《踏んだり蹴ったり・飲んだり食ったり》

山小屋に入ると、山小屋の使用について軽い注意があった後、部屋に案内された。部屋は上下には狭かったが、横には十分な空間があり、寝袋と枕が二つずつ用意されていた。僕らはテンションが上がると同時に、横になれる喜びを噛み締めた。

そして10分ほど経った頃、食事をしに下に降りると、カップ麺を用意してくれた。普通のカップヌードルもあったが、僕らは豚骨醤油ラーメンを選んだ。また、その際に汁物も用意してくれ、コーンポタージュ、ココア、コーヒーの中から選べた。友人はコンポタを選んだが、僕の体は甘いものを欲していたのでココアを選んだ。いや、選んでしまったのだ。

僕らはあっという間に平らげ、カップ麺の汁まで飲み干した。そして翌日の朝ごはんも渡されたが、その中に入っていた五目ご飯もついでに食べてしまった。仕方がないだろう。お腹が空いていたのだ。

そして食事を終えた僕らは自室へ戻り、寝支度をした。時刻は10時少し前だった。翌日はご来光を見るためにも、1時頃に起きて30分後には出るという予定だったため、睡眠可能時間はたった3時間だった。ただ、元々は野宿か夜通し歩く予定だった僕らは、3時間「も」寝れることに感謝した。そして僕らは登山の疲れと、前日の寝不足も相まって深い眠りに誘われる。はずだった。

正確には、友人はぐっすり眠っていたが、僕はどうにも眠ることができなかった。最初は、まあすぐに眠気が来るだろうと考えていた。しかし1時間経ってもなぜか寝付けなかった。そして眠気ではなく尿意が襲ってきたので、渋々トイレへと向かった。

トイレから戻りスッキリしたが、それでもまだ寝付けなかった。もちろん、目を瞑って横にはなっていたが、一向に眠ることはできなかった。仕方ないので、スマホを取り出し、ゲームをした。一旦目が疲れれば眠くなるだろう。僕はそんな甘い考えを持っていた。

案の定、また1時間が経過しても眠れなかった。そしてまた尿意が来て、トイレへ向かう。道中、なぜ眠れないのか、考えてみると、一つの答えに辿り着いた。

そう。ココアだ。こんなに目がバキバキなのも、尿意が高頻度で襲ってくるのも、全てアイツのせいだ。僕は原因を突き止めたが、どうすることもできやしなかった。結局、横になって瞳を閉じ、たまにスマホを開いては時間の進む遅さに絶望する、ということを繰り返した。

そして、なんとか地獄の1時間を乗り切り、彼を起こす。そして僕はバッチリと開いて疲れ切った目で、彼は寝ぼけ眼で、それぞれ身支度をする。僕は3時間起きっぱなしだったため、かなりお腹が空いていたこともあり、少し多めにかなり早めの朝ごはん(?)を食べた。いや、食べてしまった。

そしてなんとか1時半に山小屋を発った僕らだったが、少し見上げて絶望する。そこには、暗闇に蠢く無数の光が列を成していたのだ。

僕は絶望を吐露する。

「まじか。」

「これ、ご来光間に合う?」

「いや、怪しいかも。」

「じゃあ、ちょっと飛ばすか。」

彼の一言を合図に、僕らはハイペースで登っていった。

のも束の間、僕が音を上げたため、少し行った所でしばらく休んでしまった。

これが高山病か。富士山恐るべし。僕は大きく深呼吸した。だが、なぜか肺というよりも別の内臓に異変を感じる。不思議に思い、僕の行動を振り返ると、すぐに原因に思い当たる。食べ過ぎだった。

3時間起きっぱなしではあったが、もはや正常な体調ではないところにあれだけ食糧を詰め込めば、気持ち悪くなるのは当然だった。

途中、童心に帰ったが、おそらくあの時に、体だけではなく精神面も退行したのだろう。真に恐るるべきは、有能な敵より無能な味方と言うが、まさしくだ。僕は自分の自己管理能力の低さを恨んだ。

しかしなんとか10分ほど休むと胃の消化のおかげで少し動けるようになってきた。それからは集団を追い越すことはせずに、集団の中に入ってついていった。

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