第57話 しょうもない正体


 俺は機械の影に逃げ込んだ隙に工場の外へバリアを生成し外界と工場を遮断する━━。



「待てっ!」



 大葉栄一が俺を追いかけて機械の影にやってきた瞬間━━。



「よっ! 待ってたよバカ息子」


「っ......! ぐぁっ......!」



 俺は左手で奴の首根っこを掴んで宙に持ち上げ、右手から刀を生成して大葉栄一の首元に刀の切先を突き付ける━━。



「......お前......やっぱり化け物か......! そんなものを身体から......」


「異世界ファンタジーみたいでかっこいいだろ? コレはお前を刀剣○舞するために作ったんだ━━」


「ふざけるな......本当の正体を教え......ぐおぉっ......!」



 俺は更に左手に力を入れて首を絞める━━。



「そうグズるなよ、そのネタバラシはCMの後にしてやるから大人しく待ってろ。でないと君の首がデュラハン・・・・・になるぞ━━」


「うっ......かはっ......ぐるじ......」


 俺は首根っこを掴み首元に刀を当てながら機械の陰から広場に出た━━。



*      *      *



「栄一、明星をやっ━━」







「残念だったね、アンタの息子はこのチュールを突きつけたおかげで子犬より大人しくなったよ」


「アイラ君......!」


「お前っ......!」



 息子の首を掴んで刀を突きつけている俺を大葉父は悔しそうに見ていると、隣の手下が万季のこめかみに銃を強く突きつけて脅しを掛けてくる。



「貴様ぁ......栄一君を少しでも傷つけてみろ、この女を殺すぞ━━」



 カチャッ......。



「うぅっ......」


「おいおいそんな豆鉄砲で僕を脅してるのか? もしソイツでそこのヒロインを撃つならこっちのリ○ゴちゃんを性別不明の遺体にするぞ」


「相変わらず威勢だけは良いな......銃も持ってないお前1人にこの状況で何が出来る!」


「ふっ......僕がなんの考えも無しに1人で来たと思ってるなら本当におめでたいヤツだ。もう出てきて良いよ、君の事を昔堪能しようとしてた変態親父が解体されるシーンがそろそろやってくる━━」





 カチャッ......。




「っ......!」


「アイラ......ワタシは何話振りの登場かナ?」


「さあな、それは君のファンにでも聞いてくれ」



 俺の合図と共にヤツらの背後から登場したのは二丁のサブマシンガンを大葉父と手下の後頭部にそれぞれ突きつけたメイド姿の月野レイヤンデレだった━━。



「フフッ.....とりあえず2人とも動かないことネ、動いた瞬間にワタシと同じ存在にしてあげル━━」



*       *      *



「さて、形成逆転だな━━」



 今工場内の状況は俺が大葉息子を持ち上げ、大葉父と人質を取っている男はレイに銃を突き付けられて身動きが取れなくなっていた━━。



「コイツいつの間に......! どうやってここを......!」


レイってのは気がついた時には背後に居るってもんさ。それと下手に動くなよ? 僕と違ってその人は自分の気に入らない男に容赦無いんだ━━」


「.......アイラ、ワタシ銃撃ったこと無いけど大丈夫かナ?」


「大丈夫さその身体は僕の分身で出来てるんだ、エイム補正は高めに設定してある。というか後頭部に銃口を当ててるならエイム自体要らないと思うよ━━」


「ソウ......なら安心ダネ」



 レイは改めて両手に持った銃をヤツらへ向けると大葉父は悔しそうに下を向いた━━。



「クソッ......まさか味方が居たとは......!」


「備えあれば憂いなしだからね。君達程度僕1人で簡単にお惣菜に出来るんだが......そこのメイドが昔アンタに少し関わっててさ、アンタが死ぬ前に顔を見ておきたかったんだと━━」


「そういうコト。ワタシはこの人に売られる予定だったんだよネ.......しかも赤ちゃんプレイ強要とか吐き気しかしないけどアイラが望むならこの後家で着替えてピーーーーーーーーーーーーーッ━━」


