第28話 童貞アイドル
《1年D組の明星亜依羅君。至急生徒指導室に来てください》
「アイラまた呼び出されてるぞ。お前が宗教施設破壊した件で呼び出されてるんじゃねーのか?」
ふざけた態度で司が俺を茶化したが実際破壊してるので笑えない冗談だ━━。
「ははっ......あんな事が出来たらゆーちんの下僕なんてやってないよ」
「まぁそれもそうだな! そういえばこの前来てた刑事の1人めっちゃ美人だったよな......今回もナンパするなよ?」
「既に前回してるみたいに言うな」
司の軽薄な言葉に周りにいた女子たちは怒りを露わにしていた。
「そうだよ亜門君! アイラ君はそんな事しないから! 亜門君と違ってアイラ君は女子全員のアイドルとしてみんな暗黙の停戦協定結んでるくらい高貴な存在なんだよ?」
「君○届けの風○君みたいになってる。彼氏にしたい漫画キャラクターランキング第1位と同じ扱いなんて童貞の僕には恐れ多いよ......」
「わがまま言うなって......俺なんて似てるって言われたキャラが磯野カ○オだぞ!? この世界の何処に花沢さん居るんだよ!」
「いや......司には━━」
俺はそばに来ていた龍崎さんに一瞬目を向けると龍崎さんは指を鳴らしながら怖い笑顔を見せた。
「アイラくーん、なんでこっち見るのかな......? 私不動産屋の娘じゃないけど?」
「おっと......それはごめんよ花沢さん━━」
「おっと......なかなか挑発的だね、最期に言い残すことはあるかな? ふふふ......」
ポキポキッ......
「ぼ.......僕は中島に呼び出されてるから行ってくる!」
「アイラぁぁぁっ!」
俺は追いかける龍崎さんを振り切るようにダッシュで教室を後にした。
「あいつ......天国で中島とサッカーすることになるな━━」
* * *
「失礼しまーす」
「おっ、来たか二枚目君。まあ座って座って」
いつもの調子のイケオジ刑事と凛とした美人刑事を前に俺は用意された椅子に腰掛ける。
「それで今度は何を聞きたいんですか刑事さん?」
「ああ、土曜日に起きた宗教施設爆破事件についてなんだが......あの事件の被害者の1人が笛吹瑠衣子というここの生徒だったんだが君はその子を知ってるかい?」
来た......。
ここで下手に嘘を吐くとこのオッサンに見抜かれるな━━。
「はい知ってます。先週呼び出されて少し話をしました」
「一体どんな事を話したんだ?」
「内容はあの人の親がやってる宗教に入って広告塔をやらないかって話でした」
「ほぉ......それで君は了承したのか?」
「とりあえず話を聞きに今は
「そうか......なんで断ったか理由を教えてくれるかい? やっぱり信用できない教団だったから?」
「何を信じるかは己の自由ですから信仰を強制されるのは苦手で......あんな教祖や神を信じるくらいなら僕はコ○ン星の存在を信じますよ━━」
「確かに小倉○子もコリ○星は千葉の茂原にあるって言ってたから神よりもよっぽど具体的だもんな」
「その通りです。週末茂原にコ○ン星探しに行こうかなぁ」
「そりゃあ良い。でもな濱口君......君がその小倉○子と話をした翌日あの施設は爆発して彼女は亡くなってるんだ。富田君の時もそうだが君が関わった数日後に何かが起きてる、これが俺には偶然と思えないんだよ━━」
「それじゃまるで僕が疫病神みたいな言い方ですね杉下さん」
「俺の名前は鷲野だよ......君は犯行が行われたとされる金曜日と土曜日にどこにいたか教えてくれるか?」
「金曜の放課後はまっすぐ家に帰ってそのまま家に居ましたし土曜日も終日家で引きこもってましたよ。そしたらテレビであんな騒動に━━」
これも嘘ではない、分身が家にずっといて俺は転移魔法であの施設にワープしたからマンションの防犯カメラに俺は映っていないからな━━。
「そうかありがとう、この前と同様に一応防犯カメラはチェックさせてもらうよ。それと多田井さんから聞いたが彼女の母親を説得して脱会させるなんて凄いなぁ......その上ジャストなタイミングで旅館のチケット渡す気遣いなんて普通出来ないよ━━」
「それはどうも。ストーカーの時といいタイミング良いねって最近周りに言われるんですよ」
