第23話 最後の晩餐


 集会の前日━━。



 俺はいつも通り学校に来てお昼を教室で食べようとしていた。


 さっきゆーちんから旅行先でお母さんとのツーショットのフォトが送られてきたので2人は旅行を堪能しているんだろう。

 その事にホッと一安心しているといつもの《亜門司うるさいヤツ》が俺の机にやってきた。


「あれ珍しいな!? 今日は由美休みなのか?」


「ああ、そうらしいね。たまには1人で弁当を食うのも悪く無いよ」



 そう言うと亜門はニヤリと笑う。



「いやいやそうはさせないぜ? ほら......後ろを見てみろよ」



 司が親指を後ろに向けるとクラスメイトたちがみんなお弁当を持っていた。



「なぁアイラ、オレ達と一緒に昼食おうぜ?」


「そうそう、アイラ君いっつも昼休み居なくなっちゃうから私達の避けてるのかなって不安だったんだよ?」



 クラスメイト達はそれぞれ口にするため俺は誤解を解くために適当な言葉を口にする。



「違う違うゆーちんとは動画の打ち合わせをしているだけだよ。ほら動画でも言ってるでしょ? 僕は下僕だって━━」


「あー確かに! アイラ君ってイジるのもイジられるのも上手いよね」


「なんかテクニシャンみたいな言い方されてる......。まあ良いや、じゃあみんなで食べよう」



 みんなでテーブルをくっつけて食べようとするが━━。



「イケメン君、ちょっと良い?」



 教室の外から笛吹瑠衣子今日の生贄が俺に声を掛けてきた。

 来ると思ってたよ......恐らくあの件だろう━━。



「みんなごめん、呼ばれちゃったからまた今度ね」



 みんな不満そうな声を口にするがうまくすり抜けて笛吹の元へ向かった。



「で、なんの用? 今からご飯食べるんだけど」


「ちょっと言い方冷たいよぉ? 今日のリハの時間を言いにきたのに.......とりあえず20時20分に例の施設に来てね。あとゆーちんの姿が見えないけど今日学校休みかな? お母さんとも全く連絡がつかないの......何か知ってる?」



 絶対俺に聞くと思ったよバカ女、知ってても教えるワケねーだろ。



「さぁな......俺はゆーちんの"スマホ"じゃないんだ、GPSアプリでいちいち居場所追ってないから知らないよ」


「そう、まあ明日来れば良いからまあいっか......。じゃあ今夜よろしくねぇ」


「うん、またね」



 まあお前に明日は来ないけどな。

 授業が終わったら準備を整えて向かうとするか━━。



*      *      *



大幸天照神宮たいこうてんしょうじんぐう施設内礼拝広場にて━━。



 私たちメンバーは《明星亜依羅イケメン君》が来る前に明日に向けて準備を整えていた。



「よし......明日の準備はこんなもんだろう。岡本、相模、洗礼室の方はどうだ?」


「問題ありません。幻覚剤と例のモノも既に入荷済みで装置の方も異常ありません」


「そうか......なら良い。瑠衣子、もうそろそろ時間だがあの色男は今夜本当に来るのか?」


「心配ないよぉ、ちゃんと伝えてあるから。それにこれから彼に施す事も全く勘付かれてないし━━」



 私のセリフに教祖パパがニヤリと笑う。

 私もこの後起きる事を想像するとワクワクを止められなかった━━。



「よしよし、彼を洗脳して私の思い通りに動かせば若年層の女子人気は確実だ。そして彼は裏でお前達に口外出来ない事をされて更に言いなりになる......あの綺麗すぎる顔を犯せるなら文句ないだろ?」


「ええ......初めて見た時からゾクゾクしてますよ。あの整いすぎた容姿を汗と涙でグシャグシャに出来るなら何も文句ありません」



 岡本の言葉に私も同じ意見だ。

 私は昔から綺麗なものを傷つけるのが大好きだった......歪んでいると言われればそれまでだが私にとってはそれも大切な個性だ。

 

 そして人を屈辱に満ちた顔にさせる事も━━。



「自殺したアイツみたいにイケメン君も無理矢理女装させようかな? 似合いそうだし楽しみだぁ」



 転校初日から狙っていたあの超絶イケメン君は今日で私達のものになる。

 こんなにも待ち遠しいのは生まれて初めてだった━━。



「そろそろ約束の時刻だ......アイラ君は━━」







 ガタンッ━━!



「なんだっ!!」



 何か大きな音と共に施設内の照明は全て落ち、礼拝広場は真っ暗になった。



「停電か!? 5分もすれば非常用電源が入るので修吾様と瑠衣子様は落ちつ━━」



 バキッ.....!



「うぎゃぁぁぁっ......!」


「どうした相模! クソッ......暗くて何も━━」



 ドスッ.....!



「うぉぁぁっ......!」


「なんだ! 何が起こっている! 岡本! 一体誰━━」



 ゴキッ.....!



