第2話 平凡な日常なんてのはない
「みんな私にいい顔するの。お近付きになりたい人とか、いいポジションを保ちたい子とか。みーんな君の二の舞になるのが怖いみたい」
俺が非常階段で残りの高校生活を謳歌している最中に、ずっと横の少女が話しかけてくる。入学してから早1ヶ月。俺は詰んでいた。
「みんなバカだよね〜。釣り合うとでも思ってるのかな?私みたいな美少女の横にあんなブスたちを置きたくないけど、追い払うのも面倒だから」
厄介だな〜、と呟きながら階段の手すりで頬杖をつきながら愚痴る。コイツの性格は昔からこんな感じだ。
暴力事件には彼女が関わっていた。その日からこうゆう風に執着が始まった。だから、コイツや他の中学の奴らがいない高校に行こうとしたのだが、たまたま彼女がいたのだ。
「それにしても夏実くんがこの学校にいるとは思わなかったよ〜。この学校は県で一番偏差値が高い高校だからびっくり。勉強出来るキャラだとは思ってなかったからさ〜」
彼女は話すのをやめようとしない。俺はこの昼休みが無駄になることを避けるため、早急に会話を終わるように専念した。
「暴力事件を起こしてから目立つのが嫌になっただけ。だから定期テストの順位をほぼ最下位になるようにやってた。お前はずっと執着してたから、同じ高校にしてくると思ってあえて1番上を狙った。そしたら、それがバレてた。誰から聞いたんだ?」
「進路希望調査の紙を集めたのは私だよ?同じクラスだったのを忘れたの?私は信頼と信用があるからそのくらい簡単に出来ちゃう」
「そんくらい知ってる。けど、俺は第一志望の欄に、この学校と違う学校を書いた。それなのに何でだよ」
「確かにそうだったね。でも、君の二番目と三番目の志望校の欄には、平均より上のレベルの高校が記入されていた。けど第一志望の高校は、県で一番偏差値が低い高校だった。これってつまり、当日点で満点に近い点を取れば全然受かるってことだし、君は取れるってことになるよね?そして、君は私が進路希望調査を回収することはわかってた。つまりその三つの高校には行く気が無い」
「よく喋るな」
「えへへ〜。あとは簡単、君の性格的に地元から遠い場所に行きたいだろうと思ったの。だからここ」
「最後雑だな」
だが、その推察は正解だと言える。
「せっかく静かに生きていこうと思ったのに、事件の事をこの学校の人間にバラすのは勘弁してくれよ。ていうか、接触してくるなよ。俺はこの1ヶ月間ここで1人を満喫してたのに、気が付いたら学校全体から嫌われてるんだけど?」
「私は夏実くんを独り占めしたいの。見てくれは良い君を取られるのは困るからこうやって追い込むの。そうすれば誰も夏実くんを独り占めしようとしなくなるから」
「怖すぎだよお前。そんな理由で俺の人生壊すなよ。まあ、もういいけどさ」
どうせ捨てた人生だ。俺はもう再起できない。
「どうして?」
純粋な顔で彼女は俺にそう聞いてくる。
「俺は暴力をしたから。嫌われる理由は充分ある」
「でも、君の暴力は私を幸せにしたよ?次は私が君を守ってあげよっか?」
「いや、遠慮しておく。お前は友達を幸せにしてやれよ」
そう言い捨てて、俺は校内に入っていく。
「・・・・・・ありがと」
彼女は丁字草のような淡い青の空を仰いだ。
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