第47話 オッサンたち、ギルドマスターと出会う


 冒険者ギルド・セカン支部。

 そこは今、蜂の巣を突いたような状態だ。


 ギルド職員はあちこち駆けずり回り、確認と指示の怒号が飛び交う。


 そんな職員たちの忙しさとは裏腹に、ギルドに集まった多くの冒険者たちは併設された酒場で酒を飲み、食事をしていた。


 別にサボっている訳ではない。

 準備はギルド職員の仕事で、冒険者たちはギルドの指示を待っているのだ。


 酒を飲もうが食事をしようが、冒険者たちはスタンピードから街を守る戦力なのだから咎めるものは誰もいない。


 そんな喧噪が渦巻くギルドに、とある冒険者パーティーが姿を見せた。


 先頭にいる厳つい顔の男は一目見ただけで業物と分かる長剣を腰に吊るし、腕が隠れるほどの円盾ラウンドシールドを装備する剣士だ。


 その男の後ろから隆々とした筋肉を不思議な金属の鎧に収めた中盾ヒーターシールドを持つ巨漢と、軽装ながらも鋭い目つきで周囲を睥睨へいげいする眼鏡の男が続く。


 だがそんな男たちの登場以上に後ろに控える三人の少女たちを見て、冒険者たちの間でどよめきが起こった。


 少女たちは見たこともない新しい様式の服に身を包み、男たちの後に続く。


 男の冒険者たちは少女たちの美しい容姿に下卑た声を上げ、女の冒険者たちは少女たちが纏う新しい様式の服のデザインに、ほぅと溜息を吐く。


 ギルドに居る冒険者たちの視線が集まるのを感じながら、厳つい男――ケンジはカウンターに居る受付嬢に声を掛けた。


「悪い。スティムちゃんに話があるんだが取り次いでくれないか?」


「スティムさんは多忙なんですけど?」


「それは分かってるんだが、昨日、スティムちゃんから提案された件について本人に話があるんだよ」


「話、ですか。ちなみにあなた方のお名前は?」


「TOLIVESってパーティーなんだが……」


 ケンジのことを胡散臭いオッサンを見るような目で見ていた受付嬢が、パーティー名を聞いた瞬間、パッと目を輝かせた。


「トゥライブスの皆さんっ!? スティムさんから話は聞いています! 今、本人を呼んできますので少しお待ちください!」


 席から立ち上がると受付嬢は事務所の奥へ走って行った。


(トゥライブスって赤き死の剪刀せんとうを倒したって言うパーティーだよな?)


(マジかよあの冴えないオッサンたちがか? 本当なのかそれ?」


(いいオンナ連れてやがるな。しかも奴隷の首輪をつけてるじゃねーか。オッサンたち、イイ趣味してやがる)


(手ぇ出すとマズイだろ。瘴魔しょうまをぶっ倒せるぐらいの実力者って話だぜ?)


(あいつらがぁ? 俺ぁGランクの駆け出しパーティーって聞いたぞ?)


(いやそりゃねーだろ? 受付カウンターに瘴魔石を出したのを見たってやつも結構多いぜ? Gランクパーティーに瘴魔を討伐できるはずがねえよ)


(それ、何かの拍子で勝手に死んだ瘴魔を見つけて、その死骸から盗んできたって言ってたやつも居たぞ?)


(なんだよそれ。ったく、何が本当なのか分からねーな……)


(触らぬ神になんとやらだぜ。おまえも手ぇ出すんじゃないぞ?)


