第5話 1日後編
そして朝ごはんを食べ終えたら手習いの時間だ。これは日によって違ったりするが今日は書道からだ。とは言っても私は既に平仮名、片仮名を制覇していて漢字はあと半分くらいだ。
「伯母上、これはなんて読むんですか?」
「これは
「めでたいしるし?」
「ええ。前兆、つまりいいことが起こりうるという意味に近いですかね」
参考にする本は相変わらず父上がしたためてくれたという『漢字の書』で教えてくれるのは伯母上だ。その伯母上が忙しい時はお苗がやるという感じた。一日10ページぐらい進める。
そして書道を終えたら今度はお苗の歌学・芸事の授業だ。
「ここではこの指とここの指で抑えます」
「なるほど……」
篠笛は今は5曲目の練習中だ。
歌学も
これが一区切りしたら休憩だ。
この時間はわたしは間食を済ませる。この時代1日2食が基本だった。かくいうわたしも現代では昼食をあまり取らないタイプだったのでおにぎりとか軽い小魚だけでも良かった。
「んーもうちょっと見た目良くしたいよね〜それも豪商が使うような高級感……」
「ふむ、なら黒色に金色で装飾するのはいかがでしょうか」
「それがしは黒にするんだったら白の方がいいと思います」
「なるほど……んーとりあえず今度父上に頼んでみるね」
「是非そうしてください」
ご飯後は与六や千代丸と紙袋を商品化にする相談をしている。これはあともう少し時間があれば出来そうである。
そのあと時間が開けば上杉家にある本で読書をした。読むものは基本的に兵書か内政書が多めだ。一応教養のために『源氏物語』だとか『枕草子』とかも読むけど後者はともかく前者は赤っ恥になりそう。なんでこんなハーレム男の話が流行ったんだろ。時代の価値観の違いによるカルチャー(?)ショックを受けながら優雅に過ごす。本を読む以外だと将棋か囲碁を千代丸や信綱などと指したり、読書の時間が余れば清姉上や喜平次の部屋に訪ねた。
休憩後は袴に着替え直して父上が教えてくれるとの事なので馬術の時間だ。
「いいか、虎。絶対にこの手綱は離すなよ」
「はーい!じゃあよろしくね!
5歳になった時に父上がわたしに馬を与えてくれたのだ。馬というか大河ドラマによく出てくるようなかっこいい背の高い馬ではなくポニーのような可愛らしい馬だ。虎白と名付けた理由はいくつかあるけどひとつはかっこいいから。もう1つはわたしの名前、虎とこの馬の鼻筋が白いので虎白だ。与六に安直だとか言われたけど無視だ。よくある名前だけどね、父上はべた褒めされたんだよ。それはともかくわたしは父上の手を借りて馬に乗った。
「よいしょっと……父上!できました」
「さて、虎、馬を移動させたい時はどうするんだったかな?」
「馬の腹を軽く蹴る!です」
「当たりだ。やってみよ」
「はーい」
馬には乗り慣れてきたので先月から馬の操縦方法について教えられるようになった。とは言ってもまだわたしの背が足りないので父上(もしくは教える人)の補助ありでだけど。もう少し背が伸びれば1人で操縦するようにできる。大体こういうのは6、7歳がメジャーらしい。
乗馬の練習を終えたらその次は弓術をやる。弓術は今月からやり始めた。ちなみに槍だとか薙刀はわたしが8か9になってから。というかどこの武士の子供もこれが普通だ。
それが終われば、父上監督の元、また刀の鍛錬で、ここだけは基本的に素振りのみ。これが終われば体を水拭き、小袖に着替えてその後は夕餉の時間だ。
「虎はもうそんなにできるようになったのか」
「うん。でも、喜平次のほうがもっとすごいと思う」
「そうか?」
「うん!」
「……褒め言葉として受け取っておく……」
父上は家臣たちと会議中で、後で食事はとるそうだ。だから仕方がなくわたしは喜平次と伯母上と取ることとなった。いつもは父上の膝の上なので今日は珍しく喜平次のお隣で食事をとることとなった。「えへへ。今日は喜平次のお隣だね!」って言ったら顔を真っ赤にされた。顔を真っ赤にされたのでわたしもなんだか気恥ずかしくなって真っ赤にしてたところで伯母上の声で食事を再開した。
夕餉後は千代丸と与六と喜平次で将棋や囲碁を指したり読書をしたり、最近は『九章算術』という本を手に入れた。なにやら京にゆかりのある武将が手土産にと父上に献上したらしいが、父上は特に興味がある訳ではなく、わたしがその本を見た時に興味を示したので貰ったのだ。
これは本のタイトル通り数学(算数)に関する話だ。1章では面積と分数の問題、2章では比例の問題、3章では等比級数の問題、4章では辺の長さを求めるのと平方根、立方根の問題、5章では体積の問題、6章では複雑な比例の問題、7章では鶴亀算、8章は連立方程式や負の数、そして最後に九章はピタゴラスの定理の問題だ。これはあくまで目安だが、わたしは社会人なので半割ぐらいは解けている。ただあとの半分はわたしは文系だったのでここら辺の知識はあまり無かった。試しに与六に解かせると分かったらしく教えてくれた。さすが内政でも有名な武将だ。
この後眠くなったら寝巻きに着替え、就寝。
これがわたしの一日だ。お姫様って大変なんだなって今実感した。
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