「ぐぇっ.....!」



「何!? 一体なんなの!? 岡本! パパ! みんな返事を......!」



 そう叫ぶ私の目の前に背が高い人の気配を感じ足を止めた。

 一瞬パパかと思ったがその気配は恐ろしく冷たく、まるで氷のようなオーラを放っている気がした。



「......こんばんは笛吹さん。時間通り君達に解散請求をしに来たよ」


「へ? 一体何を━━」



 ドスッ━━!



*      *      *



「んん......」


「やあ諸君、お目覚めかな?」


「これは一体......貴様どういうつもりだ!」



 俺は鉄魔法で作り上げた十字架の柱を祭壇があるステージにぶっ刺し、一人一人を磔にして有刺鉄線で縛りつけた後に奴らが目覚めるのを待っていた。


 そして目覚めたと同時に停電から復旧が完了した。


「君たちの最後の晩餐を作りに来たのさ。アンタらは僕の事を待っていたんでしょ?」


「ふざけるな! ここから解放しなさい! 貴様こんな事をしてタダで済むと思うなよ!? あらゆる権力を利用してお前を消してやるぞ! それにここには監視カメラがそこら中に仕掛けてあるんだ、お前に逃げ場なぞ無い!」



 バカな教祖は縛られているにも関わらずドヤ顔で俺を責め立てる。



「はーっ、やっぱイカれ宗教の教祖ってのは頭ん中もハッピーセットなんだな。さっきの停電が何故起こったか理解してないのか? 監視カメラや警報装置、外部に情報が漏れるありとあらゆるものをあの瞬間に全て破壊したんだよ」


「そんな......だが意図的に電源を落とされた場合警備会社に即刻通報が行くはずだ!」


「ざんねーん......それも僕の能力でバリアを張っているから全てシャットアウト。頭にアルミホイルを巻く必要が無いくらい5Gも電磁波も、○berイーツすら届かないってワケ。つまりここは現実と切り離されたまさに楽園・・だね━━」

 

「そんなバカな! 今解放すればまだ許してやる! 従わないと後悔するぞ!」


「そうよ! アンタどういうつもり!? 学校に戻ったら覚えてなさ━━」



 バゴッ━━!



 俺はクソ女の顔面をぶん殴って御自慢の綺麗な歯をすっ飛ばした。



「ぐふぉぇっ......! い......たい......!」


「君は少し黙ってくれるかな? 中○製Bluetoothイヤホンのアナウンス並みに耳障りなんだよ」


「瑠衣子ぉぉぉっ! 貴様よくも愛する娘を......貴様は一体何者なんだ! 貴様の家族ごと末代まで呪ってやる!」


「呪うだなんてさすが神に仕える教祖様のセリフは一味違うなぁ。僕の正体ねぇ.....それはアンタの娘と取り巻き2人の三馬鹿トリオはよーく知ってるはずだ......《ディフォルマティオ変身》」



 俺は黒い煙を纏って瞬時に黒羽真央の姿に変身し、宗教っぽく背中に白い翼を生やして宙に浮き神秘的にしてみた。

 


「お.....お前......あの時のガキかっ......!」


「なんでアンタが......死んだはずじゃ......!」


「黒羽......一体誰だ......? それにその羽根は......」



 途端に三人の顔が青ざめているが教祖はまだ理解出来ていないようだった。



「教祖様......俺はアンタの娘に虐められ、更にそこのガンギマリ男2人に犯されて死んだ黒羽真央っていう高校生なんですよ━━」


「なんだと......うちの瑠衣子がイジメだぁ!? どうせお前が今みたいに瑠衣子に何かしたからだろう? 天使か魔王か知らんが逆恨みも良いところだっ!」


「ははは......加害者の親ってみんなそれ言うんだな。無様に死んだ富田の親父も同じような事言ってたよ」


「富田......まさかこの間起きた不可解な惨殺事件の犯人は......!」


「そう......あの事件は俺が1人で引き起こしたモノだよ」



 俺が慈悲深い笑顔で話すと教祖の顔も他三人と同じように真っ青に変わる━━。



「あの事件は人間が出来るものじゃないと聞いた......。それに今目の前で一瞬にして変身......もしや本当に君は天使......なのか?」


「そう俺は天使、この通り多い日用のナプキンみたいに羽根があるんだ......。俺はお前らを片道切符の地獄へバスガイドしに来たのさ。あいにく今はスカーフも帽子も被ってないけどな━━」


「やめろ......やめてくれ......! 君は天使なんだろ!? なんでもするから命だけは助けてくれ! そうだ何が欲しい? 金か? 女か? コネか? コネなら各業界の伝手がいくらでもある! 私が紹介すれば将来様々な分野のところで働けるぞ!? 女だっていくらでもあてがってやる! なあ! 悪くない取引だろう?」