(チッ、もったいねえ。あれだけの上玉なオンナに手を出せないなんてよぉ)


 冒険者たちの下品なひそひそ話を聞くとは無しに聞くオッサンたちは、注意深く周囲を観察しながら小声で言葉を交わしていた。


(んー、やっぱフィーっちたちを守るためにもパーティーランクは早めに上げたほうがエエな。勘違いしたアホが突っかかってくるのは目に見えとるわ)


(そうだな。スティムちゃんにその辺りの話もしてみようぜ)


 ケンジとリューが小声で会話をしていると、そこへギルド職員の制服を着た女性が走り寄ってきた。


「トゥライブスの皆さん! 来て下さったんですね!」


「んー、あー……まぁパーティーメンバーと色々と相談して、街を守るために力を貸そうって決めてな。その件についてスティムちゃんに相談があって……」


「それは本当ですかっ!?」


 ケンジの申し出にスティムが食いついた。


「本当だよ。で、俺らはスタンピードに際してどんなことをすれば良いのかってのをスティムちゃんに相談に来たんだ」


「トゥライブスの皆さんのような実力者が参加してくださるのは大変有り難いです。では今の状況を説明しても宜しいですか?」


「ああ、頼む」


 ケンジの返事を聞いてスティムはすぐに手持ちの資料を広げた。

 セカンの街から『獣の森』にある『水鏡の地下洞窟』までを範囲とするおおまかな地図だ。


 その地図のあちこちを指差しながらスティムが状況説明を始めた。


「昨日、トゥライブスさんからスタンピードの報告を受けたあと、ギルドに所属する偵察職スカウトの皆さんに偵察をお願いしました。そこで判明したことなのですが――」


 スティムの説明はこうだ。


 『水鏡の地下洞窟』に向かったスカウトがモンスター大発生スタンピードを確認。


 スカウトからその報告を受けたギルドはセカンの街の領主とギルドマスターが協議し、領軍と冒険者ギルドは共闘態勢を整えた。


 だが今日の早朝。


 水鏡の地下洞窟を監視していたスカウトが帰還し、とうとうスタンピードが発生したことをギルドに報告した。


 大発生したモンスターはあと三時間ほどでセカンの街にやってくるだろう――。


「そう言ったこともあってギルドマスターは今、執務室で領主様と一緒に防衛部隊の配置を相談中です」


「今っ!? スタンピードが発生しとるのに今、配置を決めとるんかいな」


「スタンピードの発生がこちらの予測を遥かに上回る速度だったため、正直、後手に回っているのは否めません……」


 悔しげな表情を浮かべるスティム。

 そんなスティムにケンジは優しく声を掛けた。


「モンスターはまだ街には来てないんだろ? だったらまだ大丈夫だって。それに俺らも参加するんだ。街には指一本触れさせんよ」


「そう、ですね。リニオグナタを倒したトゥライブスさんが防衛戦に参加してくださるなら勝機はあります。


 とにかく、領軍は街の住民の避難を誘導し、冒険者たちは外でモンスターを討伐するというところまでは決まっていますから、トゥライブスの皆様には是非、最前線をお願いしたく――」


