第20話


 「何ジロジロ見てんの?」


 「…え、いや…」



 目を疑ったのは、「職業」の欄だった。


 諜報員?


 諜報員ってあの諜報員?


 学生なんじゃないの?


 自分でも言ってたじゃん。


 翠星学園の2年だって…



 「ここに載っている情報は、政府が感知できないようになってる。「猪本サツキ」という人間は、電子回線上にはすでに存在していない。抹消したんだ。もう何年も前に」


 「…抹…消?」


 「私はいくつもの偽名を持ってる。個人が保有してる『生体情報』も」



 …何を言ってるんだろう


 話がぶっ飛んでてよくわからなかった。


 偽名を持ってるって、キミが?


 …どうして?



 「私は『ブルーアーカイブス』っていう非政府組織に所属してるの。「諜報員」っていうのは、つまりそういうこと。私は国の“敵”なんだ。色んな意味でね」



 国の、敵。



 不意に飛び出してきたとんでもワード。


 もちろん意味はわかる。


 わかりすぎるほどに。


 だからこそわからなかった。



 国の、…敵?



 それって、…そういう意味だよね?


 そのまんまの解釈で合ってるよね??




 えーーーーっと、



 うーん???



 スパイ組織か何かなの…?


 その、“ブルーアーカイブス”っていうのは。



 「まあ、そんな感じかな?テロリストって呼ばれてたりもするよ?一部の人たちからは」


 「ハハ。そうなんだ…」



 面白いじゃん、その話。


 僕は冗談半分でその話を聞いていた。


 「スパイ」なんて馬鹿げてる。


 ましてや、“テロリスト”なんて。

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