「ははっ、今から沈みゆく泥舟教団とそんな取引出来るわけないでしょ? 笑わせんなよ。お前とバカ娘は最後に観光案内してやるから楽しみに待っとけ、先にLGBT2人が性別不明になる間アンタは隣で神にでもお祈りでもしてなよ。お祈りは得意なんだろ?」


「そんな......」



 俺は岡本と相模の方に近寄る━━。

 2人はこれから起きることが想像ついたのか有刺鉄線で縛られて血だらけになった腕を無理矢理動かして脱出しようとしていた。



「ひっ......! なんなんだお前......! あの時のことは心から謝る! だから許してくれ! 俺は君みたいに綺麗な顔した男が好きなだけで純粋な気持ちだったんだ! もう2度とあんな事しない! 約束するから頼む!」


「そっかぁ、なら仕方ないね! 俺も鉄の棒が人にぶっ刺さるのを見るのが好きなだけなんだ......。純粋な気持ちだからこれからする事を許してくれるよね? 《フェルム・ロンヒ黒鉄の槍》」



 俺は空間から真っ黒な鉄の槍を2本生成して宙に浮かせ、穂をそれぞれの股間に向ける。



 サ゛ク ッ━━!



「ウ゛ォ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ━━!!」



 相模と岡本の股間に突き刺すと股間の槍は履いているズボンごと見事に切断され、俺の白い翼に血が飛び散る。



「うん、これで君達の苗字に恥じないくらいの避妊率になったね!」


「く......うぐっ......もう......使い物にならなくなっちまった......これで満足だろ......なぁ? 頼む許してくれ!」


「俺達を解放してくれ......お願いだ.......!」



「え? 何言ってんのこれからだよ? 刺すのが好きなら刺される気持ちも理解しないとでしょ。この意味分かるよね? 《イグニス》」



 宙に浮いた2本の槍を火魔法で熱すると黒い色は赤みを帯び、その熱がジンジンと空気から伝わる。


「鉄って熱伝導率高いよねぇ、手に持たなくて正解だわ。それじゃ串焼きの調理を始めまーす」


「やめ.....やだ.....やめっ━━」



 グサッ......!



「ク゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!」



 それぞれの槍はズボンを焦がしながらを貫通し、ジュージューと肉の焼ける音をさせながらゆっくりと肛門を裂きながらに入っていく。



「おー結構入っていくねぇ、腸が焼かれるとかまるでセルフソーセージだな。さてと、死なない程度の所までぶち込んでやるよ」



 ズブ......ズブッ......!



「キ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!」


「うるさいよ、もう一本ずつ作るからそれ口に咥えて大人しくしてろ。但し歯は立てるなよ?」


「いやだ.....よせ......やめろ......!」



 俺は更に2本槍を生成しイグニス火魔法で炙った後、2人の口に無理やり穂を押し込み始める。



「んぐっ......☆#¥€+>=#→☆・○*!」



 2人の口から肉の焼ける匂いと煙、そして刃によって舌や口内が切れたのか血が口から大量に流れるが、炙られているせいですぐに凝固する。

 そして更に刺さっている槍をそれぞれ激しくピストン運動させて体内を抉っていく。



「お前らが俺にやってくれたことをコレで全てお返しできたかな? じゃあ最後の仕上げだ、ありとあらゆるに棒を刺してやるよ」


「かはっ......ひゃめろぉやめろぉ.....はのむたのむ.....!」



 2人は見るも無残な姿になりながら涙を流して俺に許しを乞いていたが、俺の心には"汚い"以外何の感情も湧かなかった。



「そう言った俺を無視してヤったのはどこの誰だっけ? じゃあさよならだ。地獄で閻魔相手に腰でも振ってろ......ってもう生えてないんだったごめんね。 《ミィリアド・ロンヒ槍の雨》」



 俺は空間に数え切れないほどの槍を生成して穂先を2人に向けて放つ準備に入った。



「ば......バケモンだ......」


「締めの遺言ありがとう。それじゃばいばーい」



 槍は一斉に放たれミサイルのように2人に向けとてつもないスピードで加速する━━。



「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」



 ス゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ッ━━!



 大量に鉄の槍が刺さり血が撒き散った2人の体は、その姿は人なのかなんなのか分からないくらいの肉片に変わっていた━━。



「うっ......うおぇぇぇっっ......うぇっ......! な、なんて事だ......」


「なーんか腐ったハリネズミみたいになったね。これじゃ鑑識の人達も人物を特定するのに大変だ......歯形すら取れないよ」


「ひっ......! わ......私まだ......しし.....死にたく無い......! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」



 笛吹瑠衣子はその光景を見て股からアンモニア臭がする液体をビショビショと漏らしていた。



「ははっ......まさかそれがローションの代わりかい? お前が死ぬまでに時間はまだたっぷりあるから心配すんなって━━」



 残り2人の命の期限は直ぐそこまで来ていた━━。

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