「冒険者たちの一番前で戦えば良いんだな?」


「そうです。他にも実力のある冒険者の皆さんにも最前線をお願いしています。


 スタンピードには波があると言われていますので、その波の間にローテーションを組んでモンスターに対抗してもらえると――」


「波、つまりウェーブって訳だ」


「ちなみにその波ってどれぐらい続くとか分かっとるん?」


「文献によると最低でも三から五は続くと言われていますが……今回のスタンピードがとれほど続くかは分かりません」


「三ウェーブから五ウェーブの耐久討伐戦とか、なかなかやり甲斐ありそうだねぇ」


「ま、リューが加工してくれた新装備があればそれぐらいは――」


 余裕だろう、とケンジが言いかけたそのとき。


「スティムさん! こんなオッサンたちが最前線とか正気ですか!? 俺たち実力派パーティーの足を引っ張るに決まってますよ!」


 酒場で食事をしている冒険者たちの中から抗議の声が聞こえ、見知った若者が姿を見せた。

 カインだ。


「瘴魔を倒したっていうのも本当かどうかも分からないのに、ポッと出のオッサンパーティーが最前線に来たって邪魔なだけです! なぁそうだろうみんな!」


 カインの声に他の冒険者たちも同意するように声を上げた。


「そうだそうだ!」


「そのオッサン、Gランクなんだろ? そんなオッサンが文献で語られるほどの強力な瘴魔を倒せるはずがないだろ!」


「ただのオッサンだぜ? こいつら!」


「オッサンに足を引っ張られて死ぬなんてゴメンだぜ!」


 冒険者たちの大半が口々にオッサンたちをこき下ろす。


 一部の冒険者たちは呆れた顔を口を噤んでいたが、イケメンの周囲に居る冒険者たちは嵩に掛かったようにオッサンたちを口撃した。


「フンッ、ほらスティムさん! 冒険者のみんながこんなにも抗議してるんです! それでもまだオッサンたちを防衛の最前線に出すって言うんですか!?」


「引っ込めオッサン!」


「おまえらみたいなジジィに街を守るなんてできっこねーよ!」


「戦ってる最中に息が切れるんじゃねーの?」


 好き勝手に野次を飛ばす冒険者たち。

 そんな冒険者たちの野次に苛ついたケンジが言い返そうとしたとき。


「何の騒ぎだ!」


 受付の奥にある扉から一人の偉丈夫がドスの利いた声と共に姿を見せた。


 年齢は五十代といったところだろうか。

 年輪のように刻まれた顔の皺に歴戦の風格を宿した初老の男だ。


(チッ……)


 筋骨隆々としたその男の一声を聞いてイケメンは小さく舌打ちした。


 男はイケメンを一瞥するとドシドシと足音を響かせながら受付までやってきて、スティムに声を掛けた。


サブギルドマスター。この騒ぎの理由を報告してくれ」


「それが――」


 男の要請に応えてスティムが事の顛末を報告する。

 その姿を見ながらオッサンたちは目を丸くしながら言葉を交わした。


(お、おいこのオッサン、今、スティムちゃんのことをサブギルドマスターって言ってたぞっ!?)


(まさかスティムちゃんがそんなに偉い立場の人だったなんて……)


(ほら見なさいよ。上の立場の人間だって言ったでしょ?)


(お、おおう、マジかいな……オレら、全く分からんかったわ……)


(人を見る目ねーんだな俺らって)


(人を見る目っていうより、女性を見る目が無いんじゃない? 僕らって)


(あら。ホーセイ様。わたくしたちも女性ですの)


(おっと。ごめん。そういうつもりで言ったんじゃなくてね――)


(うふふっ、ご安心を。何を仰りたかったのかは理解しておりますの)


(大丈夫です! ご主人様方の足りないところはわたしたちが全力でフォローしますから!)


(おう、頼りにしてるぞ、フィー)


(はい! えへへ……)


 ケンジから頼りにしていると言われたフィーが嬉しそうにはにかんでいると、スティムと話していた偉丈夫がケンジたちに向き直った。


 スキンヘッドに髭を蓄えた歴戦の勇士の佇まい。

 TOLIVESで一番背の高いホーセイよりも更にデカく、がっしりとした肉体を持つそのオッサンは、纏った強者の雰囲気とは裏腹にどこか人なつっこい笑みを浮かべながらケンジたちに声を掛けた。


「副ギルドマスターから話は聞いている。おまえたちがリニオグナタを討伐したというGランクパーティーだな」


「おう。TOLIVES、リーダーのケンジだ」


 笑顔の奥に見え隠れする鋭い視線の圧にも負けず、ケンジは胸を張って名乗ると偉丈夫に向かって手を差し出した。


「ふむ。セカン支部のギルドマスターを務めるムトゥと言う」


 名を名乗ったムトゥは差し出されたケンジの手を握った。


(このオッサン……っ!)


