第13話 恋愛相談

イヴォンネが普段接するのは、ラーファエルと自分についてくれている侍女のみ。彼女には、自分のことを相談する相手はいない。目の前の彼に罪悪感を抱いてはいるものの、突如降ってきた、今までの自分に関わりのない他人であり、かつ伴侶をもつカミュスヤーナの存在は、イヴォンネにとっては僥倖に思えた。自分のことを相談するには、格好の存在だ。


彼女は、自分自身の話を友人の話に置き替えて、カミュスヤーナに相談する。


「あの、私の友人が、ある人のことを慕っているのですが、相手からは全く異性として思われていないようなのです。どうすればいいと思われますか?」

イヴォンネの質問に、カミュスヤーナはその目を瞬かせる。ただ、彼はイヴォンネのことを伴侶テラスティーネと思っているので、相談には特に戸惑いもなく言葉を返す。


「面識はあるのか?その2人は。」

「面識はございますが、兄と妹のようなのです。」

イヴォンネの答えに、カミュスヤーナはフフッと笑う。


「何だ。私たちのようではないか。私たちも最初は兄と妹のようだったであろう?相手が、その友人のために、いろいろ手を尽くしてくれるのであれば、好意はあるだろう。」

そして、私のように告白すればいい。とカミュスヤーナは言葉を続ける。


「その友人と相手の関係が良くわからぬが、将来のことを考えても一緒になるのに問題がないなら、受け入れてくれるだろう。断られてしまったら、理由を聞いて、その内容で改善できるなら改善するしかない。」

「・・・改善できなかったら?」


「諦めるのも一つの手ではあるが・・。」

カミュスヤーナはイヴォンネの顔を見て苦笑を浮かべる。

「私は結局、諦められなかった。わざと遠ざけた時も、君は私のことを心配してくれた。離れたくないと願ってくれた。相手の気持ちは分からないものだから、言葉を尽くすしかないのかもしれない。」


やはり、素直に言ってみるしかないのだろうか?


イヴォンネからラーファエルに魔力を融通するという約束で、イヴォンネとラーファエルの関係は成り立っている。

ラーファエルは、イヴォンネのあの時の記憶をなくし、彼女を彼の妹と位置付けるよう、夢を使って暗示をかけた。


だが、イヴォンネの魔力量は彼よりも多く、何度も魔力を奪われることで、彼女と彼の魔力の色は近しいものになってしまった。そのため、イヴォンネの暗示は、ほぼ切れている。イヴォンネは、ラーファエルにはそれを伝えていないが。


ラーファエルがイヴォンネに暗示をかけたのは、理由あってのことと思い、彼女はそれに乗せられたよう振る舞う。ラーファエルとの関係を断ち切りたくがないために。


イヴォンネは椅子から立ち上がり、カミュスヤーナが腰かけている椅子の横に立った。

「今日は相談に乗っていただきありがとうございました。カミュスヤーナ。」

カミュスヤーナの頬に手を当てると、彼は目を細めた。


「こんなことで役には立ったのか?」

「ええ。とても。また、相談に乗ってくださいませ。」

イヴォンネが唇を近づけると、カミュスヤーナも当然のようにそれを受け入れてくれる。イヴォンネはいつも心の中で、目の前の彼と、彼の伴侶に謝っている。


そんな様子を、橙色の髪に、緑色の瞳を持つ自動人形が、言葉なく見つめていた。

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