第36話 取調室にて


「さて、シーフード○ードル食いながらネト○リで俺の可愛いはもうすぐ賞○期限でも見るか。これに出てる津田健○郎が好きなんだよなぁ......」


 俺はシーフード以外認めない、それが俺の流儀だ。

 あ、カレーも良いな......いや待てチ○トマトの捨てがたい.....だがにんにく豚骨もいいな......いややっぱり定番の醤油か?



 ブッブー......ブッブー......。



「チッ......神が創りし麺類を作ってるこのクソ忙しい時に誰だ全く! はいもしもし!? ラーメン伸びちまうから用件は手短にしてくれよ!」


『東海林です! 殺人事件! 早く来て!』


「急かしすぎてなんか5・7・5になってる! それで場所はどこだ?」


『署内です! 1人は警官! 五味さんです!』


「なんだ五味か......ラーメン食うしドラマ見たいから今回俺はパス。ていうか五味が死んだなら上から引っ張られてくる刑事がどうせ担当するだろ」


『気持ちは分かりますけど私情を挟まないで下さい。とにかく早く来てくださいね!』



 ヤツが死んだか━━。


 俺はのんびり・・・・ラーメンを食べ終えた後、再びネクタイをゆっくり・・・・締めて家を出た━━。



*      *      *



「あ! 遅いですよ鷲野さん!」


「仕方ねぇだろ? 日清系ラーメン食ってたんだから。それで現場は?」


「二郎系みたいに言わないで下さい......場所は第二取調室です。遺体には毒物が付いてるので触らないでくださいね」



 俺と東海林は現場の取調室に入った━━。



「うぉ......こりゃひでぇな......飯食った後に見るもんじゃねぇよ」



 俺の視界に入ったのは長い髪の毛だけが壁際に置かれその他は挽肉になってる人間のようなモノと、体液が掛かった箇所がブヨブヨになっている五味の遺体だった。



「にしてもひでぇ臭いだ......それで被害者は五味と誰なんだ。まさか......?」


「被害者は秋山恭子26歳、あの高校の教師です━━」


「やっぱりか......それで今回黒羽真央との関連は?」


「それがM.Kというメッセージは今回ありません。なので関連しないとは思いますがM.Kファントムの件と同様に不自然な点が幾つかあります」


「不自然な点? 挽肉とホルマリン漬けとそのダサい捜査名以外に何かあるのか?」


「言っときますけど捜査名がダサいのは私じゃなくて本部の所為ですからね? それといくら今回の被害者に興味無いからって茶化さないでくださいよ」


「いやいや興味あるよ、人気ViTuberとアイドルの熱愛疑惑並みに興味ある」


「心底どうでも良い話題と一緒のレベルって事じゃないですか!」


「そんな事ないさ。あそうだ、チキンを電子レンジに入れっぱなしだった......冷めちゃうから一旦家帰るわ」


「そんなモノ捜査が終わってから再加熱すれば良いでしょ! 全く......話を戻しますけど不自然な点はまず秋山恭子の方です。彼女の遺体を今調べてますが現段階で臓器が心臓と肺以外ありませんでした」


「ん? 元から無いならこの女はどうやってここまで来たんだ......?」


「全く分かりません。彼女を見た警察官が言うには普通に歩いて出頭したとの事でとても臓器が無くなってる人間には見えなかったと━━」


「なるほどね......それで出頭の内容は?」


「内容は最近起きていた臓器が抜き取られている殺人事件の黒幕が彼女だそうです。彼女はその道のプロに頼んで殺させていたとの事で、それを詳しく取り調べしようとしていた五味警察官がこんな形に━━」


「あの事件か......実際に殺したプロは今行方不明だしな。にしても教師がそんな副業に手を出してるとはね......どうせ飛美侠道会とでも繋がってたんだろ」


「仰る通りで彼女実はその組のトップと愛人関係にあったそうです。そして五味警察官は━━」


「その組の女だと知っていたんだろ?」


「その通りです。でも何故そう思ったんですか?」


「コイツは警察のとあるお偉いさんから息のかかった男でな、以前からそのお偉いさんと侠道会の繋がりは噂されていてんだが......その橋渡しをしてたと思われる1人がこの男だ━━」