 ムトゥの握手を受けた瞬間、一瞬、ケンジの顔がひきつった。

 まるで巨大万力に締め付けられるような痛みに顔を引き攣らせながら、ケンジは負けじとムトゥの手を握り返した。


 全力全開という訳ではなく多少の手加減はしているものの、ケンジの人外レベルのステータスを考えれば普通の男ならば手がひしゃげるほどの力だ。


 そんな力で握られながらもムトゥは涼しい顔で――だが額には脂汗が滲み出しているようだ――ケンジの手を握り返していた。


「ふっ、ふふふっ、ふふふふふふっ」


「フッ、フフフッ、フフフフフフッ」


 互いに脂汗を掻きながらも痛くないフリを保って握手を続けるオッサン二人。

 そんなオッサンたちをスティムとフィーが止めに入った。


「ちょっとギルドマスター! 何を大人げないことしてるんですか!」

「ご主人様、もう止めましょう!? でないとご主人様がケガしちゃいますよ!」


「お、おう。それもそうだな。これぐらいにしといてやるよオッサン」


「う、うむ。俺もつい若い頃を思い出してムキになってしまったわ」


 女性たちの制止に素直に従った二人は改めて視線を合わせた。


「なかなかやるな、お主」


「アンタもな」


 そういうとケンジは再び手を差し出すと、ムトゥはその手を取って今度は普通の力で握手を交わした。


「リニオグナタを討伐したパーティーのことはスティムから報告を受けていた。今回のスタンピード防衛戦で鍵を握るパーティーである、ともな」


「スティムちゃんが俺らのことをそんな風に――」


「当然でしょう。文献にも記載されるほどの災害級の瘴魔をたった六人で倒したのですから。その強さにランクでは推し量れないものがあると判断できなければ、サブギルドマスターとしての資格はありません」


「――だ、そうだ。俺はスティムの人物眼を認めている。スティムが認めたやつらなら最前線を任せても……」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよギルドマスター!」


 ムトゥの言葉を遮るようにカインが抗議の声を上げた。


「何だカイン。俺の判断に意見があるのか?」


「ありますよ、当然でしょう!」


 整った眉をつり上げてカインが抗議を続ける。


「マスターもスティムさんもどうしてかこのオッサンたちを認めているみたいですけど、瘴魔を倒した証拠もなく実力だって分からないこんなオッサンたちが、モンスター大発生スタンピードから街を守ることなんてできるはずがない!」


「そうだそうだ!」

「カインの言う通りだ!」


「ほらこの通り、他の冒険者たちも俺と同じ気持ちです! そんなオッサンたちが最前線で役に立つはずがない! 足を引っ張られるとこっちが迷惑するんですよ!」


「ふむ。ならばどうしろというのだ?」


「オッサンたちが最前線に来るのは反対です。Gランクパーティーなんて街の住民の避難誘導でもしてれば良いんですよ」


「なるほど。……」


 カインの言葉を受けてムトゥがケンジをジッと見つめる。


「な、なんだよ?」


「少し黙っていてくれ」


 質問するケンジを言葉で制し、ムトゥはケンジをジッと見つめる。

 まるで何かを探るような視線だ。


 その視線はやがてケンジだけではなく、ホーセイたちパーティーメンバーに向けても注がれる。


 そして――。


「……カインの進言については理解した」


「ハッ! そうでしょうとも! こんなオッサンたちが最前線で活躍できるはずがないんだ!」


「だが俺はそうは思わない」


「ハッ!? ギルドマスター、あんた何を言って――」


「忘れているのか? 俺は【鑑定】スキルを持っているんだぞ?」


「あ……」


 ムトゥの返答にカインは言葉を無くす。


(お、おい、このオッサン、【鑑定】持ちらしいぞ!)


(落ち着きケンジ。少し前にフィーっちから【鑑定】スキルの話は聞いたやろ。


 オレらが取得した【鑑定】アビリティよりも精度は落ちるし、そもそもオレらはこんなこともあろうかと全員【隠蔽】アビリティで本来のステータスを隠蔽しとる。


 レベル差のある状態でオレらの本当の力を見抜くことはできんはずや)


(レベル差か。確かに俺らのレベルなら大丈夫か)


(ちなみにこのオッサンのレベルはいくつなの?)


(ちょい待ち。えーっと……レベル58やな)


(58~っ!? 結構レベル高いんだな、このオッサン)


(でも僕たちは今、レベル72だし、14もレベル差があれば【隠蔽】を突破されることはないでしょ)


(せやな。レベル差が10以上の場合、鑑定結果は不確かになるはず……あ)


(あ、ってなんだよっ!?)


(しもた(しまった)……フィーっちは今、レベル51やし、アリっちとクレアっちは今、レベル34や。このオッサンにはステータスが見抜かれてもーてるわ)


(マジかっ!?)


