第3話 共立魔法大学校(中編)

 その日の授業は戦闘実習だった。魔法大学と言っても魔法だけを学ぶわけでは無い。物理的な攻撃や守備に魔法をプラスする術も学習する。最も既に魔族と人族が戦うことも無いので、鍛えたところで役に立つのは魔物や魔獣と戦う時ぐらいだ。


 魔法戦闘が専門のアカツキ教授から、最初に今日の実習テーマである武器への魔法付与のレクチャーが小一時間程あった。その後生徒たちは実習闘技場へと移動する。移動が終わったところで、教授がアイテムボックスから実習に使う武器を次々と取り出していく。このクラスは生徒数が20人ほどなのだが、選択ができるように武器の数は30個ぐらいはある。もちろんそれらは本物ではなく練習用の木製だ。


「実習で使う武器は見ての通り模造品だが、魔法を付与をしやすいように魔法陣が書いてある。実際の武器への付与も大体同じ要領で出来るはずだ。もちろん本物の武器にも魔法陣を書けばより付与はしやすくなるだろう。魔法陣は先ほど配ったプリントに書いてあるので、各自後で復習しておくように…もしかしたらここは試験に出るかもしれないよ」


 アカツキ教授はところどころで、試験問題についての情報を漏らしてくれるので油断できない。しかしそれは重要な部分を、より集中力を持って覚えられるようにとの教授の配慮なのだろう。ノルンはそれが分かっているので、教授の言葉は一言一句聞き逃さないように集中している。一方ファティマはあまり真面目に聞いていない。


 ノルンは対外的には魔法戦士という事になっているので、一番それらしく見える剣を選んだ。そこは勇者であってもあまり変わらないような気はする。一方ファティマは魔族っぽい感じがするという事で大鎌を選んだ。クラスの面々がそれぞれに武器を選び終わったところで、教授が話し始める。


「はい、全員武器は行き渡りましたね。付与が出来た人から私のところに来て実演をお願いします」

 ハイっと一人の生徒が手を挙げた。

「実演というのは、教授に対して実際に攻撃するという事でしょうか?」


 アカツキ教授は答える。

「もちろん実際に私に対して攻撃してみてください。私の方はちゃんと避けますし防御もさせてもらいます。それを超えてある程度ダメージを与えられたなら加点対象にしますのでみなさん頑張ってください」


「マジでやっちゃってもいいのかな?」ファティマがノルンに言う。

「悪目立ちしたら、またお母さんたちに怒られるよ。少々加点してもらえるくらいにしておいた方が無難でしょ」


 教授は魔法だけでなく戦闘のエキスパートでもあるので、その体は鍛えあげられていて、元々の体格の良さもありかなりの威圧感だ。防御するだけと言ったが、片手には盾を構えて、もう片手には模造品ではあるが剣も構えている。


 しばらくすると、生徒たちが次々に手を挙げる。多くの生徒は武器に属性魔法を付与し教授に攻撃を仕掛けた。中には睡眠や麻痺などの状態異常を付与した者もいた。

しかしその全ては教授の体には届くことなく、盾で防ぎきられてしまう。付与云々というよりも武器自体が教授の体まで到達しないのだからダメージの与えようもない。


 何人かの攻撃が終わったところで、教授のレクチャーが始まる。

「はい、みなさんちゃんと付与は出来ているようですね。ただ何の属性が加えられたかが漏れ出してしまっています。それだと相手に対策されやすいですね。防具の方にも同耐性の付与が行われてしまうと、攻撃が効かなくなります。これは防具だけでなく魔法を使う魔物でも同じなので、武器への付与の動作を含めて、何をしたかを相手に悟られないことが大切です。はい、次の人」教授がそう言うと、次はファティマの番だった。

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