!」



 校長の頭を地面に軽く叩きつけ気絶させ、頭部から血が吹き出た事を確認し終えると次は両足首を失いうつ伏せで地面にへばりついている大葉栄一の元へ向かう━━。



「なぁ......頼む......俺が悪かった! 明星やめてぐぇぉっ......!」



 俺は弱々しくなった大葉栄一を蹴りで仰向けに転がし襟を掴む━━。



「おいおいそんなビクついてどうした? 俺を散々イジメてたあの時とは偉い変わりようだな。お前には今からパンチという睡眠導入剤をくれてやるから大人しく寝とけ━━」


「いや......冗だん......ぐぇっ......!」



 グチャッ......。



 掴んだ襟を持ち上げ顔面にパンチを喰らわせると顔の形はその衝撃によって塑性変形し、口と鼻からとんでもない量の血を出しながら大葉息子は気絶した。


 そして俺は残った最後の1人へ向かって歩き出す━━。



「あんなパンチで......栄一の顔が......! ひっ......! 待て......く......来るなぁ!」


「最後はアンタだ......変態政治家さんよ━━」



 俺は後退りする大葉父に血塗れの体で迫る━━。



「な、なぁ......待てよ......私はこの2人と違って君に直接何かした訳じゃない......頼む見逃してくれっ! 私はまだ死にたくないんだ......!」


「おいおい、校長はさておき大好きな息子すら捨てて自分だけ無傷で事を済まそうって算段か? 交渉は決裂だよ......そもそもそっちが先に侠道会と手を組んで俺を消そうとしてたんだ、例えアンタが元ゼネコン勤めであだ名ばっかつける有吉○行みたいなチートスライムだったとしても身体を蒸発させるスケジュールに変更は無いよ━━」


「なっ......待ってく......」


「さっきから待て待てうるさいな、延期するのはゼ○ダの伝説かウ○娘のゲームだけでもう十分なんだよ━━」



 俺は奴の胸ぐらを掴みくるりと自分を反転させて背中に奴を乗せて放り投げる体勢に入る━━。



「やめろ......なにするつも......」


「背負い投げ〜〜!」


「うわぁぁぁぁっ━━!」



 バキィッ......!



 奴は縦回転しながら宙を舞い、背中から思いっきり地面へ叩きつけられるとその衝撃で腰の骨と肋骨が綺麗に折れる音が聞こえた━━。



「うっ.......くっ.......」


「イッコウ!......あ、イッポン!」



 レイが掛け声と同時にノリノリで右腕を上げる━━。



「審判のフリして変な事言うなよ怒られるぞ、今は些細な事でも炎上する世の中なんだ━━」


「フフッ......でも言って欲しそうな顔してたじゃン。それに炎上するのは人気があれば・・・の話だから思い上がらない方がいいヨ?」


「イタいとこ突きやがって......メスガキ達にすら人気で負けてる俺にはどうせ全然関係無いよ! 悪かったな!」



 主人公なのに人気が無いって俺の人生色々ハードモード過ぎるだろ.......この世に主人公補正なんてものは存在しないのか......?



「ま......まあそう落ち込まないデ......後でオムライス作ってあげるカラ」


「ありがとう......じゃあデミグラスソースで体が全身浸かれるくらいたっぷり掛けてね。じゃあ始めようか━━」



 俺は3人を台に寝かせて手足をいつも通り有刺鉄線で縛りつける。

 但し大葉息子は足首が無かったので太ももに無理やり縛りつけ、校長の方は首に巻いて拘束した━━。



*      *      *



「ん......」


「やっと麻酔から目覚めたか校長センセ」


「くっ......なんだコレは! ぐぉっ......!」


「あんまり暴れると首元の有刺鉄線が刺さって痛いよ? アンタは俺のイジメを隠した罪しか無いしこれ以上聞く事も無いからなぁ......次の診察が控えてるし話長くなるから手短に殺すね」


「な......やめ......っ!」



 グシャァッ......。



「☆#¥€+>=#→☆・○*€%〜!」



 俺は奴の口に手を突っ込み下顎を顔面から無理やり引きちぎり、手に持った下顎を床に捨てた━━。



「かへっ......ごぁ......」


「もうこれでポ○デントは付ける必要は無くなったな、お前みたいに口を開くたびに自分の保身しか言えないクズには口なんて要らないから外させてもらったよ。アンタみたいな人間がトップに君臨してるから学校でパワハラ大麻が蔓延しても認識は無かったとか平気で言えるんだ。そんなアンタには責任というモノをその身を持って教えてやる━━、《カローフラクト粉砕加工機》」



 キ゛ュ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ン゛ッ━━!