(フィーちゃんたちもステータス+のアビリティを取得してるから、一般人とはかけ離れたステータスだよ!? ヤバくない? ど、どうするの?)


(……どうもこうも。バレちまったもんはしょーがねえ。アリーシャたちのステータスに何か言ってくるようなら全力で誤魔化すぞ!)


(誤魔化せるかは分からんけど、それしかないやろなぁ……)


 突如、鑑定スキル持ちの人物が現れたことにオッサンたちが泡を食っていると、ムトゥはオッサンたちから視線を外してカインに向き直った。


「だがどうやらカインとこいつらとの間には何やら確執がある様子だな。ならこいつらはカインとは別の前線に配置しよう。それでどうだ」


「ハッ? 俺が言ってんのはそういうことじゃなくて、こんなオッサンたちに頼るなって言ってんだよ!」


 ムトゥの返事が自分の思惑から外れたものだったのか、カインは苛立ったように声を荒げる。


「Gランクパーティーが戦場にいるだけで他のパーティーが実力を発揮出来なくなるんだよ! そんなにこのオッサンたちを防衛戦に立たせたいって言うなら、俺たちは防衛戦には参加しない! 命が惜しいからな!」


「そうだそうだ!」

「Gランクなんてゴミを戦場に出すんじゃねーよ!」

「足、引っ張られたくねーんだよ!」


 カインに追従ついしょうするように一部の冒険者たちが騒ぎ立てる。

 そんな冒険者たちに向かって、


「黙れ小僧ども!」


 ムトゥは耳をつんざくほどの大声で一喝を放った。


「セカンの街始まって以来の危機に瀕しているこの状況でいつまでもゴチャゴチャとわめくんじゃねえ! 


 危機に際し、冒険者たちを指揮するのはギルドの役目だ!


 貴様らは冒険者登録に際し、緊急時にはギルドの指揮下に入るという契約を交わしているはずだぞ!」


「なんだよそれ! 契約が何だって言うんだ! 横暴過ぎるだろ!」


「契約とはそういうものだ。それが嫌だと言うなら今すぐギルドカードを返納してこの街から出て行け。但し返納した者の名はギルドで共有する。


 他の街で再び冒険者登録をしようとしても受け付けることはできないからそのつもりで居ろ」


「ひでぇ! そんなの脅しじゃないか!」


「脅しも何も、登録するときの書類にしっかりと記載されていることだ。そして貴様らはその契約書にサインした。だから今、冒険者をやれているのだろうが」


「クッ……」


「ルールを守れないものが居ればそれこそ最前線での連携に支障が出る。そんな無能な冒険者はギルドに必要ないから尻尾を捲いてさっさと出て行け!」


 ギルドマスターの迫力ある一喝に、喧噪に包まれていたギルド内部がしんと静まり返った。


 そんな空気のなか、ケンジが声を上げた。


「あー……俺らが邪魔だっていうなら防衛戦じゃなくて別の仕事をくれないか?」


「ふむ?」


 ケンジの提案にムトゥは首を傾げる。


「オッサン。アンタの言う通り最前線では連携が重要だ。連携を取るのに俺らが邪魔だって言うのならそれは受け入れる。


 だけど俺たちもこの街を守りたいと思っているんだ。だから別のところで防衛戦の役に立つように仕事をするさ」


「……そうか。そう言ってくれるのか」


「目的はスタンピードから街を守ることだろ? すでにスタンピードが起こっているんだ。言い争ってる時間なんて無い。


 俺たちはやれることをやるつもりだ。何だってやるぜ?」


「……恩に着る。ではお主たちに任せたい仕事があるから、その説明をするから、すまんが執務室に来てくれ」


「おう」


「スティム。悪いがそういうことになった。後始末は頼むぞ」


「ハァ~……この雰囲気の冒険者たちを丸投げしないでもらいたいものですが。まぁそうも言っていられない状況なので何とかしてみますけど……」


「うむ。よろしく頼む。ではトゥライブスよ。執務室へ案内しよう」


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