「レイ、それ以上は色々な方面から怒られるからセンシティブな発言はやめて。とにかくだ......分かったら美少女をその汚い腕毛からさっさと解放しろ、さもないとウチの狂犬メイドが君達に風穴あけてフレン○クルーラーにするぞ」


「くっ......! 分かった......離すから息子をこっちに渡してくれ! 頼む!」


「なら先に万季さんをこっちに渡せ、これにおいて交渉の余地は無い━━」


「分かった......解放してやれ......」


「し、しかし......!」


「言う通りにしろ! お前はさっきの惨劇を見てないから言えるんだ! 何故あの男が大量の血で真っ赤に染まっているのかを......!」


「うっ......クソッ......!」


「レイ、銃口をそいつらに向けながら万季さんとこっちに来てくれ」


「オーケーアイラ」



 男から解放されると万季は震えながらレイと俺の方に向かって歩き、俺の目の前まで来ると途轍もない恐怖から解放された所為か目にいっぱい涙を浮かべて顔を手で覆った━━。



「アイラ君......本当ごめんなさい......!」


「その涙はウ○娘シーズン3最終話が放送されるまでとっておくんだね」


「え......? うん......それよりアイラ君......あの......えっと......」


「......レイ、彼女と一緒に向こうに行って2人でお茶でもしてて」



 万季と話したいのは山々だが今は構ってる暇は無い━━。



「分かっタ......彼女? この子アイラの彼女ナノ? ねぇどう言うコト? ワタシが居るのにそれってどう言うコト? やっぱりここでこの女始末したほうがいいのカナ? ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇネェネェネェネェネェネェネェネェ━━」


「言葉のアヤだよ! Sheの方だから! 日本語って難しいなオイ!」


「ふーン......ねぇアナタ、本当に違うノ?」



 カチャッ......。



 レイは万季をマジマジと覗き込みながら万季の額に銃口を突き付ける━━。



「ひっ! ち......違います......! アイラ君は私には勿体無い人です......」


「ソウ......いい子ネ」


「そんな物騒なモノ突きつけられて平然と答えられる人間なんてリコ○ス・リコイルの連中くらいだろ......」


「フフッ......じゃあアイラ、これが終わったら家であなたの銃口をワタシに......」


「オヤジみたいな下ネタぶっこむのやめてくれ......。それよりアレを頼んだよ」


「......分かっタ......ごめんね可愛い子ちゃん少し眠ってネ━━」



 ドスッ......。



「うっ......」



 レイが万季を気絶させて機械の陰に寝かせたのを確認した俺は再び大葉父達の方を向いた━━。



「......女は解放したんだ、早く栄一をこっちに渡してくれ」


「ああいいとも。僕もコイツの体臭を間近で嗅ぐ事に限界を感じていたんだ、ほらよっ━━」



 ズバッ━━!


 ドスッ━━!



「ウ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ━━!」



 俺は大葉息子の両足首を刀で切断し、後ろから蹴りを入れてその場にぶっ倒した。


「栄一ぃぃぃっ!」


「さすがダーリン、容赦ナイ......」


「そこからハイハイしながら親父の所まで行けよデカい赤ちゃん。パパが離乳食作って待ってるぞ」


「親父ぃ......いてぇ......いてぇよぉ......うぅっ.....!」


「なんて事を......! 約束が違うじゃないかっ!」



 大葉父は息子に駆け寄り肩を抱こうとするが、体格が違いすぎるため持ち上げることが出来ずにいた。

 そして大葉父は必死な顔で俺が今やった行動に対して訴える━━。



「いつそんな約束した? 頭から読み返してみなよ、無傷で返すなんて一言も書いてないから━━」


「貴様ぁ......栄一しっかりしろっ!」


「クソッ! よくも栄一君を!」



 男が怒りで震えながら銃を俺に突きつける━━。



「 度胸だけは一丁前だな......《ヴァジュリクスカノン》」



 コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛ッ......!



