ゼウス、初配信をする①
ゼウスが少年から、鳴神響から肉体を譲り受け、目覚めてから一年が経ち..........今現在のゼウスは、とあるダンジョン内にて、配信の準備を行なっていた。
「ふむ、これが人間達が配信に使う道具とやらか..........中々面白いではないか」
何故、ゼウスが配信の準備をしているのかというと................実のところ、ゼウスは、肉体と神の力を鍛える間の暇つぶしとして、動画配信者の動画を観ていたのだが......動画を観ているうちに、動画配信者というものに興味を示したのか、その結果、動画配信者となることを決意したのだった。
「さてと.....では、始めるとするか」
そんなわけで、ゼウスは配信をスタートさせたのだが
『くたばれ!!このクソ野郎!!』
『よくも俺達のラムちゃんを!!』
『生きてたのかワレェ!!』
『ラムちゃんに酷いことをしたくせに、よくもまぁ配信ができるな』
『てか、髪染めてね?』
開始早々に、とんでもない数の誹謗中傷で溢れかえっていた。
「ふむ。これがコメントいうものか」
だが、ゼウスはその誹謗中傷を気にすることなく、画面に次々と書き込まれていくコメントに対し、興味津々な様子でそう言った。
「配信者という存在は、挨拶が肝心なのだと聞いた。なので、我も自己紹介させてもらおう」
『いや今更すぎるだろw』
『強姦未遂犯の鳴上響くんで十分じゃねw』
『だなw』
冷ややかなコメント欄を尻目に、ゼウスは、カメラに向けて自己紹介をするのだった。
「我が名は鳴上響!!今現在より、配信者を始めた探索者なり!!」
『..........コイツって、我とか言うキャラだっけ?』
『それ思った』
「.....まぁ、我にも色々あってな」
視聴者達に向け、そう言葉を溢すゼウス。
すると..........視聴者の一人があることに気がついたのか、コメント欄に、とあるコメントを書き込んだ。
『お、おい.....今、クソ野郎がいる場所って.............S級ダンジョンじゃね?』
「そうだが?」
そのコメントに対し、ゼウスはサラッとそう言うと..........
『はぁ!?』
『下の方じゃなくて、上の方もヤバかったか』
『強姦未遂犯、S級ダンジョンにて死すw』
コメント欄には、ゼウスを嘲笑うかのようなコメントが次々と書き込まれていた。
「何とでも言え。そんな罵詈雑言など、我には聞かぬ」
そう言った後、ゼウスはダンジョンの中に進んで行った。
ダンジョン内は、洞窟のような空間が広がっており...........
「カタカタカタカタカタ...........
ゼウスは、黒い骸骨...........デススケルトンに遭遇するのだった。
「これがモンスターという怪物か.............」
『初っ端がデススケルトンw
『やれ!!デススケルトン!!』
『強姦未遂荷物持ちを殺せ!!』
『どうせだったら、何匹かでリンチした方がスカッとするな』
『それなw』
『ザマァ死に期待』
視聴者達は、まるで、ゼウスの死を望んでいるかのように、コメント欄に死ねという言葉を書き続けていた。
しかし、そのコメントを観たゼウスは
「本当に人の死を望むのなら、戦争で賭け事をすればよいものを.......」
と吐き捨て、襲い掛かろうとするデススケルトンに対し...........手のひらから雷を放ち、デススケルトンを消し炭にしたのだった。
「.......やはり、威力を抑えてもこの程度なのか」
消し炭となったデススケルトンを見つめながら、淡々とそう呟くゼウス。
だが、視聴者は違ったようで
『は?』
『ファッ!?』
『ナァニコレェ!?』
『で、デススケルトンが..........消し炭に.....?』
弱いであろう荷物持ちが、スケルトンの上位種であるデススケルトンを消し炭にしたことに対し、困惑していた。
「すまぬな。何せ、実戦でスキルを使うのはこれが初めてなのだ」
スキル。
それは、ロキが人間界を書き換えたがために、一部の人間達に与えられた特殊能力で、探索者達は、スキルを使うことによって、ダンジョンを効率的に攻略できるようになったのである。
しかしながら、そんな探索者の動画を見慣れているはずの視聴者達でさえ、これほどまでに強力なスキルを見たことがないのか
『こ、こんなの合成だろ!!』
『あ、あぁ!!そうに決まってる!!』
合成と決めつけ、糾弾しようとした。
「..........それならば、もう一度攻撃すれば良いのだな」
そう言うと..........仲間の敵討ちをするかのように、ゾロゾロと現れたデススケルトン達に対し、雷を放つゼウス。
そして、そのデススケルトン達もまた、消し炭になったのだった。
「これが我のスキルにして、ありとあらゆるを貫く神の雷..........
実のところ、ゼウスは神の力を全て失っていたわけではない。
正確に言えば、ゼウスの中に微かに残っていた神の力が特殊能力........スキルとして、変化していただけなのである。
そのことに気づいたゼウスは、そのスキルを扱えるようになるため、約一年もの間、肉体と共に鍛えていたのだ。
「それで?これでも合成だと言い張るのか?」
『合成..........じゃないのか!?』
『ワイ、絶対合成だと思ってた』
『強姦未遂犯のくせに..........何でそんなに強いんだよ!!』
『スキル名が地味にカッコよくてムカつく』
『背後からモンスターに喰われればいいのに.....』
「........そうか、そうだったな。人間という存在は、ああ言えばこう言う生物なのだったな」
自身を誹謗中傷するコメントに対し、冷静にそう呟きながら、次々とやって来るデススケルトンを倒していった。
『何か..........達観してね?』
『人生何周目なんだよ』
『俺らの攻撃が.......効いていないだと!?』
『てか、デススケルトンがどんどん消し炭になってるんだけどぉ!?』
「消し炭では駄目なのか。ならば、もう少し調整を...........ん?」
ふと、ゼウスが消し炭になったデススケルトンの方を向くと............そこには、綺麗な宝石のような物があった。
「これは.....?」
『まさかの魔石キター!!』
『魔石無事だったんかい!!』
『あの攻撃で無事だとは..........魔石凄すぎだろ!!』
「魔石.....あぁ。確か、今の人間界のエネルギー源として使われている物か」
魔石を拾い上げながら、見つめながら、そう言うゼウス。
「............これでは、プロメテウスの犠牲は無駄になってしまったな」
『は?』
『何言ってんだコイツ?』
『というかプロメテウスって誰?』
ゼウスの呟きに対し、ここぞとばかりに攻撃する視聴者達。
しかし、その呟きに反応する視聴者もいたようで
ヤバい神話オタ『プロメテウスって..........人間達に火を与えたことがきっかけで、拷問の刑に処されることになったギリシャ神話の神ですよね?』
ゼウスに対し、そう尋ねるようなコメントが書かれていた。
「あぁ、そうだ。人間が発展してきたのは、プロメテウスの犠牲のおかげと言っても過言ではない」
ゼウスがそう言うと
『神話関係の有識者いたんかい!!』
そうツッコミを入れるコメントが続出したのは、言うまでもない。
「ところで..........これは金になるのか?」
『当たり前だろw』
『世界の電力を支えるエネルギー源だから、割と高値だぞ』
『魔石の価値を分かっていなくて草』
「ほぅ..........それならば、多少は確保しておいた方が良いのかもしれないな」
ゼウスはそう言うと、デススケルトンを見つけては、片っ端から攻撃をしていった。
なお..........その光景を配信として観た視聴者達は、口を揃えてこう言った。
あれは、一方的な蹂躙だった..........と。
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