 俺がコイツを嫌いな理由の一つはそれだ......。

 そしてコイツのバックにいる連中に俺は━━。



「所謂汚職警察官ですか......もし本当ならとんでもない人ですね。しかしそれだとこの事件の謎は更に深まります......2人が繋がっていたとしたらその関係を壊すような事をわざわざ署内でやりませんよね━━」


「そうなんだよ、秋山がのこのこ出頭してきた事もここで2人とも死んだ事も両方おかしい。とりあえず整理しよう......まず最初に死んだのは秋山恭子の方だな、ヤツの爆散した体液が五味の服に付いてるしその体液を被った事によって毒物も付着し致命傷になったと考えられる」


「そうですね。そしてこの刺激臭が取調室から発生する直前に五味警察官は外出しています」


「外出? 一体どこに?」


「近くの配送センターです。そこで飛美侠道会宛にクール便で荷物を送ったとの事ですがその中身までは分かりませんでした」


「そうか......多分碌でもないモノだろうな。ここの取り調べ室にはカメラや録音しているものは無いんだろ?」


「はい、なので今の所手掛かりはこれぐらいですね。しかし橋渡しの男と組長の愛人が殺し合うなんて......お互いに宣戦布告でもしているように感じます」


「ああ、今回の件で決定打では無いにせよ警察とヤクザの関係に楔が打ち込まれた......俺としちゃ両方潰れてくれた方が良いけどこの先は荒れそうだな━━」


「そうですね......」


「しかし説明不可能な点が余りにも多い。爆発物らしき物は無いのに爆散した臓器の無い遺体、そして遺体の中から飛び出たと思われる劇物。さてどう見る?」


「即席で今考えれば秋山が予め薬品を体内に所持してて何らかの方法で爆発させて自殺を図り、その液体を浴びた五味は死んだってことになりますが......」


「だがそれだと臓器が無いことを説明するのに矛盾が生じるよな━━」


「そうです。鷲野さんの中で答えは出てますか?」


「ああ......」


「教えてください」












「サッパリわからない━━」


「はい?」


「全く分からない。もう家に帰ってドラマ見たい」


「はぁ......ホントやる気ないですね今回は」


「ああそうだよ。そろそろ担当刑事が来そうだし俺達は帰ろうぜ」


「分かりました。それより鷲野さんこの後暇ですか?」


「ああ暇だけど?」


「じゃあそこのバーで私の愚痴に付き合ってくださいよぉ」



 やる気が無いわけでは無い......むしろ五味が死んだことには物凄い関心があるし私情を挟んで言ってしまえば始末してくれた人間には感謝すらしたかった。

 奴とその上の連中さえ居なければ今頃は━━。



「鷲野さん? どうしました?」


「何でも無い......ったくわかったよじゃあ行くぞー」


「やったー!」



 この事件......俺の勘が正しければ怪盗○ッド以上に変装が上手い人間が2人に化けて双方を殺してそれぞれの組織に喧嘩を売ったとしか考えられない......。

 俺達は今回担当にならないだろうがこの事件も黒羽真央が絶対何処かで関わっているはずだ━━。



*      *      *



「ふぅー食った食った。鰹のタタキって久々に食べると美味しいなぁ。さて買ってきたチ○コファッションとココナツチ○コレート食べるか!」


 夕飯とミ○ドを食べ終えた俺は何かの気配を再び感じながらお風呂に入り、その他の事を一通り済ませてベッドに入った。



「二夜連続で金縛りに遭うのはごめんだ、四方に塩は盛ったし味の素も枕元に装備したし今度こそ大丈夫だろ!」



 俺は自分に何度もそう言い聞かせて強気になれたところで瞼を閉じた。

 だがこの後明星亜依羅になって以来最強の敵との戦いが始まってしまう事になるとはこの時はまだ知る由も無かった━━。



「オかエりナさイ......」

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