 俺の背後から現れた8つの黒いモヤからその一つ一つから巨大な漆黒の銃身が生成され姿を見せる。


 その銃口は全て大葉父とその手下に向けられた━━。



「な......なんなんだそれは......」


「ケバケバしくて良いだろ? コイツは僕お手製のレールガンでね、売りは今流行りのオーガニック素材で出来てる事さ。普通は一発撃つのにすら大量の電力ヴィーガンが必要だけど僕にかかればどっかの都市に住む超能力美少女より連射出来る━━」


「そ、そんなものハッタリだ! どんな手品か知らんが撃てるわけ━━っ」



 ス゛ヒ゛ャ゛ァ゛ァ゛ン゛ッ━━!



 8つある銃身の内の1つから放った弾丸は衝撃波を発生させながら大きな機械を一発で木っ端微塵にし、工場の壁にバカデカい穴を開けて生成したバリアに吸収された。


 俺とレイ以外の全員は工場の壁に開いた穴を固まった表情で凝視し、撃った銃身からは電光と共にビリビリと音を立ていた━━。



「次は当てるよ、僕は最近スプラ○ゥーンを始めたからエイムには自信があるんだ。アンタらの身体なんて簡単に赤インク・・・・に出来る━━」


「なっ......こ......こんなの聞いてませんよ大葉さん......!」


「そんなバカな......クソッ! 大葉さん逃げてください! こうなったらやぶれかぶれだ......アイツに一発当ててなんとか突破口を作ってやる! 死ねぇっ!」


「アイラ危なイッ━━!」



 男が銃の引き金に指を掛けた瞬間━━。




 ス゛ヒ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ン゛ッ━━!



「ク゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!」



 俺はレールガンで奴の銃を肩ごと撃ち抜いて塵にし、再びけたたましい轟音が工場内に響き渡った。


 そのケガで脂汗を垂れ流す男の元へ俺は瞬間移動して間合いを詰める━━。



「次は当てるって言ったのに......銃どころかペンすら握れなくなったじゃん。次はどうする? ホスト狂いにでもなって国に助けを求めるのか? それならもう片方も身体から取り外して電話出来ないようにしないとな━━」


「やめ......!」



 ズバァッ......!



「ウ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ......!」



 俺は反対側の腕を刀で切断するとその切断スピードの速さによって腕は彼方へすっ飛んでいった━━。



「うぐぁ......! 俺の......腕がぁぁ......!」


「その身体なら今後サッカーやってもハンドせずに済むね。でもキーパーだけはやめた方が良い、その腕じゃ確実にPK決められてA級戦犯扱いだ━━」


「くっ......こんな事になるとは想定外だ。き......君を殺すのはもう辞めるよ降参だ! 私達は君に一切手出しはしない! なんなら今からでも我々の専属ボディガードにして金でも女でも望むものをなんでも叶えてやる! だからこの場は鞘を収めてくれ! 頼む......この通りだ!」



 大葉父は必死な顔で頭を擦り付け俺に土下座をかます━━。


 さっきまで俺を殺す勢いで偉そうにしてた人間にこうも態度をクルリンパされると笑いしか込み上げてこないな━━。



「専属って......アンタのコンドーム・・・・・になれってのか? 笑わせんな、そんなに性病が怖いならサ○ミかオ○モトに頼るんだな。しかしさっきまで殺そうとしてた高校生相手に土下座とは......政治家ってのは自分の保身や命のためなら恥も外聞も捨ててこんな事も出来るんだな。蛆虫の方がもう少しプライドあるよ」


「くっ......」


「それにこんな事件が起きなくてもハナから君達全員始末するつもりだったんだ......それが少し早くなっただけの事なんだよ。僕にとってはね━━」


「なんだと......」


「そんな悲しい顔するなって、みんな一緒に揃ってチャーシューになるんだから寂しくないだろ? それより何故アンタが大葉の手下なのか本人の口から直接説明を聞きたいよ......なぁ━━











 校長センセ......?」



 万季に銃を突きつけ両腕を失った人間、ソイツは午前中俺の親父に皮肉を言われていた高校で1番偉い馬鹿だった━━。


*      *      *


くじけより。

近況ノートにも書きましたがインフルエンザになりました。+゚(゚´Д`゚)゚+。

アイラ君より先に私が異世界に転生しそうなので更新が遅れます。

皆さんも体調管理とマッチングアプリのサクラ男にはお気をつけください_:(´ཀ`」 ∠):

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