第50話 鷲野の事情聴取
「とりあえず二人に話を聞きながら現場を確認だ。東海林ちゃんは月野さんの方を、俺は明星君に少しだけ話を聞くよ」
「わかりました。それとあの湖にある遺体を岸まで持ってこないとですね......」
別の警察官がボートが手配し遺体を持ってくる間に俺達はその場で軽い事情聴取を受けることになった━━。
「とりあえずここは警察署じゃないから軽い事情聴取になるけど悪いね。ここに来るまでの間とここで一体何があったかを話してくれるかな? まさかあの美人と二人で夜空見ながらゆる○ャンしに来た訳じゃないだろう? もしそうなら羨ましいぞチクショウ......!」
はぁ......相変わらず軽口を叩くよなこのオジサン。
こういう風にすぐ人を煽る言動をする人間はロクでも無い人間しか居ない。
絶対に......絶対にだっ━━!
「しませんよそんな事......車にはタープもランタンも、メガネかけて酔っ払ってる糸目の美人先生だって居ないんですから━━」
「まあ確かにな、それで今日2人に何があったんだ?」
「僕は放課後家に帰ってたら突然後ろから襲われて気絶させられました。次に目を覚ましたら車の中で隣には月野社長が縛られた状態で寝てて......僕は寝たフリをしながら運転席を見たんです。そしたら海原社長が運転しててそれを確認した直後に社長が突然叫び声を上げて大木に突っ込んでまた意識を失いました━━」
今の話はあながち
あの転移魔法した場所から先はNシステムも無いからワープしたなんて証拠も残らない......まあ仮にワープがバレても警察には説明不可能な現象だからアレだが━━。
「そうか......それでその後目を覚まして車の中から二人で外に出たんだね? 車の外にあった足跡は確かに2つだけだったのは確認したから間違いないよな」
「その通りです。それでたまたま湖を見たら月明かりに照らされて奥に変なのが浮いてない? って2人で話してて目を凝らしたら人影のようなモノが見えて━━」
「......それで月野さんが通報したと」
「ええ、そんなとこです」
「ふーん、運転手が居たのに2人分の足跡しかないのはどう考えても不自然なんだが......そこはどう思う?」
「それは僕に言われても分かりませんよ。運転手が
「面白い事を言うなぁ......そう言えばこの車に乗っていたのは海原という人間1人だけだったのか?」
「いえ、僕が見た時は息子の海原清史楼も助手席に乗ってました」
「......ん? 君は後ろ姿だけで息子だと分かったのか?」
「ええ、今日実は体力テストで彼とバチバチにやり合っちゃって......すごい印象に残ってたんですよ彼の事が。それの決定打になったのはぶつかる寸前の叫び声で分かりました」
「なるほど......君と月野さんはその二人に何か恨みでも買われていたのか? 二人とも無理やり誘拐するなんてよっぽどだろ......」
「それは......話が長くなりますが、この間海原社長に僕達は呼び出されて事務所の統合を持ちかけられたんです。その時の海原社長にムカついて散々煽った挙句、統合の話を断ったのでもしかすると......です。それに息子の方は僕がハンドボールの球をぶつけちゃって保健室送りにしちゃったし━━」
「ふふっ、なかなかやるな。まぁ明星君の煽り文句は人の逆鱗に触れそうだしアッチの気持ちも少しだけ分かる気がするよ。しかしそんな事があったとはねぇ......この事件の前に君は襲われたりしなかったのか?」
「......特にそう言った事は━━」
「そうか......。でもおかしいなぁ昨日
来ると思ったよその質問━━。
だが確かにあそこにはカメラがあったがその路地から先は防犯カメラが無いのは確認済みだ。
「はぁ、確かに見ましたけど僕を追い抜いて何処かに走って行きましたね。逃○中かリア○鬼ごっこのロケでもしてるのかと思いましたよ」
「ははっ......なら君は襲われていないんだな? でもおかしいんだよ、5人はなぜかその防犯カメラを最後にパッタリと姿を眩ましている。しかも捜索願いも出されていない......変だと思わないか? 君に会った直後にまるで
「魔法か......そりゃ大変だ。めちゃオジはもしかしてアレですか? 僕が魔法を使って彼らを異世界転移させたとでも思ってるんですか?」
「ああ、君が現代人をすぐ異世界に召喚させたがるどこぞの女神様の可能性があると俺は思ってるよ。但しおっぱいも証拠もゼロだがな━━」