 俺は台に寝ている校長の真上に巨大な箱を生成する。

 その箱の中には鈍色に光る何枚もの強靭な刃が高速で回転しており、その速さは時折回転部から火花が散っている程だった━━。



「んんーっ! はがぁ......!」


「なんだ? 食肉加工される事に不満があるのか? 文句があるなら言ってみろよ」


「ふがぁ......! はへぇ......!」


「ん? なになに? エラム語喋ってんの? そんなのDe○pLでも翻訳出来ないから無理だよ。ちゃんとお口を使って喋れよ」


「アイラ......その口じゃ碌に話せなイ......」


「あ......使える口が無かったな、じゃあ死ね。喋れる機能を失ったお前なんて童貞が財布に入れてるコンドームと同じだ。使い道が無いってヤツさ━━」



 俺は徐々にその粉砕機を校長に近づけていく......。

 少しずつ近づくたびに校長は暴れて有刺鉄線に縛られた身体を傷つけながらなんとか脱出しようともがいていた━━。



「☆#¥€+>=#→! °#*〒〆〜!」


「んん......なんだ......この音......っ!」


「お、おい......明星! なんだその機械は!」



 機械の轟音と校長の悲鳴によって大葉親子が目を覚ました━━。



「おや? 2人とも丁度良い時に目を覚ましたね、今から工場見学が始まるからミンチが作られる工程をその目でしっかり見ておけよ━━」



 キ゛ュ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ン゛ッ━━!



 さらに機械の位置は下がって校長の鼻の高さから数センチ程まで回転刃が迫り、回転による風圧によって校長の服が靡いていた━━。



「¥€○*#%☆♪〜!」


「やめろ......! 明星やめろよぉぉっ!」


「なんで? 牛や豚だって店頭に出される前はこうしてるんだよ? それが人になっただけじゃん、俺は見ていて腹減ってきたよ━━」


「お前......イカれてやがる......!」


「この程度でイカれてるとかお前は女の子か? ならパパの毛が生えた乳首でも吸ってろ。じゃあな校長センセ......地獄に行っても立派な挽肉として達者に暮らすんだ。俺はこの後生きて家に帰ってハンバーグオムライスを食べる事にするよ━━」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛.......☆+€¥%#°<〒〆!!」



 ス゛シ゛ャ゛ク゛チ゛ャ゛フ゛チ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ.......!



「......」



 校長は粉砕機によってただの肉片に変わり、はみ出た肉や骨が飛び散って辺りは血の海に変わる。

 そして俺は校長の血飛沫を近くで浴びた所為で再び血塗れになった━━。



「ひっ.......ゔぉぇぇぇっ......!」



 ジョボジョボ......。



 大葉息子は色々な許容範囲を超えたのか口からはゲロと股からアンモニア臭いものを漏らしていた━━。



「ゔぉぇっ.......ゲホッ......く......狂ってやがる......」


「高校生にもなって両方から漏らすなよ汚いなぁ、狂ってるのはお前の膀胱と胃だろ。さて......どっちを先におうちコ○プしようかなぁ?」


「嫌だ......死゛に゛た゛く゛な゛い゛! な゛ん゛て゛も゛す゛る゛か゛ら゛! く゛ぉ゛っ......!」



 俺は大葉息子の頬を思いっきり掴む━━。



 グチュッ......!



「か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!」



 ヤツの口の皮が抉れて歯が肉を貫通して外に見えるくらい強く握りしめた━━。



「囀るなよ......反省してても殺す、命乞いしてても殺す、償いをされても殺す......お前には死という選択肢以外ねーんだよ。俺はあの時震えるほどの絶望を味わわせて貰ったんだ......ポイント還元分も含めてヤ○ダ電機よりキッチリサービスさせて貰うからな━━」


「ぼふぇっ......! たすけ......」



 ドスッ━━!



 俺は手を離しヤツの後頭部を寝ている台に叩きつける。

 そして手についたヤツの唾液と血をポケットから取り出したハンカチで拭って次の準備に入ろうとしていた━━。

 





「......ま......真央......」

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