「なるほど......でも凄いよなぁオジサンも見習いたいよ。まるで次の日にあの施設で何かが起きる事を
「はは......何が言いたいのか分かりませんが本当にたまたまですよ。ゆーちんには動画でお世話になってるからそのお礼を兼ねたものだし、僕は平和を愛する一般市民ですって」
「そかそか、また聞きたいことが出来たら教えてくれるかい?」
「ええもちろん、それじゃ失礼します」
俺は立ち上がり部屋の外に出ようとするが━━。
「ああそうだ忘れてた......悪いけどあと1点だけ教えてくれるかな」
「......なんでしょう」
「入信しないかと誘われるほど笛吹さんとは親しくなった間柄なのに、その子が残虐な方法で殺されても何故そんなにも平然といられるんだ?」
「へぇ......残虐な方法で殺されていたんですね、おっかない犯人だ。それに彼女とは別に親しくなかったですよ、僕より彼女と
「そうか......最後にこの事件の犯人についてどう思う? この2件は相当相手を憎んでる人間の犯行だと俺は思っているんだが参考程度に君の意見を聞かせてくれないか?」
「最後最後ってまたそれですか? これだから"めちゃオジ"は困っちゃいますよ。テレビで言ってた通りイカれた宇宙人か集団テロリストの仕業では? 人を殺して施設を破壊なんて普通の人間が出来る事じゃないですよ。それが例え刑事さんの言う通り"殺したいほど憎んでる"相手だとしても......」
「どうせ俺はめちゃオジだよ全く......とりあえず参考になったよありがとう今度こそ帰って良いよ。明星君も何か困ったことがあったらこの"めちゃオジ"の俺に言ってくれ」
「了解です鷲野さん。東海林さんもまたっ」
「うん、めちゃオジの屁理屈に付き合ってくれて助かったよ明星君。またよろしくね」
「お前までそれを言うか......!」
俺は部屋を出て教室へ戻った━━。
* * *
「ふぅ......アイツと話すと疲れるよ......」
俺はネクタイを解き椅子にだらりと腰を掛けた。
やっぱりアイツと対峙すると得体の知れない恐ろしさを本能で感じて疲れる━━。
「お疲れ様です鷲野さん。結局彼は口を滑らせなかったですね......」
「だな......俺が『残虐な方法で』って現場の人間しかまだ知らない情報を敢えて言っても知らない顔してたし簡単に油断しない奴なんだろう。そして殆ど動揺を見せない......あれが高校生とは恐れ入るよ」
「確かに。防犯カメラの映像も見て良いって言うくらいですからアリバイに相当自信がある事も間違い無いですしね」
「だろうな......だがヒントはくれた」
「ヒント......ですか?」
「ああ、殺された笛吹には恐らく彼の言う通り
「次に殺害される人物を特定できる━━」
「その通り、犯人を捕まえるよりまずそっちを優先した方が良いかもな」
「分かりました、生徒から聞き込みをして人物を絞っていきましょう」
東海林は教員に次の生徒を呼び出すお願いをするため部屋を出た。
「予想される被害者の特定か......仮に出来てもこの犯人を
* * *
放課後━━
「全く......なんだったのよあの刑事! 私は一生懸命やってたのに犯人に殺される筋合いなんて無いわ! あーイライラする......こうなったらアイラ君にLIZEして身も心も癒してもらおう━━」
『アイラくん学校お疲れ様! 先生とあんまりLIZEしてくれないから寂しくてこっちから送っちゃったw 暇だったら返事してね』
「これで良し......高校生相手なら楽勝ね。アイラ君は私が今まで出会った男の中でダントツのルックス......絶対に私の虜にしてやる━━」
私はアイラ君にLIZEを送信して返事を待った━━。
* * *
ピロンッ♪
「おっ、顔だけのアホ教師からだ......。富田・笛吹を連続で始末してるから次の生徒をあのオジサンに特定されるのは時間の問題かもしれない。であればこの"小○魔教師サ○コ"をスピンオフとして挟んでおくか......俺の童貞力が試されるな━━」
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