逃亡2
スタンピードの話は俺がいつも依頼を受けている商人の何人かは知っていたし、すでに逃げているものもいた。
どうやら本当らしい。
「マリ、逃げるぞ。」
「えっ?」
カクカクシカジカ
「なるほど。それで、どこにいくのですか?」
「まだ、決めていない。とりあえずは近場の街に行って、どの町がいいいか調べる。」
「分かりました。」
仕事をすっぽかすなんて日本じゃあり得ないことだが、この際どうでもいい。
命優先で逃げる。
ーーーーーーーーーー
「パパ、おしり痛い。」
「痛い!!」
リリとミリには馬車の旅は少しきつかったみたいだ。
「質の良いクッションでも次の街で買うか。」
「そうですね。私も欲しいです。」
「分かった。」
今、俺たちは家族4人で行商をしているという設定で街と街を馬車で進んでいる。次はどこの街に住むか、吟味しながら。
「それにしても危なかったな。」
「そうですね。本当にスタンピードが起きるなんて。」
「ああ。しかも騎士の到着は遅らせて、別の街でスタンピードを迎え撃つときた。」
「みなさんご無事でしょうか?」
「さあな。少なくとも商人と冒険者はなんとかなるだろうな。」
「そうですね。」
ーーーーーーーーーー
数ヶ月の旅を経て、ようやく辿り着いた。
ダンジョンのある街、サラムスへ。
「やっと、ついたか。」
「長い旅でした。」
俺たちは悩みに悩んだ末。
この中級ダンジョンのある街サラムスに住むことにした。
ダンジョンには主に2種類のダンジョンが存在する。
攻略して消えるダンジョンか。消えないダンジョンか。
消えないダンジョンには、それぞれランクがついており、下級、中級、上級となる。
他にも突発型ダンジョンなどがあるらしいが今はどうでも良い。
「すごく栄えているな。」
「そうですね。前、住んでいた町の何十倍も大きいです。」
このサラムスの街は、港町に近く、近くに大きな森があることから、魔物の素材には困らない。
冒険者の俺には最高の労働環境だ。税金も安いし。前みたいにスタンピードが起きた時は絶対に騎士が駆けつけてきてくれるし。
「家を探すか。前と同じくらいの大きさの家で、庭付きの。」
「良いですね。大きいお風呂も欲しいです。」
「そうだな。久しぶりにゆっくりしたい。」
金ならいくらでもあるので、良い物件を買った。
「あなた。今日はゆっくり寝ましょう。」
「そうだな。長旅は体に悪い。」
今まで、夫婦同然の距離感がこの旅で完全に夫婦になった。俺のことをあなたかリュウさんと呼ぶ。
俺とマリの間にリリとミリを挟んで4人で寝た。大きい布団はやっぱりいいな。
ーーーーーーーーーー
今日からこの街で働く。
やることは山ほどある。少しずつ情報を集めていこう。長旅で体も鈍っているしな。今こそ、貯金を使うときだ。
一月も経つとこの街での稼ぎ方と武器屋、道具屋の信頼できる場所なども分かってきた。
「それにしても、生まれて初めてのダンジョンだな。」
ダンジョン。アニメや漫画では見たことあるが実物は初めて見た。
後で、みんなにダンジョンの話を聞かせてあげよう。
初日は1階層にいるゴブリンを数匹殺して帰った。
ダンジョン内で他の冒険者に襲われることに警戒しないといけないのか。
めんどくさいな。
街が大きい分。冒険者の移り変わりも激しい。冒険者同士の殺し合いもかなり多いと聞く。
「ダンジョンは苦手だな。まずは、森での魔物狩りや薬草集めで稼ぐか。」
ーーーーーー時がたち30歳になった。
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