「冗談キツイなぁ......残念ながら僕には股間に立派なロ○ギヌスの槍がぶら下がってるんで神聖な女神じゃないですよ」
鷲野刑事は俺の言葉に対してさっきまでの顔とは打って変わって真剣な眼差しになる━━。
「オジサンが一つ良い事を教えてやろう、自分で立派っていうのは辞めた方が良い......特に女性に言うのはな。期待させておいていざ小さかった時にゴミを見るような目つきで見られるんだ━━」
何だこのおっさん......真剣に何か言うのかと思ったらコレとかやっぱり調子が崩れるな━━。
「オジサンの不要な体験談本当にありがとうございます。殺人事件からSMクラブに話が逸れたんですみませんが元に戻してもらっていいですか?」
「ああすまん、君相手だとどうしても余分な事を話したくなるんだ......オジサンの悪い癖だよな。では話を戻そう、あの湖の上で亡くなってるあの2人以外に何か人影とか見なかったか?」
「僕は気絶していたので起きた頃には何も......月野社長も見ていないと思います」
「そうか、まぁそうだよな。ただなぁ......遠くから遺体を見る限りあの殺され方じゃ生きたまま皮を捲られてるし、頭も爆散したように見える。その時に発生した音や彼らの悲鳴が聞こえて目が覚めなかったのかなと思ってね」
「何も聞こえませんでしたね。いてててて.....」
俺はもう話を終わらせて家に帰りたかったので痛がるフリを再開した━━。
「ああすまん怪我してたんだったな、今日はこれくらいにして今度また話を聞かせてくれ。向こうも話は終わってるみたいだし2人ともパトカーで送って貰うように手配するよ」
「ありがとうございます」
「それと最後に......いろいろ調べたら黒羽真央を語る人間が復讐する次のターゲット達が絞れたよ」
「へぇ......さすが刑事さん。"達"って事は複数いるんですね?」
「ああ、残りのターゲットは最低でも2人だ......そして黒羽が何故彼らを殺しまわっているのかと言う理由もな━━」
「そうですか......それはどんな?」
「壮絶なイジメだよ......実は富田守が持っていたスマホの隠しフォルダに動画が残されていてな、そこに映っていた5人の内今回含めて3人が見事に殺されている。まあ正直俺も黒羽真央の立場なら確実にぶっ殺してる胸糞悪い映像だったんだがな━━。まあ君には関係無いよな......」
その映像は俺が敢えて富田守のスマホの隠しフォルダに残していた映像だ。
復讐の人数が残り3人か2人になった時、奴らのバックにいる大人達が警察からリークされた動画情報を基にいろいろ尻尾を出してくれると期待してデータの階層深くまで隠し、時間差で警察が見つけるようにしていたのだ━━。
「.....まあ確かに僕の戸籍上では一応繋がっているけど実際には会った事もない人の事を言われてもですね━━」
「まあそうだよな悪い悪い。それとこれも君に言っておく......俺は警察官という立場上そんなクソ野郎共でも殺される可能性があるなら"一応"守らないといけない。皮肉な事だけどな━━」
「はぁ......まあ頑張ってください。では僕からも最後に一つ、さっきのおち○ちん体験談って.....もしかして東海林さんにそう思われたんですか? だとしたら2人はラブラブだなぁ」
「ふっ......あんまりオジサンを揶揄うなよ、俺は会社の部下に恋愛感情を抱くほど女に飢えてないんだ。じゃあなイケメン」
鷲野刑事はキリッとした顔で俺から目を逸らしニヤリと笑う、その顔はやはり誰かに似ている━━。
少し考え込んでいると鷲野刑事に上司以上の感情を"所持"していると俺が勝手に噂してる
「捜査の協力ありがとうね明星君。あのオジサンまた周りくどい聞き方してきたでしょ? ホントごめんね......」
「いつも通りなんで大丈夫です。そんな事より東海林さんこそ周りくどいアピールはやめて直接イケオジに胸の内を伝えた方がいいと思いますよ?」
「はひっ!? な......何を言ってるのよ君は......! 大人を揶揄うんじゃありません!」
「いや、僕は胸の内って言っただけで別に好きとかそう言う事を伝えろって言った訳じゃないですけど━━」
「#☆♪○*〒々〆△×<#%°〜〜!!」
東海林さんはどこの言語か分からない悲鳴をあげてめちゃめちゃ顔を真っ赤にしながらアワアワとしていた。
この人マジでイケオジの事が好きなんか......無駄にモテやがってチクショウ......!
