第21話 強化魔法(後編)
ノルンのペアは体格的には恵まれているので、速度に特化した強化魔法をかける。対するファティマペアはサラは防御力増の強化魔法を自身にかけ、ファティマには筋力に特化した強化魔法をかける。
「強化魔法をかけてもらうのは初めてだけど、これは確かに力がみなぎって来るな」ファティマは自分の両こぶしを見ながらそう言った。そうしてノルンペアの方へと突っ込んでいき、拳でまずはベネットを狙った。速度強化を施しているベネットはなんなくそれを躱すが、空振りしたファティマの拳はそのまま闘技場の壁に当たった。轟音と共に壁には亀裂が入る。
「…この闘技場の壁の強度はミスリル銀相当なんですけどね。これは学長に怒られるな」ファティマの攻撃を見てアカツキ教授は頭を抱えた。そんな事はお構いなしにファティマは攻撃を続ける。ベネットは物凄い速度でそれを躱して行く。躱しては行くがファティマの拳が生み出す風圧は彼女に襲い掛かる。
「ノルン、これ一発でも当たったらヤバいです!」ベネットはノルンに聞こえるように大きな声で言った。
「大丈夫、私のかけた速度強化なら問題なく躱せるはずです」ノルンはベネットにそう声をかけたあと、ファティマに向かっても叫ぶ。
「いくらパワーがあっても当たらなきゃどうにもならないから!」
そういうや否や後方にいたサラがもう一度ファティマに強化魔法をかけた。今度は速度強化だ。サラは魔法が得意なだけあって、強化魔法の重ねがけもできる。ファティマの運動速度のギアが一つ上がった。すると攻撃はベネットの体にかすり始めた。そうしてついにファティマの拳がベネットに命中したと思われた瞬間、その攻撃をノルンが止めた。
「そっちが重ねがけするなら、私も二回まではやらせてもらうから」ノルンはそう言ってニヤリと微笑んだ。
「ベネットはサラの方をお願い!」そう言ってノルンはファティマの連続攻撃を避けながら、無詠唱でベネットに速度特化の強化魔法を重ねがけした。元から攻撃力の高いベネットには筋力強化は必要ないとノルンは判断した。二重がけの速度強化を得て、ベネットは目で捉えるのは難しいほどの速度でサラの元へと移動した。そうして彼女の拳がサラに向かって放たれようとしたそのとき
「はい、やめやめ!!」アカツキ教授の声が闘技場に響き渡った。その声に全員が動きを止めた。
「それ以上やったら怪我だけじゃ済まないわよ。全く素手でここの壁にヒビを入れるなんて、いくら強化魔法をかけたからってどういう事なのかしら?だいたいノルンさんも無詠唱で強化魔法の重ねがけとか…そんな問題じゃないですね。なんですかその速度強化魔法は、一緒に肉体強化もしないとベネットの拳が潰れちゃうでしょう」
闘技場内にいる他の生徒達は模擬戦を見て静まり返っていた。ノルンとファティマはやり過ぎてしまったと後悔したが、それは後の祭りだった。
「まぁ今回はけが人も出なかったので良しとしましょう。それで二人は魔法格闘競技会出場の件はどうするのかしら?」
ノルンとファティマは親の許可はとれたことを報告した。
「予選は夏休み開けに始まりますが、手続きなどがあるので返事は来週までに必ずしてください。他にも希望者がいれば…ま、今のを見たらこのクラスにはいないでしょうね」
教授はそう締めて授業は終わった。
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