第19話



 「ターゲットは確保したのか?」


 「当然」



 ポケットワークと繋がったオンラインのスピーカーから、男の人の声が聞こえた。



 “ターゲット”



 それはきっと「僕」のことだろう。


 彼女もそう言っていた。


 返り血を浴びた制服に、冷たい視線。


 どういう意味でその言葉を使ってるのかはわからなかった。


 僕に何か用事があるんだろうとは思った。


 用事というか、「用件」というか…



 ——猪本サツキ



 彼女の“生体情報”が、モニター越しに浮かび上がった。


 名前に血液型、住んでいる場所、その他、——諸々。


 電子記号で符号化された文字の羅列に、等身大のモニタリング。


 出生地は「イギリス」とあった。


 翠星学園の2年で、B組。


 苦手な科目は数学で、好きな映画は『ジュラシック・パーク』



 …何だこの情報



 解読できない情報もいくつかあったけど、わかりやすい情報がパッと表示されていた。


 マイナンバー情報で登録されている『一般公開情報』だ。


 「ポケットワークス」というオンラインサービスで更新される個人情報の一部なんだが、ネット市役所を通じて発行される電子カード上の記録でもあった。


 学生は主に、学校の健康診断時に更新されるのが一般的で、生体情報スキャナを使って分析した個人情報を、様々なオンラインサービスに応用、適用することができる。


 一般公開する情報も任意で決めることができ、その設定も、『ユーザーズクラブ』で操作可能だ。


 ユーザーズクラブっていうのは、詰まるところ個人の「端末情報」みたいなもので、“デジタルビューイング”というソーシャルネットワーク上に繋がるデータを、国際単位で管理しているサーバーでもある。



 年齢  16歳

 身長  160cm

 スリーサイズ  B79/W54/H87

 血液型 A

 職業  諜報員

 趣味  ダイビング、天体観測、漫画鑑賞

 好物  お好み焼き

 好きな色  オレンジ

 誕生日 2月22日

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