ちょっとだけ鷲野刑事にイラついていると月野社長が俺の所へ戻ってきた━━。
「そっちも終わったみたいね、じゃあ刑事さんのお言葉に甘えてパトカーに乗せてもらいましょうか......って明星君なんかイライラしてる?」
「少しだけ.....なんか程度の低い恋愛リアリティショーを観た気分になってました。あの2人この後盛り上がった勢いでパトカーのままホテル行って懲戒処分されてくんないかなぁ〜」
「......一体何を言ってるの?」
俺と月野社長はパトカーでそれぞれの家に送って貰った━━。
* * *
俺が玄関の前に立つと部屋の明かりは点いておりテレビの声も少し漏れて外に聞こえていた。
恐らく涼さんが1人で寂しく観ているのだろう......ちょっと申し訳ないなと思いながら玄関の扉を開けた━━。
「ただいまぁ。遅くなってごめん涼さん、1人で寂しかったでしょ? 今からご飯でも━━」
「おにーちゃん遅いよぉ! やっぱり苦戦してたんだぁ♡よわよわだもんね〜♡。ああすまない! おかえりなさい」
「あ、ああ......見た目ロリで中身19歳の二重人格もここまで来ると逆に癖になってきたよ。それより涼さん、残念なお知らせなんだけどレイはもう......」
涼さんさっき起きた事実をを喋ろうとした瞬間背中に走る悪寒を感じた━━。
「おかえりなさい遅かったのネ。ご飯出来てるから食べてネアイラ♡」
そこにはまたメイド服を着たルックスの良さとは対照的に顔色の悪い女がふわふわと宙に浮いていた......。
「おおおおお前なんで居るんだよ! 退場から再登場まで一話も我慢できなかったんか!? B級感動話に心動かされた方々に一人一人謝罪行脚しろよ馬鹿野郎! 死ねっ! いやもうコイツ死んでたかチクショウッ!」
「ふふふっ......アイラ面白いネ。今夜は寝かさないヨ? さっき言った通り復讐が終わったらアイラとイチャイチャしたいってワタシ言ってたシ━━」
「ふざけんな! お前はあの湖行ってもう一回眠りについてこい! ていうかそれならあの時の『そろそろ行くね......』は一体なんだったんだよ!」
「あれは涼ちゃんがそろそろお腹すかしてるかなぁ? と思って夕飯を作るために帰らないとと思って言っただケ」
「あ......そゆことね......」
レイの『そろそろ行くね』は『俺の家に帰るね』の意味だと言うことが分かり、改めて日本語の伝える力と聞く力の難しさを知った━━。
「それよりお姉ちゃんと随分長く居たみたいだけどワタシが居るのにドウシテ? ねぇドウシテ? ドウシテ? ドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテ? やっぱりアイラは金縛りで拘束して監禁しないとダメかなぁ......その大っきいロン○ヌスの槍も縛り付けないとネ━━」
「レイ......俺とおんなじ事言うのやめてくれ......。なんか気恥ずかしいから......」
そして長い夜はまだまだ続きそうな気配が俺の頭を何度もよぎった━━。
* * *
作者より
お陰様で50話を迎えることが出来ました!
ここまでお読み頂き本当ありがとうございますヽ(৹ ˙꒳˙ )ㅅ( ˙꒳˙ ৹)ノ
これからもよろしくお願いします!
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