第15話 帰還(中編)

「アルファとオメガの違いを考えると、確かにそうかもしれないな」タニグチが言った。

「でも違いっていうなら女性だけ起動できるって可能性もあるんじゃないの?」タクヤが言う。


「確かにその可能性もありますが、私とファティマが向こうに帰ってしまえば、やはり女性のいないこの世界ではゲートの起動は不可能という事になります」

「そりゃそうだな」ダニエルが言った。


「そうして、ユーナムでしたっけ?彼らがゲートを破壊するとも考えられないので、私たちの方からはいつでもまたこちらに来れるという事になると思います」


 黙って聞いていたタニグチが口が開く。

「本当に君は優秀だな。確かにその通りだ。しかし次にこちらに来るときはそのゲートは奴らに囲まれているかもしれないよ」

「昨日の戦いを見て、彼らに私たちが遅れをとるという可能性は低いような気がします。私たちがいればあなた方の戦いの力にもなれるかもしれない」


「昨日のはあくまで探索用のマシーンなので、戦闘に特化している連中は装甲の頑丈さも銃火器の威力も比べものにならない。もしかしたらそれでも君たちの敵ではないかもしれないが、危険がある以上向こうに戻ったら当分こちらには来ない方がいい。可愛いお嬢さん方を危険にさらすなんて、男がすたるだろう?」そう言ってタニグチはノルンとファティマにウィンクをして見せた。


 ファティマは食卓から立ち上がり、部屋の隅の方へ行くとノルンを手招きした。そうして他の人には聞こえないようにノルンの耳元で囁いた。

「向こうに帰っちゃえば、私たちが何しようがこっちの人には分からないだろ?黙ってまた来ちゃえばいいじゃないか。なんならそのユーナムってやつらは私たち二人で殲滅しちゃおうぜ?私たち二人なら出来るんじゃないか?」ファティマは悪い顔をしてそう言った。


「そんな騙すみたいなことしちゃだめでしょ?」

「いいよ。ノルンが嫌なら私一人で来ちゃうから。こんな面白そうなところ来ない手はないよ」

「止めても無駄なんだろうな…」そう言ってノルンは食卓の方を向き直して、男たちにこう言った。


「分かりました。向こうの世界に戻って、あなた達がユーナムを倒すのを待つとします。ただ…」ノルンはそう言って首にかけていたネックレスを外すとタニグチに渡した。

「これは?」タニグチが聞く。


「それは魔石と言って魔力が込められています。実験したわけではないので確証はありませんが、それでもゲートの起動ができるかもしれません。オメガからアルファへの移動手段も可能性としては残して行きます。もちろんゲートの起動条件が女性という場合は役に立ちませんけどね」

「新しいゲートを見つけたら試してみるよ。でもそっちへ行って急にドラゴンにでも出くわしたら怖いけどね」そう言ってタニグチは笑った。


「その魔石の本来の使用目的は通信です。それはまだ私が幼くて通信魔法が使えないときに母から与えられたものです。魔石には魔力がチャージされているので、ペアにした魔石同士なら魔力の無い人でも数回くらいは通信できると思います。私たちの世界に来る事があれば、遠慮なく連絡してください」

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